第463話 観戦者達 その1・おすすめしないよ?

 パリィッン!!



 ガラスが砕けるような、甲高い音が鳴り響き……


「ッ〜!」


 凄まじい。

 ネフェリアス様の神域とレフィーちゃんの結界で、二重に守られているにも関わらず、見ているだけで思わず身震いするような。


「うそ……」


 この世界でも屈指の強者になったと自他共に認める今の私から見ても、現実とは思えないほどに膨大な魔素エネルギー

 伝説の英雄と呼ばれるマリア先生達、悪魔王国の皆様も。


 そして魔法神ティフィア様改め魔神レフィーちゃんに、竜神ファルニクス様。

 今まさに私の背中を撫でている、最高神ネフェリアス様。


「そんな……!」


 これまでに出会った誰よりも……強大で膨大な魔素エネルギーを迸らせる女神アナスタシアが放った、まさしく神の御技と呼ぶに相応しい。

 今の私じゃあ想像もつかない、圧倒的な力を感じさせる白い光が……


「レフィーちゃんっ!!」


 私達の目の前で、レフィーちゃんを包み込んだ。



「ウフッ! ウフッフッフッフッ、これが今の私の力です!!」



 心底嬉しそうな、愉悦に満ちたアナスタシアの笑い声がどこか遠く聞こえる。

 って、呆然としてる場合じゃないっ!!


「ッ〜!!」


 くそっ、今更こんな事を言ってもどうにもならない。

 そんな事はわかってるけど! やっぱり、レフィーちゃんに全てを任せるんじゃなくて一緒に戦うべきだったんだ!!


 今の私程度が加勢したところで、あの女神アナスタシアをどうにかできるとは思えないけど。

 それでも、レフィーちゃんのアシスト程度はできたかもしれない。


 そもそも女神アナスタシアが復活したのだって、私がミカエル達に協力するって選択をしたせいなのに。

 それなのに私はこんなところで! 私のせいでレフィーちゃんがっ!!


「っと、落ち着いて。

 ソフィーくん、いま何をしようとしてたのかな?」


「離してくださいっ!

 早くレフィーちゃんを助けに行かないとっ!!」


 でもあの直撃を受けて、レフィーちゃんは……


「ダメだよ。

 残念だけど」


「ッ! そんな事はありませんっ!!」


 きっと大丈夫なはず!

 だってレフィーちゃんは、ルミエ様のお母様にして最強の魔神なんだからっ!!


「いいから離してっ……!」


「ソフィー、少し落ち着いて」


「そうだぞ、嬢ちゃん。

 ちょっと取り乱しすぎだ」


 落ち着けって! 逆になんでフィルやガルスさんは、そんなに冷静なのっ!?


「2人の言う通りだ。

 そもそもだ……お嬢が、いや俺達が出て行ったところで何ができる?

 俺達Sランク全員で挑んでも、呆気なく殺されるのがオチだ」


「そ、それは……」


 で、でも! こっちにはルミエ様やガルスさんもいるし、いくら女神アナスタシアが圧倒的だとしてもそう簡単に負けたりは……


「ソフィーちゃん、悔しいけどそこのバカの言う通りだよ」


 フラン先輩……


「おいテメェ! 誰がバカっ……」


「ソフィーちゃんも、本当はわかってるでしょ?

 今の私達じゃあ束になってもあの化け物には勝てない」


「うっ……」


 そんなのはわかってる。

 わかってるけどっ!


「でも、だからって黙って見てるわけにはぇっ!?」


「ふふっ、かわいい声だったね」


 ちょっ! ネフェリアス様っ!!

 いきなり両脇の下に手を入れて持ち上げないでください! っというか、今はそんな呑気な事を言ってる場合じゃあ……!!


「盛り上がってるところ申し訳ないけど、勝てる勝てない以前にキミ達が参戦するのはおすすめしないよ?

 さっきも言おうとしたけど、残念だけどこれはあの子の遊びで、アナスタシアはあの子の獲物だからね」


「えっ?」


 ネフェリアス様、何を言って……


「レフィーちゃんは、無事なのですか?」


「あはは、当然じゃないか。

 確かに私もちょっと驚いたけど、たぶんそろそろ……」



「〝消えろ〟」



 一瞬にして膨大な魔素エネルギーを迸らせる、天を衝く白い光の柱が消滅し……



「むぅ、眩しくて、鬱陶しい」



「うそ……」


 あの攻撃の直撃を受けたはずのレフィーちゃんが無傷で……


「ね? あの子があの程度でやられるはずがないよ。

 しかしアナスタシアが神級ね、という事はつまり……」



「ふふ……あはっ! あはっはっはっはっ!!」



 急にレフィーちゃんがそれはもう嬉しそうに、楽しそうに笑い出し──



「流石は自己愛に満ちた、クソ女神。

 そこまで、堕ちたんだ」

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