エピローグ 娘達も放っておいてくれない!

「父上、今日は何をしましょう?」

「お父さん!一緒に出かけようよ!」

「パパぁ!私とお散歩に行こう?ね?」

「・・・う、うん。良いけど・・・どうしようかな・・・ははは。」


 あれから、すっかりと反抗的な態度が無くなった朱華あけは莉弦りお

 休みの度にべったりとしてくる。

 それを見て、美羽みうは俺を取られると思ったのか、張り付いて離れない。


 でも、今日は実は用事がある。

 それは、前に杏輔きょうすけからされた頼まれ事であった。


 あの後、朱華と莉弦がシオン達に叱られている時、俺の所に杏輔が来た。

 そして頼み事をされたんだ。

 それは・・・


「・・・お父さん。僕に戦い方を教えて?」

「うん?黒絵お母さんに教えて貰ったらどうだ?お母さんの武術は凄いんだぞ?」

「知ってる・・・けど、僕はお父さんと同じ戦い方が良い。あのね?優しいだけじゃ守れないって気がついたんだ。僕は、男だから、美羽ちゃんや、莉緒姉ちゃんや朱華姉ちゃん、それに、妹や弟達を守りたんだ!」


 決意が固そうな顔で、俺を見上げる杏輔。

 実は、うちには、美羽の下にもまだ4人子供がいる。

シオン、柚葉、翔子、黒絵の第二子だ。


 少し、歳は離れてはいるけどな。

 まだ、幼児だし。


「お父さんの戦い方かぁ・・・でもなぁ・・・」

「・・・駄目?」

「う〜ん・・・お父さんの戦い方はね?相手をいかに壊すかっていう、ちょっと怖い戦い方なんだよ?優しい杏輔に出来るかな?」

「うん!だって優しいお父さんが出来るなら、僕にも出来ると思う!!」

「・・・よし!じゃあ、こっそり教えてあげよう。」

「やったぁ!」


 と、言うわけだ。

 だから、今日は休みだし、こっそりと二人で出かけて、教えようとしていたのだが・・・


「父上、何故逃げるのです?」

「そうよお父さん!あたしと一緒に出かけよ?ね?いっぱいサービスするから♡」

「むっ!莉弦!はしたないぞ!父上!それよりも、ワタシと鍛練で汗を流しましょう!終わったらマッサージも致します!お背中も流しましょう!!」

「あっ!何よ!朱華姉こそはしたないじゃないの!!エッチ!!」

「な、なんの事だ?ワタシはただ、背中を流そうと・・・」

「だめー!パパとお風呂入るのは私だもん!朱華おねえちゃんと莉弦おねえちゃんはだめ!!」


 ・・・どうしてこうなった?

 俺は杏輔と一緒に出かけようと・・・


「こんにちは〜!お兄ちゃんいる〜?」

「あっ!瑞希お姉ちゃんだ!」


 杏輔が走って出迎える。

 そう、何故か杏輔は瑞希に懐いているのだ。

 というか、お姉ちゃんじゃなくて叔母さんなのに・・・


「瑞希お姉ちゃん!」

「あら?杏輔くん、こんにちは!お兄ちゃん・・・じゃなかった、お父さんいる?」

「うん!こっち!」

「お邪魔しま〜す!!あ、お兄ちゃんこんにちは!元気〜?」

「おう。お前はどうだ?旦那とは仲良くしてるのか?」

「まぁね〜。」


 すっかりと大人になり、今はもう三十路を越えている瑞希。

 母さん譲りの美貌をしっかりと受け継ぎ、とても美人になった。


 そんな瑞希は5年程前に結婚した。

 相手は、瑞希が務めている会社の同僚だ。

 瑞希は優秀で、会社でもずば抜けた存在らしい。

 当然、男性社員からも人気があったが、中々お眼鏡に叶う相手がいなかったらしい。

 そんな中、後輩の中で、特別優秀では無いが、人の良さはダントツの子が、瑞希に告白をしたらしい。

 その子は、瑞希の仕事上での教え子で、要領は悪かったが、誠実であり、また、料理も上手い子だった。

 瑞希は、とりあえず付き合ってみる事にしたらしく・・・そして3年の付き合いをした所でプロポーズされ、結婚したそうだ。

 決め手はなんだ?と聞いた所、


『う〜ん・・・一生懸命で可愛いし、料理も上手だし、私を一途に愛してくれるからかな〜?ほだされちゃったんだよねぇ。』


との事。

 今は、旦那は専業主夫として頑張っている。

 瑞希は、稼ぎ頭だしな。


「にしても・・・う〜ん可愛い!可愛いねぇ杏輔くん♡昔のお兄ちゃんによく似てるわ♡」

「はわわわわわ・・・」


 ぎゅ〜っと杏輔を抱きしめている瑞希。

 大きくなった胸の谷間に、頭を埋もれさせている杏輔。

 ・・・大丈夫かこれ?

