祝福の儀

 昨日は驚いた。魔力切れを起こすとは思わなかった。サブ魔力の方は全然成長してなかったってことだ。新発見だな。

 今後もサブの方の練習を繰り返していけばきっと役に立つだろう。早速今夜もやっていこう。


 ちなみに今日ここ王都の大神殿で祝福の儀が行われる訳だが、とにかく賑やかだ。あんな田舎から比べたら天と地ほど差がある。まるでお上りさんだ。


「父様、祝福の儀が終わったら、市場とか行ってもよろしいですか?」

「うむ、時間はあるだろうから王都見学も良かろう」


 祝福の儀の後、夕方からお祝いパーティーを行う予定らしい。良い才能が貰えたら良いけど、悪い才能だったらどうすんだろ。

 馬車の中でキョロキョロしながら大神殿に着いた。派手だ。天文学的に金が掛かっているのだろうな。


 中に入る。この時間は王族、貴族専用になるらしい。そもそも平民は余程のことが無いと大神殿には入れない。平民も祝福の儀は行えるが、わざわざ大神殿ではなく近所の教会で簡易的に行うのだ。


 ゲオルグが誰かに挨拶をする。最敬礼だ。

 仕方がない。うちは男爵、貴族の中でも1番下だ。俺も同じように続く。男爵なので1番に来て挨拶をしまくり祝福の儀を受けるのは最後だ。


 まぁ今日はそんなに人数が多くないので、そんなに待たずに済むだろう。余談だがピーター兄さんの時は大変だったようだ。


「「「「「おお~!!」」」」」


 歓声が上がる。どうやら良い才能が出たようた。でも頭を上げて良いものか? 

 とりあえずそのままだ。



 その間にカツカツと音を立てて誰かが俺の前に立つ。


 「頭を上げなさい」


 可愛い声が聞こえて頭を上げる。

 おっ、顔も可愛いやん。12歳でこんなに顔が整っているのか?


「アナタ、名前は?」

「ネロ・ヴァッサーと申します。父はヴァッサー男爵です」

「ふーん、アナタ黒髪なのね。珍しい」

「そうですかねぇ?」


「シャルロット殿下!」

 お付きの人達が来る。気が付いたゲオルグが凄い勢いで頭を下げる。俺の頭も押さえつけられる。痛いな。

 ん? 殿下? って王族かーい!?


 ジャンピング土下座かます勢いで最敬礼。

「シャルロット殿下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。愚息の無礼に関しましては、平にご容赦の程を‥‥‥」


 ゲオルグの声が震えている。

 地方の男爵であるゲオルグも、殿下のご尊顔を拝謁したことはなかったのであろう。


「別にいいわ。ネロって言ったかしら? アナタ、祝福の儀はどうだったの?」

「我々は最後でござりますれば‥‥‥」

 ゲオルグが代わりに答える。

「そうなの? まだかかりそうね。いいわ、待っててあげる」


「殿下!! 早急に陛下にご報告せねばなりません。下級貴族にかまっている暇はございません」

 お付きの人達の中のピカピカの鎧の人が叫ぶ。

 この人も偉い貴族なんだろうなぁ。


「アナタは先に帰っていいわよ」

「我々は殿下の護衛です」


「じゃあ、いいじゃない。少しくらい。気になることがあるのよ」


 ピカピカ鎧の人の声が大きかったので、周りは静かになっている。殿下の声も響くので、みんな聞こえていたことだろう。周りの貴族がこぞって気を使い、順番を譲ってくれた。


 うーん、やりづらい。


 苦笑いして先頭に立つ。今祝福の儀を受けている人の後になった。


「マリア・フレイン嬢  『槍王』!」

「「「おお~!!」」」

 良い才能みたいだ。槍が上手くなるのだろう。


「やった~!!」

 嬉しそうである。よかったね。ニコニコしながら階段を降りてくる女の子。こちらも可愛らしい。


 目が合うと同時に頭を下げる。というか下げさせられた、ゲオルグに。


「次、ネロ・ヴァッサー」

「はい」

 呼ばれた。返事をして階段を上がる。教会の偉い人っぽい人の前に立つ。


「天地創造の神々よ。願わくば彼の者に祝福を!!」


 お決まりのセリフなんだろうなぁと思っていたら目の前が真っ白になった。おお、ホワイトアウトってやつか? アレは吹雪の話だっけ?


ーーーーーーーーーーーー


「おひさ~」


とか考えてたら懐かしい声が。聞いたことのある心地よい声。ええ声や。


「ふふっ。ありがとう」

 目を開けると前世の記憶にも無いくらいの美女。

 あれ? どちら様?


「おいっ! ウチや!」

 声は聞き覚えあるのに見覚えがない。

 こんな綺麗な人? 忘れるハズが無い、間違いなく見た事ない。


「うん、まぁそれはええねんけど‥‥‥。」

 照れてる。


「コホン。水上修一くん改めネロ・ヴァッサーくん。この間の約束通り、ウチの祝福と能力を与えます。使い方わからんと困ると思て、降りて来たって訳や。感謝してくれてええで」

 あ、ハイ。アザーっす。


「‥‥‥まぁええか。ほんで使い方なんやけど‥‥‥」

 鑑定とアイテムボックスの説明を受けた。これって片方だけでもチートじゃね?


「まずは自分に使うてみて?」

よし、「鑑定!」


 ネロ・ヴァッサー 12歳

HP 70/70

MP① 1810/1810

MP② 11/11

腕力  5

器用  12

素早さ 20

体力  8

魔力  27

魅力  18


水魔法LV3

水神の祝福


 おお~。ゲームみたい!


 つーかおい!! MP! 他と桁が違うじゃないか!

「頑張ったやん!」

 涙目になる美人。


 いや毎日頑張ったけどさぁ。でもおかしくね?

 あとステータスがあるレトロゲーにそっくりなんですが。確か最大値が25だったはず。振り切っとるやないかい。


「キミが一番好きだったゲームみたいにしてみたんやけど。あかんかった? 魔力が27になってるんはウチの祝福のせいやな」

 うーん、人外扱いされたりして。

 まぁいいか。

 しかし腕力と体力低いなぁ。


「それは現在の肉体年齢に応じた数値やからや」

 なるほどそりゃそうか。

 MP①と②ってのは?


「それはキミが転生してきたからや。もともとは水上くんの魔力とネロくんの魔力と二つあったってことやね」

 ほう、ということは前世でも魔力自体はあったってことか。


「せやで。まぁ向こうの世界では意味のない数値やけどな」

 

「アイテムボックスも使うてみて?」

 よし、「アイテムボックス」


 目の前に半透明な画面が広がる。ほんとゲームっぽいな。とりあえずポケットに入っていたハンカチを入れてみる。ヒュッと吸い込まれる。


綿のハンカチ 1


 おお、出来た。取り出す時は‥‥‥。

 念じたら出てきた。こりゃ便利だ。


「問題無いみたいやね」

 うん、ありがとうございます。


「なんや急に。驚くやん」

照れてる。そして光り始めた。


「あとは色々やってみてんか? またそろそろ時間やし。また暫くは会えへんけど」

そうか、どうしたら会えますかね?


「ある程度時間経ってウチの像の前でお祈りしたらイケる思うわ」

わかりました、ではまた。

 


 再度ホワイトアウトして気が付いたら偉い人っぽい人の前だった。

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