第74話 魔王軍襲来

「やっぱりウチの妹は世界一ですよ!」


「あぁ! 恥ずかしがってるソフィーも可愛い!」


 アルトお兄様、エレンお兄様……


「ふふっ、そんなのは当然よ。

 だってソフィーちゃんなのよ? 何をしてても可愛いのは当然だわ!」


「そうね……今夜は皆んなでソフィーを愛でる会を開かない?」


「っ! それは名案ですね!!

 今夜は……いや、これからは定期的に開きましょう!!」


 お母様、ルミエ様、お父様……


「……」


 もう! いつまでその話をしてるんですかっ!?


「ふふっ」


「おぉ、これは……」


「あ、あはは……」


 ほら! マリア先生も! ガルスさんも! 皇帝陛下も! 3人ともなんともいえない表情で苦笑いしてるじゃんっ!!

 いやまぁ、これがいつも通りなわけだけども……


 もう既にこの光景を何度も見て、見慣れてちゃってるだろうマリア先生はもう諦めたけど……ガルスさんと皇帝陛下の前で延々とっ!!


「うぅ〜!」


 お願いだから! 恥ずかしいから! もうやめてくださいっ!!

 そもそも! 今は八魔王が一柱ヒトリ、不死の呪王と恐れられる魔王ナルダバートに絶賛宣戦布告されてる状況!!


 数百年ぶりに魔王の一角が宣戦布告を行った日として。

 魔王襲来の日として、それこそ確実に歴史に残る大事件の真っ只中なのだっ!!


 しかも! たった今、実際に魔王ナルダバート配下の最高幹部である〝五死〟の1人。

 幻殺のジンがルスキューレ公爵邸に侵入してて、目の前で現人神と称される皇帝陛下との戦いがあった直後!!


 まぁ、アレが戦いと呼べるのかはさておき……とにかく! 恥ずかしいからとか、そんなことは関係なく! 今はいかに私が可愛いとか、いつもみたいに盛り上がってる場合じゃない!!


「ふふふ、見て見て! ソフィーちゃんが俯いて恥ずかしがってるわよ」


「あら、本当ね!

 顔を赤くしちゃって……可愛いわ!」


 なんとかして、早急に! みんなの意識を私談義からこっち魔王襲来に引き戻さないと……!!


「あ、あのっ! またいつ魔王の配下が攻めてくるかわかりませんし。

 早く対魔王ナルダバートの作戦会議を始め……こほん、再開しましょう!!」


「あら、そうだったわね。

 ソフィーちゃんを生贄にしろだなんて巫山戯た事を言ってのけたおバカさんにはお仕置きをする必要があるわ。

 今夜はソフィーちゃんを愛でる会も控えてるし……用事は早く終わらせてしまいましょうか」


「それもそうね」


「僕も賛成です」


「えぇ、そうしましょう」


「では、早急に些事は終わらせるとしよう」


 ……お母様、魔王と戦うことを用事扱いって。

 しかも、お父様は些事っていっちゃってるし……ま、まぁ! 話はそらせたから別にいいか!


「じゃあソフィーちゃん、司会をお願い」


「えっ?」


「だって対魔王ナルダバート作戦会議の発案者はソフィーちゃんでしょう?

 しっかりと司会進行をしてもらわないと」


「わ、わかりました!」


 ……うん? なんか普通に答えちゃったけど、本当にそうなのかな?

 う〜ん、まぁいっか! とりあえず、さっきジンとの戦いで壊れないように回収してた机と椅子を亜空間から出して……


「お母様、降ろしてください」


「ふふっ、わかったわ」


 机よし!

 人数分の椅子のセッティングよし!

 あとは……椅子に座ってっと!


「皆様もお好きに腰掛けてくださいませ」


 各々が椅子に座るのを確認して……これで準備万端っ!!


「こほん! それでは、これより対魔王ナルダバート作戦会議を再開します!!」


 ふふん! 完璧に決まったわ!!


「それでは! なにか案がある方はいらっしゃいますか?」


「じゃあ、俺から1つ」


「はい、ガルスさんどうぞ」


「まず、現状の確認だが、まだ本格的に戦闘は始まってないとは言え、敵に攻め込まれてる状態だと言う事は全員理解していると思う」


 それは勿論。

 なにせ魔王に宣戦布告されちゃったわけだし。


「しかし、王都を守りながらの籠城戦、防衛戦ではどうしても後手に回っちまう。

 その上、敵は単独でもそれなりに強い奴らが多いから、王都に被害が出る可能性が高い」


 ふむふむ。


「そこでだ、敵が本格的に攻勢に出る前にこっちから攻めたほうが良いと思うんだが」


「私も異論はないわ」


「まぁ、その方がやり易いからね」


 ほうほう、伝説の英雄であるマリア先生達の3人は同じ意見ってわけね。


「お母様達はどうでしょうか?」


「まぁ、それが無難でしょうね」


「私はいいと思うわよ」


「王都の被害を考えずに戦えるのは有難いしね」


「軍勢をこの少数で相手取るよりも、直接敵の大将を叩く方が楽だしな」


「私も異論はないよ」


 つまり、全員ガルスさんさんの〝やられる前にやる!〟って作戦に賛成ってことね!


「全員、異論はないようですね」


「じゃあ、作戦開始! と言いたいところだが……」


 ん? ガルスさん……?


「わかってるわ」


 マリア先生? いったいどうし……



 パチン!



「っ!」


 うぉっ、一瞬で視界が! ここは……王都の上空? なんでいきなり……


「って、アレは……!」


 な、なにあれっ!?


「まぁ、敵も待ってはくれねぇよな」


 360度!

 王都の周囲がぐるっと敵の大軍勢に……



『愚かな人間共に告げる。

 今すぐ魔王ナルダバート様に屈し、無様に這いつくばって命を乞うがいい。

 さもなくば、貴様達は魔王様の力を、絶対的な恐怖を思い知る事になるだろう!!』


 魔王軍に包囲されてるっ!?

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