第434話 対価
なるほどね。
私が女神アナスタシアを解放するために必須の鍵だから、教団の連中は執拗に私を捕えようとしてたってわけか。
しかし……
「鍵、ですか？」
特異点たる愛子が鍵ってどういうことなんだろ？
まぁ私は人類トップクラス、この大陸どころか世界でも上位の実力を誇ると自負してるけど……
さすがに魔法神ティフィア様が罪人……女神アナスタシアを封じるために創造した、閉ざされた世界に干渉できる自信はないんですけど。
「えぇ、そうです。
本来ならばアナスタシア様が封印されている世界に干渉する事ができるのは、その世界を創造した忌々しき悪魔のみ。
しかし奴の加護を持つ存在だけは別です」
ほう。
「奴の加護を持つ者である特異点たる愛子は、奴の因子を持ち、なおかつ奴から愛されし存在。
加護という奴の加護を持ち、愛子として奴から愛されている者だけが、奴以外に唯一あの世界に干渉することができる」
ほほう！
「つまり……現在においては、この世界で奴本人を除けばソフィア・ルスキューレさん。
唯一、貴女だけがあの世界に干渉し、囚われているアナスタシア様を救い出す事ができるのです！！」
つまりは魔法神ティフィア様の加護を持っている私は特別で！
魔法神ティフィア様以外では私だけが、唯一その世界に干渉することができると。
「ふむ……あなた方、光の使徒が私を必要としている理由はわかりました」
まっ！ 悪役令嬢たる私が特別なのは当然としてっ！！
「それで、私に何をしろと？」
今の話が仮に事実だとして、それでも魔法神ティフィア様が創造した世界に干渉する自信はない。
私も自身の
他者が作った世界に干渉するとなれば話は別。
しかも、その世界は魔法神ティフィア様が、かつての主神である女神アナスタシアを封じるために創造された特別な世界なわけだし。
というか、そもそもやり方がわからない。
うんうん、やっぱり何回考えてみても……いかに私といえども、さすがに無理だと思う。
「貴女が何かをする必要はありません」
「というと？」
「貴女はあの世界へと干渉するための鍵。
閉ざされたあの世界と、この世界を繋ぐための架け橋であり……閉ざされ、隔離されたあの世界へと道を繋ぐことさえできれば、扉は我らが開きます」
「ふむ」
「よって、貴女に何かをしてもらう必要はないのです。
ただし、その道を繋ぐためには……鍵としての資格を有する対価が必要となります」
でしょうね。
完全に閉ざされ、外部から干渉できないように隔離された世界に干渉するわけだし、それ相応の対価が必要になるだろうって事は予測できる。
「つまり……お前の話を要約すると」
そこで一度言葉を切ったエレンお兄様から……
「ソフィーに生贄になれって事か？」
凄まじい殺気と重圧。
大気は揺らす
ふふんっ！ さすがは私のお兄様である、エレンお兄様だわっ！！
でもまぁ、今の話を聞いてるとそう聞き取れちゃうし、私を溺愛するエレンお兄様がブチギレるのも仕方がない。
う〜ん、残念だけどこれは、交渉決裂かな？
「さすがは人類最強の一角とされるＳランク冒険者。
とてもただの人間とは思えない威圧感……しかし、違いますよ。
ソフィアさん本人に生贄になってもらう必要はありません」
むっ、それはどういう……
「ただ……道を繋ぐための対価として、ソフィア・ルスキューレさん。
特異点たる愛子である貴女の魔力を多分に含んだ、新鮮な血液を提供していただきたい」
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