水位を戻したら‥‥‥


 デフロック邸の部屋。

「おお、ネロとやら。とりあえずで構わん。デフ湖の水位を戻してくれ」

「‥‥‥だ、そうだ。さっさとやれ! 水!」


「‥‥‥」


 えーっと言いたいことが沢山あって頭がごちゃごちゃしてる。


 まず、大して調べもせずに牢屋にぶち込むな! そして、自分が困ったら清々しい程の手の平返しで頼ってくんな! さらになんだ? その上から目線は!


 何という態度、コレが貴族か‥‥‥。


 まぁ俺は今まで恵まれていたのだろう、こういう貴族と関わりが無かったのだから。

 このまま無視して帰ろうかな、とも思ったが、この領地に住む罪もない人達が困るのは、さすがに寝覚が悪い。


「わかりました、少々準備致しますのでお時間をいただきます」


 迷ったが引き受ける事にした、デフ湖って所までは侯爵家の馬車で案内してくれるらしい。


 俺だと立場が弱くて正しい評価もされないだろうから、到着したらずっと馬車に居るマリアもミストドアで呼び出そう、出来るならシャルも呼ぼうかな。こういう奴らは偉い人には這いつくばるように頭を下げるだろうからな。


「わかった、ネロ。さっさと終わらせて帰ろう」

「わかったわ、ネロ。到着したらワタシも行くわ、あと衛兵も何人かお願い出来る?」

 よし、シャルも来てくれる事になったから不当な扱いは減るだろう。



 侯爵家の馬車の中は苦痛だった。他愛もない自慢話ばかり、聞く気も無いので寝たフリをして過ごした。


 一時間くらいで到着。

 確かに普段有るだろう水位よりだいぶ下がっている。なかなか大きな湖だ、領都の主要な水源なんだろうな。


「着いたぞ、さっさとやれ!」

「へいへい、少々準備しますね~」


 ダニエル氏はこう言う言い方しか出来ない可哀想な奴なのだと自分に言い聞かせた。

 ミストドアを発動し、まずはマリアを、次にシャルと何人か衛兵さん達を呼び出す。

「ネロ、お待たせ~」

「ネロ、ありがと」


「!? なんでマリア様がここに? !! シャルロット王女殿下まで!?」


 ダニエル氏が面白いように狼狽える、そんなにビビるかね?



「さて、じゃさっさとやるか、スコール!!!!」


今回は湖の水位を上げる為なので手加減なしだ、かつて無いほどの大雨が降る、雨粒一滴が握り拳くらい有るので当たると痛い、俺以外は。


 本気でやったので見る見る水位が上がってきた。こんなもので良いだろう、というところで雨を止めた。


「さすがネロ、湖を満たしちゃうなんて」

「ネロ、終わった? 帰ろ~」


「じゃあ、終わったという事でよろしいですね?」


「あ‥‥‥ああ、これ程までとは‥‥‥。!! いや、ちょっと待て! 水位が‥‥‥」


 穴の開いた水瓶のようにまた水位が下がってしまった。こんな短時間で? やはり何かある。


 湖の水が中央辺りに集まってきて水が盛り上がって出てきた、水が隆起して形作られていく、おぉ、水の竜だ、東洋のドラゴンだ。


『我の邪魔をしたのは、貴様か?』


 おぉ、喋った! シェ○ロンみたいだ、七個の球集めて無いけどな。聞いてみた。


『アンタがこの湖の主か?』

『いかにも。お主が雨を降らせて邪魔をしたか?』


『そうだ、マズかったか?』

『我が子を攫ったこの地の者達は滅ぼすと決めたのだ、今度は邪魔をしてくれるなよ』


? なんだって? 水竜の子供を攫った? なんだ、そりゃ? だから水竜が水を枯らせようとしてるのか?


『おい、それは本当か?』

『間違い無い。この地の何処かに我が子が捕らわれている、まさかお主が‥‥‥』


『いや、俺は知らない。どんな子だ? 俺も探そう、だから湖の水位を減らすのは待ってくれないか?』

『何故、お主の言う事を聞かねばならぬのだ?』


 水竜さんお怒りじゃね? 誰だよ、お子さん攫ったの? なんかダニエル氏が青い顔してる気がするけど。


「ダニエル様、お顔が優れませんが?」

「し、知らぬ! 幼い水竜を売り飛ばそうなどと考えたこともないぞ!!」


 怪しっ!! 水竜は(多分)竜語で話してたのになんで内容わかってんの?

 コイツ、何か知ってるな?


 その発言を聞いてか、水竜が襲ってきた。


『我が子を攫ったは貴様か!!!!』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る