対サンドドラゴン


「くそっ! 爬虫類の分際で‥‥‥。舐めんなよ!!!!」


 こっちも向こうもお互い攻撃が届かない。正確に言えば、強力な攻撃をする為の時間が取れない‥‥‥。

 くそっ、どうしたら‥‥‥?


「ネロ様、妾が時間を作りますえ!」

「我もやります!」

「わかった! 頼む!」


 みんなには水結界を張ってあるから、一撃で致命傷には至らないだろう。怪我してもすぐ治るようにハイポーションミストを‥‥‥ダメだった。この四人は蕩けてしまうんだった。


 考えろ、考えろ‥‥‥。この間のメガレーザーは溜めに時間がかかるし‥‥‥。


 !! よし、これなら‥‥‥

 やってみるか。ダメなら違う方法だ。


「オールレンジオプションレーザー!!!!」


 全方位の無数のオプションからレーザーを放つ! 違うのは発射時間。いつもの一瞬のやつじゃなく、相手に攻撃が通じるまで出し続けてやる!

 ここからはずっと俺のターンだ!!


「グググ‥‥‥ギャオオーーー!!!!」


 少しは効いてる‥‥‥のか? 

 こっちも全力だ、MPが有限だったらとっくに倒れてるところだよ。


「みんな! まだ時間がかかるし、手が離せない! 周囲の警戒は頼んだぞ!!」


 みんなの方を向いた後、振り返るとサンドドラゴンの魔力が膨れ上がった。


 これは‥‥‥マズイ!!!!


「みんな! 離れろ!!!!」


 魔力の暴走‥‥‥大爆発‥‥‥崩壊‥‥‥


 くそっ!! 間に合えっ!!!!


 咄嗟に亜空間を展開した、爆発寸前のドラゴンごと亜空間に放り込んだ。


 ひとつ誤算があった‥‥‥

 俺も亜空間に入ってしまったのだ。





ーーーーーーーーーーーーー


 ローズ達四人はネロとサンドドラゴンのいた空間を見て膝をついた。ネロが居なくなってしまった。


「そ‥‥‥そんな‥‥‥ネロ様‥‥‥」

「主殿‥‥‥どこへ‥‥‥」

「ネローーーーーーーーーー!!!!」

「旦那ーーーーーーーーーー!!!!」


ーーーーーーーーーーーー




 四人は砂の遺跡から戻って来た。サンドドラゴンが消えたお陰で大地に潤いが戻りつつある。それは本来であれば喜ばしい事だったが、四人は全く喜べなかった。


 自分達の主であるネロの消息が掴めなかったからだ。更にその報告を家族にどう伝えたら良いかわからなかった。



 戻って来たイスタニーの町では水が戻りつつあった。水源が復活し、町人の顔が明るくなっていた。復興には時間がかかるだろうがそれは四人にはどうでも良かった。


「‥‥‥全く旦那はどこに行っちまったんだ‥‥‥」

「ネロの事だから死んではいないと思うニャ」

「我も主殿の気配を感じまする‥‥‥」

「妾もじゃ、ただはっきりとしなくての」



「シャル達にはどう伝えるかニャ?」

「それなんだよなぁ‥‥‥」

「気が重いでござるなぁ‥‥‥」

「どうすれば良いかのう‥‥‥」


「「「「ハァーーーーーーーー」」」」

 四人は一斉にため息をついた。





「という訳じゃ。おそらく亜空間で生きてはおるが、いつ戻ってくるのかはわからぬ‥‥‥」


「なるほどね‥‥‥、まぁ生きてはいるでしょうね」

「そのうち戻って来るでしょ?」

「ネロくん、ずっとやっててくれたからポーションの備蓄だけでも10年以上あるし‥‥‥、家計としては問題は無いわ」


「アタシは早く帰って来て欲しいなぁ。この子を見せたいからさ」

 ジャンヌはそう言いながらお腹をさすった。



 それから‥‥‥

 ネロが消息不明になって六年の歳月が経とうとしていた。


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