輪廻転生は甘くない! ~自殺先は地獄です~

二神 秀

CHAPTER.1 地獄のはじまり

§ 1-1 無機質な終わり



 終わりにできる……。


 この世界に存在することを……。


 行きたくもない高校に入学して約6カ月。人間関係に絶望し、運命を呪ってきた。『鳴無おとなしれん』としての人生には残酷な未来しかいだけない。そして、周りの大切だと思っている人たちにも、その残酷さを伝染させてしまう。


 午前中、制服姿で久しぶりに外出したのも影響したのだろう。考えることにも疲れたところだ。履き慣れた靴に足を通し、誰もいない部屋に最後の「いってきます」をする。


 階段を上り、7階建てのマンションの屋上から見た黄昏たそがれ時の早秋の空は、驚くほど澄み渡っていた。すっかり伸びた髪がたなびく。しかし、何も感じない。


 フェンスを乗り越え、端まで進む。


 あと1歩踏み出せば、すべてから解放される。


 恐怖はない。後悔も、惨めさも、心のざわつきも……。


 あるのは、やっと解放される、その安堵あんどだけ。


 道がないところに1歩を踏み出す。重力からも解放され、空気を切る感触だけが身体を包んだ。


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