 杏輔はもう中学二年生だぞ?

 変な性癖に目覚めさせないだろうな?


「父上!こちらを見て下さい!!」

「お父さん!こっちを見て!!」

「ぱぱぁ〜!!」

「むぐっ!?」


 顔に抱きつかれる。

 黒絵譲りのスタイルを持つ朱華と、同じ様にシオン譲りの発育を誇る莉弦。

 どちらも、中学生らしく無いスタイルだったのだが、最近更に成長著しくなってきており、ぽよんぽよんと顔で胸が跳ねる。

 そこに、後ろから美羽が飛びついて来てさあ大変!


「あはははは!なんか懐かしいねこの感じ!」


 瑞希の笑い声が聞こえる。

 懐かしい?


 それに興味を持ったのか、朱華達も動きを止め、瑞希を見る。


「瑞希叔母様、どういう事でしょう?」

「それはね〜朱華ちゃん?あなた達のお母さん達が、お兄ちゃんを取り合ってた頃、まったく同じ感じだったのよ?うふふ・・・本当に懐かしいわね〜。」

「へぇぇ・・・そうだったんだぁ・・・今のお母さん達からは想像できないわね・・・」


 ・・・確かに、昔はそうだったなぁ・・・


「ただいま〜!あれ?瑞希ちゃん来てる?」

「え?みーちゃん?」

「そのようですね。リビングでしょうか。」

「ふむ。とりあえず、リビングに行くとしよう。」


 四人が帰ってきた。

 足音が近づき、リビングのドアを開ける。


「ただいま。こんにちは瑞希ちゃん・・・って莉弦!?それに朱華も!?あんた達何やってるの!?」

「むっ!?またか朱華!莉弦!なんでそうやってソウにくっつくのだ!!」

「・・・美羽?あなたは・・・本当にパパが好きですね。とても良いことです。」

「う〜ん・・・翔子ちゃん?本当に良いのかなぁこれ・・・」


 ドタドタと近づき、朱華と莉弦を引き剥がそうとするシオンと黒絵。

 翔子は・・・深く考えたくない。


「母上!良いではないですか!子供が父に甘えることの何がいけないのです!?」

「そうよ!良いじゃないの!ねぇお父さん?お父さんも嬉しいでしょ?娘のおっぱいは気持ちいい?」

「おおおおっぱい!?総司!どういう事!?あんたまさか実の娘まで!!」

「ご、誤解だ!!俺はそんな・・・」

「・・・父上。ワタシ達の胸では気持ち良く無いですか・・・?やはり母上方位無いと駄目ですか・・・?」

「い、いやそんな事無いよ朱華?うん!気持ち良いよ?だからそんな悲しそうな顔しなくても良いよ?」

「そうですか!でも、父上のために頑張って大きくします!!」

「あたしも!」

「美羽も!!」

「ソウ!やはりお前!!」

「ち、違う!!」

「そーちゃん!娘は駄目!駄目だよ!!」

「柚葉違うんだ!!俺にそんなつもりは・・・」


 なんでこうなる!?

