第471話 バイバイ

「良い、事……?」


 そう良い事。

 あぁ、これを知ったらクソ女神は、コイツ等はどんな顔をしてくれるのかなぁ!!


「今回の一件は初めから全て、私の掌の上なんだよ」


「……は?」


 ふふっ! いいねぇ、その間抜けな表情!!


「お前は、いやお前等は自らの意思で行動し、封印から解き放たれ、私と対峙していると思ってるだろうけど……それは間違い」


「な、何を言って……」


「あはっ! そもそも、なんで私の封印に綻びがあったと思う?」


 うんうん、察しの悪いクソ女神じゃあ、こんな事を言われても理解できないよね。


「どうして世界に囚われて封印されている状況下で、自らの魔素エネルギーを切り離すなんて事ができたと思う?」


 封印されて魔素を強制的に搾り取られてるのに、普通ならそんな事ができるはずがないのに。


「さらには僅かに生じた封印の綻びから、この世界に切り離した魔素を送り込み熾天使共を生み出す。

 どうしてそんな事ができたと思う?」


 もしかして私がミスをしたとでも思ってたのかな? この私がミスなんてするわけないのに。


「そしてミカエル、お前達もだ」


「「「「っ!!」」」」


「私の元にはペトロ達、元五大熾天がいる。

 私がお前達を知らなかったと思う?」


 400年前の大戦時はクソ女神の本拠地である神域、天界の守護をメインに後方支援とかをしてたみたいだから、戦闘には殆ど参加しなかったみたいだけど。


 コイツらは400年前の時点で、永きに渡ってクソ女神に仕えていた元五大熾天のみんなに次ぐ高位天使。

 私が認知してないわけがない。


「それに光の使徒だっけ?

 どうして私の目を掻い潜って、そんな組織を作れたと思う? どうして長年暗躍できていたと思う?」


 私は人間共を監視し、管理している抑止力である魔王の一角どころか魔王達のリーダー!

 更にはこの世界の最高神は邪神ことネフェリアスだけど、実質的に頂点に君臨しているのはこの私!!


 世界の頂点に君臨している私の情報網を舐めてもらっては困る。

 当然ミカエル達の動向は最初から把握してたし、光の使徒を創設した事も知っていた。


「ふふっ、アナスタシア、私は最初から全てを知っていた」


「全て……」


 そう全て!


「ねぇ覚えてる? 400年前の大戦時、まだお前の操り人形だった元五大熾天のペトロが持っていた権能を」


「……っ!?」


「そして私がその権能を奪った事を」


「ま、まさかっ!」


 やっと気づいたか。

 ペトロが持っていた権能はユニークスキル・未来予知、まぁ私が奪った事で未来視に変質しちゃったんだけど。

 とにかくっ!!


「ミカエル達が暗躍している事も、お前が魔素エネルギーを分離してこの世界に隠していた事も。

 そして……こうしてお前が封印から解放される事も」


 文字通り、最初から全部を知っていたのだよ。


「まさか、そんな事がっ」


「言ったでしょ?

 お前は、お前等は……私の掌の上で、無様に踊っていただけ」


「……」


 あはっ! いい! めっちゃいいわ!!

 この唖然とした顔! 驚愕と恐怖に染まった瞳と魂っ!!


「最初から全てを知っていた……ならどうして。

 何故わざわざこんな事をっ! こうして私を嘲笑うためにっ……!!

 どうしてあの子達を! 私が封印から解き放たれる事を見逃したのですかっ!?」


 ふふふっ! 当然、クソ女神を嘲笑うために、弄んでやるために見逃したのもあるけど……


「全ての元凶はお前」


「は……?」


 口で説明するのも面倒だし、手っ取り早く!


「全てを知るがいい〝付与ノ神〟」


「「「「「ッ──!!」」」」」


 クソ女神とミカエル達にもサービスで教えてあげよう、あとはソフィー達もだな。

 クソ女神達5人は負担とかを考慮する必要がないから楽だわ〜。


「これでわかった?」


 私がクソ女神やミカエル達を見逃していた理由。

 それは……


「全部お前のせいだって」


 かつてクズ勇者がアバズレ聖女を召喚するために使った、クソ女神が授けた異世界召喚魔法。

 アレによってこの世界に召喚されたのは、実はアバズレ聖女とショウの2人だけじゃなかった。


 前世のソフィーもソレに巻き込まれた。

 けどソフィーだけが運悪く、この世界に辿り着かずに世界の狭間。

 時空が歪んだ異空間に迷い込み……


 そんな異質な空間で、脆弱な人間の肉体が耐えられるわけもない。

 結果としてソフィーは魂だけの状態で異空間を彷徨い、本来の時間軸から約400年。


 つまりはこの時代にこの世界に辿り着く。

 というのを私は未来視で見たのだよ! だからこそソフィーが生まれて早々に加護をあげる事ができたし。


 向こうの世界で乙女ゲームを作って、無数に分岐して存在する未来の中でも可能性が高いモノの幾つかをソフィーに教えてあげる事もできた!


「ま、まさか……」


 気づいたかな?

 亜空間で時間がズレたとはいえ、ソフィーがクソ女神の術式でこの世界に辿り着いたって事は……かつての同じ事態。

 つまりは世界の壁に再び穴が空いちゃったという事。


 まぁ今回は私が事前に知ってたし、ソフィーの魂だけだったのが幸いして、ネフェリアスとも協力にて被害は最小限に抑える事ができたけど。

 自分がやらかした事の責任は取らないとね!!


「お前等を見逃した一番の理由。

 それはお前にこの事態の責任を取らせるため」


 400年経ってクソ女神から搾り取れる魔素エネルギーもかなり少なくなってたし。

 ここで一度回復させてやって、まだまだ世界の魔素エネルギータンクとして活躍してもらおうと思ってたんだけど……


「でも、もういい」


「ぇ……?」


 幸い被害を最小限に抑える事ができたおかげで、消滅した魔素量はクソ女神がいなくてもダンジョンだけでいずれ自然と回復する程度。


「ふふっ、安心するといい」


 ソフィーを不安にさせて、怖がらせてまで、クソ女神をのこす必要はまったくない。


「お前がもう一度封印される事はない」


 だって……


「さっきも言った通り、お前はもう必要ないから」


「ヒッ……! い、嫌っ!!」


「あはっ!!」


 身を捩って私から逃げようと必死に足掻いてるけど! 最高に惨めで、無様だわっ!!


「逃げようとしてもダメ」


「いやっ! いやよっ!!」


 クソ女神の髪を掴んで、恐怖に染まった瞳を覗き込んでっと!


「あっ、あぁァァァァアッ!!」


「ふふっ! じゃあね、アナスタシア」


「い、いやぁ……はなしてぇ!!」


 幼児みたいに泣き叫んでもダ〜メ!


「バイバイ。

 魂の一片も残さずに消滅しろ、神能・付与ノ神、創滅ノ神」


 2つの神能を並列起動して確実に……


「たすけっ……」


「〝消滅しろ〟」

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