第312話 海中旅行

 海面から差し込む日光!

 優雅に泳ぐ綺麗な魚達!

 目の前に広がる大パノラマっ!!


「ふぅ〜……綺麗〜」


 ふかふかなソファーに深ぁ〜く身体を沈めて、優雅に足を組みながら……誰もが見惚れる完璧で美しい所作で、フィルが入れてくれた紅茶を一口。


「ふふっ」


 これぞ! 至福のひとときっ!!

 遠くの方にはなんかめちゃくちゃデカい魚とかも泳いでるけど……海の覇者たる海竜さんがいるからか寄ってこないし。

 まさに海中旅行って感じだわっ!!


 こんな絶景を一望しながら、ティーパーティーなんて贅沢すぎる!

 しかも……参加メンバーは世界に現在地15人しか存在しない、Sランク冒険者が全員!!


「お嬢様、こちらのケーキをご用意したのですが、いかが致しますでしょうか?」


「ありがとう、いただきます」


「かしこまりました」


 柔らかな笑みをたたえながら、優雅に一礼する燕尾服に身を包み金髪をオールバックでビシッと整えた翠眼の青年。


「しかし……驚いたな」


「えぇ、本当に」


 むふふっ! そうでしょう、そうでしょう!!

 イェーガーさんとイヴさん以外のみんなも驚いてるみたいだし、フラン先輩なんてポカンとしちゃってる!


 さっきみんなに紹介したこの青年こそ!

 ちょくちょく私のことを揶揄ってくるなんちゃって執事のウェルバーなんかとは違って、非常に優秀で有能!


 そして今はこの船の制御と管理を一手に引き受けてくれてる私の執事!

 ルーちゃんの弟であるマスくんなのだ!!


「ふふ〜ん!」


 まっ! いかにSランク冒険者といえども、有能で優秀な私の執事であるマスの登場に驚いちゃうのは無理もない。

 それに、マスの容姿はめっちゃ整ってるし。


 それこそ乙女ゲームの攻略対象であるセドリック達と比べても遜色ない……どころか、攻略対象達をも凌駕する!!

 フィルやミラさんからは大袈裟とか、身内の欲目とかいわれたけど……


 マスの容姿は金髪翠眼と、私の中のエルフのイメージを反映した美青年だもん!

 絶対にクソッタレな攻略対象達よりもカッコいい! こればっかりは譲れないっ!!


 とにかく! みんなにもマスの有能さを知ってもらえてなにより!

 どこに出しても恥ずかしくない、どころか称賛されるだろうマスの主人である私も鼻が高いわ!!


「どうぞ、本日の特製ケーキになります」


「ありがとう」


 むふふふふ! さぁ、もっと私の執事たるマスを称賛して、褒め称え……


「あのソフィーちゃんが、ちゃんとお嬢様に見えるぞ」


「まるで貴族のご令嬢みたいですね」


「ほわっ!?」


 イェーガーさんもイヴさんもいったいなにを!

 他のみんなも頷いたり、なんか勝手に納得したりしてるけど……マスのことで驚いてたんじゃないの!?


「お、お2人とも、なにを仰って……私は正真正銘の貴族令嬢でですよ?」


 それも公爵令嬢にして、現状は次期王妃の立場なんですけどっ!!

 そのことはこの場にいるみんなは、全員が知ってることなのに……


「それは知ってるけど……今まで全くそんな風には見えなかったからさ」


「えぇ、貴族令嬢然としたソフィーさんに少し驚いてしまったといいますか……」


 し、失敬な!

 こう見えて私はイストワール王国のみならず、周辺諸国にも! 果てには四大国の王侯貴族にすら天才として名の知られた才媛なのにっ!!


「むぅ……」


 そりゃまぁ確かに冒険者として活動してるときは礼儀作法とかはあまり気にせずに、クールでカッコいい冒険者ソフィーのイメージを崩さない範囲で自由にやってるけども。


『ふふふ、お楽しみのところ申し訳ありませんが、少々いいでしょうか?』


「はい、大丈夫です」


 本当ならイェーガーさん達に文句……じゃなくて私は歴とした貴族令嬢だってことを深く語って聞かせてやりたいところだけど……仕方ない。


『そろそろ日の光が届かなくなって行き肌寒くなって来るので気をつけてください』


「そういえば……」


 確かにいわれてみれば、ちょっと肌寒くなってきたかも?


『あともう一つ。

 もう少しで私の領域に到着しますので、ご期待ください』

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