 目の前で、母娘でぎゃーぎゃーと言い合っている。


「どうしたの?騒がしいわね。」

「あら?何をそんなに騒いでるのです?」


 そんな所に、琴音さんと翼さんが帰って来た。


「総司くん達お邪魔するわね・・・って、何、コレ?」

「総司くん、黒絵達もどうしたの・・・って・・・うん?」

「何何?なんか楽しそうね?何コレ、どうしたの瑞希?」


 更に、琴音さん達と一緒に遊びに来た清見さん、葵さん、母さんも目を丸くしている・・・母さんはちょっと違うけど。

 5人とも、まさに美魔女と言うのが正しい表現で、老いを感じさせない美しさを保っている。

 

 そんな目を丸くしている内、母さんだけは、面白いおもちゃをみつけたような顔をしていた。


「あのね?みんなでお兄ちゃんを取り合っているのよ。なんか朱華ちゃんと莉弦ちゃんも目覚めちゃったみたいでさ?懐かしいなぁ〜って思ってたんだよね〜。」


 瑞希の言葉で、5人は俺たちを見て・・・


「確かに、懐かしい感じね。・・・莉弦ちゃんを見ていると、血は争えないって思うわ・・・。」

「ええ、そうですね。私達の時もそうですし、翔子達の時もそうですし。」

「・・・本当にね。・・・そーちゃん、大丈夫よね?娘は流石に無いわよね?」

「・・・朱華ちゃん?駄目よ?お父さんとは絶対に駄目よ?これはフリじゃ無いわよ?おばあちゃんとの約束よ?」


 少し冷や汗を流しながらそんな孫たちを見つめる琴音さん達。

 しかし、空気を読まない者が一人いた。


「そっかそっか!うんうん!私の総司はモテモテね!朱華ちゃん!莉弦ちゃん!頑張りなさいね!」

「「「双葉(さん)(先輩)(センパイ!?)」」」

「「(お)母さん!?」」

「「「お義母さん(様)(上)!?」」」


 うんうんと頷きながら、そんな事を言う母さんに、琴音さん、清見さん、葵さん、そして俺と瑞希、シオン達も動きを止め、驚愕している。


「ちょ、ちょっと血縁者はまずいでしょう双葉さん!?莉弦ちゃん、本気にしちゃ駄目よ!?」

「そうですよ双葉センパイ!」

「駄目よ!?朱華ちゃん、絶対に駄目よ!?」

「母さん!あんた何言ってんだ!!」

「ちょ、ちょっと待ってよお母さん!血が繋がってるのは流石に・・・」

「あら?瑞希がそんな事言うの?あなたなら賛成してくれると思ったのに。」

「私だからそう言うんでしょうが!娘が良いなら、妹の私だって良かったって事じゃん!気を使って損した!!あたしはお母さんを想って諦めたのに!!」

「瑞希!?お前まで何言ってんだ!?」

「うっさい!あったま来た!!ええ〜い!こうなったら私だってお兄ちゃんとくっつく!!」

「はぁ!?」

「ちょ、瑞希ちゃん!?」

「瑞希叔母様!離れて下さい!父上は私のものです!!」

「違うわ!お父さんはあたしのよ!」

「違うわよ莉弦!あたし達のに決まってんでしょ!!」

「違うもん!美羽のだもん!!」

「ええ、そうですね美羽。私と美羽、そしておばあちゃんのものですね。」

「うう・・・翔子・・・立派になって・・・」

「翼ぁ!あんた何言ってんの!?そーちゃん!絶対に駄目よ!!」

「あはははは!あー楽しい!やっぱりここは楽しいわね!」


 もみくちゃにされる俺。

 いつの間にか、琴音さんと翼さんも参戦している。

 母さんは一人で大笑いだ。


 どうしてこうなった・・・


「父上!ビシッと言って下さい!俺は娘のものだと!!」

「あ、朱華?あのね?俺は俺のもので・・・」

「「「「「「「「「違う!!私((ワタシ))((あたし))の!!」」」」」」」」

「あっはっは!」

「母さんも笑ってんじゃねー!!」

「お、お父さん・・・凄いなぁ・・・」

「きょ、杏輔?お父さんは別に凄くないよ?こんなの凄いって言わないよ?ただ、振り回されてるだけだからね?杏輔はこうならないようにね?」


 くそ!

 本当に、なんでこうなった!


 娘も放っておいてくれないのか!!

 それに、杏輔からのキラキラした眼差しが辛い!!

 

「もうちょっと俺を放っておいてくれ〜!!」

「「「「「「「「「「無理!」」」」」」」」」」」


 ・・・結局こうなるのか・・・


 俺は、体中に幸せの感触を感じながら、一人頭を抱えるのだった。

 だから俺はこう叫ぶんだ!


 誰も俺を放っておいてくれない!!


 〜Fin〜


****************

詳しくは、次話のあとがきにて。

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