第55話 報告したのに……

「と、いうわけです」


「……」


「むっ? グレンさん?」


 せっかく今日あったこと。

 私が冒険者になって初めて受けた依頼である緊急依頼、ダンジョン調査での冒険を報告をしたのに……


「むぅ〜」


 なぜか黙り込んでなにもいってくれない!

 もっとこう、すごい! とか、さすが! とか、なにかしらの反応を期待してたのに!!



 コン、コン



「失礼します。

 すみません、遅れてしまいまし……」


「ミレーネさん!

 こんばんは」


「こんばんは、ソフィーさん」


「むふふっ!!」


 こんばんはって! 普通にこんばんはって挨拶しちゃった!!


「それで……ルミエ様、これはいったい何が……何故ギルドマスターは固まってしまっているのでしょうか?」


「ソフィーが今日のダンジョン調査で得た情報を報告していたんだけど、どうやら衝撃が大き過ぎたみたいね」


「つまり、ギルマスはソフィーさん達の報告を聞いてこのような状態になったと」


「その通りよ」


 そうなんです!


「報告したらいきなりグレンさんが黙り込んじゃったんです」


「はぁ、まったくウチのギルマスは……というより、本当にダンジョンに向かわれたのですね。

 いきなり姿が掻き消えた時は流石に驚きましたがアレはいったい……」


「ソフィーが発動させた転移魔法よ。

 ふふふ、どうやら初めての冒険だっ! って張り切ってたみたいよ? 可愛いでしょ」


「うぅっ、ルミエ様……」


 頭を撫でるのはいいですけど……恥ずかしいから、はしゃいじゃってたことはいわないでください!!


「可愛いと言いますか、やはりアレは転移魔法だったんですね……流石と言いますか、なんと言いますか。

 しかし、ギルマスが放心状態になる程とは、いったいどのような報告を? よろしければ私にもお聞かせ願えませんか?」


「わ、わかりました!」


 良かった! 渡りに船とはまさにこのこと!!


「えっと、かいつまんで説明するとですね。

 まず最初にあのダンジョンの正式名称ですが」


「せ、正式名称っ!?

 まさか最奥まで攻略したのですかっ!?」


 おぉ〜、この反応は3回目だ。

 ダンジョンの入り口前でバッタリ遭遇して最初に話したアレス伯爵とグレンさんの2人も同じような反応をしてた。


「いや、そういうわけではないんですけど……実はダンジョンの構造を解析しようとしてみたんです」


「解析……」


「まぁ、解析自体は当然の如く失敗しちゃったんですけど、ダンジョンの解析を試みたことをダンジョンの創造者に賞賛されてご褒美に正式名称を教えてもらったんです」


「ダンジョンの創造者……ご褒美……な、なるほど。

 それで、その正式名称とは……?」


「はい、あのダンジョンの正式名称は〝魔法神の休息所〟です。

 どうやら魔法神様が、ご自身の別荘地をモデルにしてお造りになられたダンジョンらしいです」


「ま、魔法神っ!?」


「第一階層は安全地帯セーフティーゾーンになっていて、綺麗な草原が広がってました。

 第一階層の最奥には広大な湖があって、実はそこで遊……こほん、休憩をしていたのですが、そこで第一階層を統括している水の大精霊たる精霊公のアクアさんと出会ったんです!」


「……」


「そこにSランク冒険者にして伝説に語られる英雄の1人でもある冒険王ガルスさんも出てきて。

 アクアさんやガルスさんがいうには、第二階層からは難易度が跳ね上がるらしく、今の私では確実に死ぬって忠告されたので今日のところは帰ってきたというわけです!!」


「……」


「あ、あれ? ミレーネさん……?」


「……」


「っ!!」


 ミレーネさんまで黙り込んでしまった!!


「あぁっー!!」


「っ!」


 な、なんですかっ!?


「ソフィーちゃん、ルミエ様。

 申し訳ないが、今の話を一度しっかりと整理したいから少し時間をもらってもいいか?」


「べ、別にそれは構いませんけど……」


 もう! グレンさん、いきなり大声を出さないでくださいよ!!

 ビックリしちゃったじゃないですか!!


「あっ、じゃあそろそろ帰らないとみんなが心配しちゃうので、続きは明日でも大丈夫ですか?」


「そうしてくれるとギルドこっちとしても有り難い」


 よかった!

 そろそろ帰らないと、お母様がいるとはいえ……過保護なお父様やお兄様達がどんな行動に出るかわからない。

 もう外は暗くなっちゃってるから急いで帰らないと!!


「じゃあ、明日また来ます!

 では、私達はこれで!!」


 いざ! 我が家へ向かって転移っ!!

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