家庭編

一年後


 あれから一年経った。

 相変わらずの五人だが、今日は何かありそうな予感がする。


「ネロ、いるかしら?」

「あぁ、シャル。どうした?」


「報告があるの。聞いてくれる?」

「もちろん。どうしたの?」




「ワタシ、妊娠したみたい‥‥‥」


 !!!!

 驚きすぎて声が出ない‥‥‥。

 いや、する事はしてるからもちろん可能性はあるとは思っていたけど‥‥‥。


「ネロ?」

「あ、ごめん。シャル」


「え‥‥‥? どういう事?」

「え‥‥‥? いや、驚きすぎて」


「嬉しくないの?」

「いや、何というか、実感が湧かないというか‥‥‥」


 子供が出来た、嬉しくないって事はない。ただ前世も含めてもちろんだけど、親になった経験がない訳で‥‥‥。


 でも、さっきのリアクションはダメだった気がする。


「ネロ、喜んでくれると思ったのに‥‥‥」

 

 シャルが涙を浮かべて、部屋を出て行ってしまった。コレは‥‥‥非常にまずい気がする。



 しばらくして、マリアとナタリーが飛び込んで来た。

「ネロ!! 何してんのよ!!」

「ネロくーん、ひどいわよ~‥‥‥」

 

 あ、いや。

 決して喜んでない訳では無く‥‥‥。どうしたら良いのかわからない状態になってしまった訳で‥‥‥。

 でもこういう時にどうするのがベストだったのか?

 

 あと、久しぶりにナタリーの語尾が伸びてる‥‥‥。声も低っ!



「ごめん、こんな時にどうしたらいいか、わからなくて‥‥‥」


「笑えば良いじゃない! そしてよくやったって言えば良いのよ!」

「そうですよ、それだけで良いんです」


 そうか、そうだよな。それで良いんだ。

 迷うな、情け無い奴だ!

 子供が出来るって良い事なんだ!


 ドアを開けて、急いでシャルの部屋へ。


「シャル、開けてくれ。済まなかった。突然の報告で頭が真っ白になって‥‥‥。素直に喜んであげられなくて、‥‥‥ごめん!」


 ドアが開く、シャルは泣き腫らした顔だった。俺は黙って、シャルを抱きしめる。


「シャル、ありがとう。俺、父親になるんだよな? もっとちゃんとしなきゃな」

「ネロ‥‥‥。ワタシも突然だったし‥‥‥。ごめんなさい。男の人は戸惑うよね?」


「シャル、すごく大切にするよ。産まれたら子育てだってもちろんするし‥‥‥」

「あ、子育てはいいわ。それは妻の仕事だし」



ん? あれ? 聞き間違い?



「もう一度いい? 子育てはなんだって?」


「妻の仕事。当然でしょ? 貴族でも王族でも普通よ!」

「‥‥‥‥‥‥」


 とりあえずこの世界では、女性が望んで妊娠した場合、男性側は喜んでおけば良いらしい。


「あ、名前はネロが付けるのよ! ちゃんと考えるのよ?」

「わかった。最高の名前を考えるよ!」



 ネロが出て行った部屋でシャルは独りごちる。


「‥‥‥‥‥‥不安だわ」

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