ジーンの衛兵日誌
火事の現場は食料倉庫だった。普段は火の気もない、夜中であれば食料泥棒とネズミ以外は用事がない。衛兵の見回りも最低限だ。
しかし最近は何故か不審火が続いていた為、今日の見回り当番だった衛兵のジーンは注意深く見ていた。
特に何も見つからないが‥‥‥。見回り業務を終わらせて衛兵小屋に帰ろうとしていたところだった。
途端、何かの違和感に気づく。ネズミか、イタチか? そんな事を考えながら進むと突然火の玉が発生した。
「わぁーーー!!!」
ジーンはビビリだった。驚いた時の声はかなり遠くまで響いたしまった。ましてや静かな夜だ。すぐに声に気が付いた仲間たちが集まってくる。
なんだこれは?
衛兵達が困惑する。
火の玉? 火球? 人魂?
形があるようなないようなモノが黒い靄のようなモノを中心に漂っている。
そういえば聞いたことがある。黒い靄のようなモノが発生しているところからモンスターが現れたのを見た冒険者がいたと。
普段行ったバーで冒険者達から聞いたことを思い出す。
仲間の衛兵達が隊列を組み槍を構えるが火の玉は意に介す事もなく漂い続けている。
腰を抜かしているジーンが槍を投げつける。
投げた槍は靄の中心に落ち地面に突き刺さる。動いている火の玉どもには当然当たるはずもなく火の玉の軌道が変わり壁にぶつかった、食料倉庫の。
火がうつり燃え始める。この辺には井戸もない、池もない。
どうしよう、火を消さなきゃ。動揺しているジーンは何故か自分の皮袋を投げつける。今度の異動先で使うかもと作った狼煙の素が入っていた為、臭い煙が上がる、が当然だが火は消えない。
しばらくオタオタしていると雨が降って来た。さっきまで晴れて星が見えていたはずなのに。雨はすぐに激しくなり、痛みを感じるほどの勢いとなる。
『スコール』
熱帯雨林気候帯などで見られる激しい雨。
気がつくと火の玉どもは消滅。靄も無くなっていた。食料倉庫は一部の壁と屋根が焦げた程度で軽く修繕する程度で済んだ。
後日、第一発見者のジーンは衛兵隊一同より皮袋をプレゼントされた。ジーンは終始苦笑いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます