第4話 彼女の家

俺は七海ちゃんの家から、七海ちゃんに手を引っ張られながら家を離れた。


「もう、お母さんたら、お母さん変なこと言わなかった?」


「うん、別に…」


「おばさんに挨拶しただけだよ」


「そう、ならいいわ」


「あ、そうだ、昨日は私が悠くんの家に行ったから、今度は悠くんが私の家に来ない?」


「えっ、いいの」


「いいわよ」


「実は俺、家族以外の女性の部屋に行くの初めてなんだ」


「そ、そうなんだ…よかった」


「えっ」


「なんでもない」


「えっと、悠くんくん、昔みたいに手をつないでいい?」


「いいけど…なんだか恥ずかしいな」


「あっ、じゃぁ、私と手をつなぎたくないの」


「いや、そうじゃないよ」


「じゃぁ、はい」と七海ちゃんは手を差し出した。


俺はズボンで手を拭いてから、七海ちゃんの手を握った。


七海ちゃんの手は、暖かく、俺を落ち着かせる優しさがある。


「でも私も初めてだから、見られると恥ずかしいから、この先までね」と七海ちゃんは恥ずかしそうに言った。


俺たちは、しばらく手をつなぎながら、歩いていたが、学校の生徒が多くなったので、自然と手を離した。


2人で一緒に登校しながら、いろいろな話をしていたが気がついたときには学校に着いていた。


「じゃぁ放課後に部室でね」と言って七海ちゃんは去っていった。


去っていく、七海ちゃんに手を振りながら、なんだか以前の学校生活が嘘のようだ。


教室につくとタケシが「おい、部活にも顔出さない奴が、七海ちゃんといつ知り合ったんだよ」


「いやー、実は、さぁ久しぶりに会った幼なじみなんだよ」


「へーそうなんだ」


「天文部のマドンナとお前じゃ釣り合わねーだろ」

「俺もそう思うんだけど」


「なんだよ、お前、自分のことを認めてんのかよ」


「まぁ、応援してるから頑張れよ、親友のお前に初めてできた彼女だからよ」


「うん、もちろん、幼なじみだし、彼女のことを大切にしたいんだ」


「こんにゃろー、のろけやがって」


タケシは俺の首を絞めてきた。


そして合同授業の時になったが、俺が先に来て座っていると、彼女が友達と2人で入ってきて、友達にわからない程度に小さく手を振った。


それを見て俺も小さく振り返した。


「こんにゃろう」


それを見ていたタケシが、また首を絞めてきた。


なんて幸せな時間なんだ。


背中に羽が生えたみたいだ。


そして今日の授業を終えて、放課後になった。

放課後は、天文部の部室がある。


また、天文部で彼女に会える楽しみで、ドキドキしている。


天文部に続く廊下を歩きながら、いつ彼女と会うのか、楽しみでたまらない。


真っ直ぐな廊下を歩いていくと、部室の入り口が見えてきた。


あの扉を開けると彼女がいる。


一歩ずつ歩いて近づいていく。


そうすると違う通路から彼女が出てきた。


俺は、七海ちゃんとぶつかりそうになり、倒れそうになる彼女を手を伸ばして寸前で彼女の手を握った。


「ありがとう、危ないところで」


「大丈夫だった?」


「うん、だいじょぶ」


急にあったことから、ドキドキ感が消えてしまった。


自然と彼女に接することができた。


俺が扉を開けて部室に入った。


部室でタケシや他の女性部員といろいろな話をしたりする。


タケシは、1人の女性部員にばかり話しかけているので、気があるのかな?


そして今日は早めにお開きになった。


彼女は片付けものがあると言うことで部室に残ったので、俺も座って待っている。


片付け終わった箱を書棚の上に乗せるみたいで、椅子を持ってきて上履きを脱いで、椅子の上に上がる。


俺は、なにげになく彼女の行動を見ていんだけど荷物をもって壁の方に歩いて行っている。


そして荷物を一度、置いてイスを壁際に持ってきた。


彼女は持ってきた椅子に上履きを脱いで上がっている。


椅子に上がった彼女は、書棚の上に箱を置こうとしている。


書棚が高いので届かなかった彼女は、背伸びした。

背伸びをした瞬間に、彼女のスカートの後ろから白い下着が見えてしまった。


俺は、慌てて、見てはいけない物を見たような罪悪感から、立ち上がって俺が手伝うよ、と言って箱を受け取り、書棚の上に置いた。


危なかった~。


もう胸のドキドキがたまらない。


俺のうちには妹と姉がいるので、初めて見るわけではないが、妹も姉もミニスカートぐらい履くから、たまに見える事はあるけど、彼女の下着は、なんだかドキッとして胸が高鳴る。


妹姉の洗濯物の下着を見ることもあるけど、変な胸の高鳴りを感じてドギマギしてしまった。


なんだか、すごく新鮮だ。

下着が新鮮じゃないよ、家族じゃない人のを見たからだよ。


妹なんかは、ミニスカートでアグラを組んでソファーに座っテレビを見たり、スマホを扱っているから。


俺が学校から帰ってきて、リビングを通るけど、そこに妹が、うつ伏せで寝転がっていることがあるけど中学のスカートも短いから目のやり場に困る事もある。


俺を男だと思っていないから。


兄ちゃんなんて男だと思ってもらえないし。


今は大丈夫になったけど、姉ちゃんも、ひどかった時期があった。


父親がいても、何回も言われていたけど。



「悠くんは、昔から優しいね」


「………」俺が、しゃべらないし、顔を赤くしていたから変に思ったみたいで、はっとして急に手をスカートの後ろにもっていき、押さえているみたいだ


彼女は、俺の行動が変だと思ったのか


「もしかして、見えた?」


と聞かれたので、しょうがなく


「うん、少し‥…ごめん…」


彼女は、顔を赤くしている。なんだが、気まずい雰囲気。


何か言わなければと、思っていたが、言う言葉がない。

今も顔を赤くしながら、「悠くんなら、いいわ」と言った。


えっ、俺ならいいって、どう言うことなんだろう?


それ以上、何も言えなくなって、俺たちは帰ることになった。


職員室に部室の鍵を預けて、2人して帰っていく。


2人して歩いていても、なんだか、さっきの事が今でも響いている。


彼女も今でも顔が赤いような気がする。


何か話題を見つけなければ。


その日は無言で彼女を家まで送ってきた。


しかし送ってきたところ、彼女のお母さんに見つかって、家で引っ張りこまれた。


今の彼女の家は、昔の日本家屋と違って洋風の家だ。


お父さんの仕事上で引っ越しをしたが、またこちらに転勤になって戻ってきたそうだ。


「お母さん元気にしてる」


「はい、とても元気で口やかましいです」


「あら、そんなこと言っちゃだめよ、あなたの為を持っていってくれているんだから」


「はーい、反省してます」


「まぁ、昔からあなたは素直な子だったわね」


本当に昔から知っているおばちゃんだったから、軽くを言うことができる。


「あ、そうだこの前、言っていた、私の部屋に招待してあげるわ」と七海


「じゃぁ、後でコーヒーでも持っていってあげるわ」


「早くいきましょう」俺の手を引っ張っていく七海


俺は七海のあとから階段を上っていくんだけど、後からついていった方が、やばい感じがある。


なので、下を向きながら階段を上っていく。


そこで七海ちゃんも気がついたみたいで、スカートの後ろを抑えながら階段を上ってる。


七海ちゃんが扉を開けてくれたので、部屋の中に入ってみると、ぬいぐるみやら、ピンクや華やかな色のものが多くあった。


昔、近くに住んでいたときには、七海ちゃんの部屋にも何回も行ったことあるが、人形やぬいぐるみが多くあった。


ベッドの上に見たことがあるようなぬいぐるみが置いてあった。


「あっ、これ見たことがある」


「それは、一番大事にしているぬいぐるみなんだよね」


「どうしてだかわかる?」


「昔、悠くんが私の誕生日の時にくれたんだよ」


俺は本当は忘れていた。誕生日にぬいぐるみ何かをプレゼントしていたんだ。


「あー、その顔は忘れていたなぁ」


「ごめん」


「まぁいいわよ」


と言って話しているところにお母さんがコーヒーとクッキーを持ってきてくれた。


「ゆっくりしていってね」


お母さんが部屋から出て行ったので、七海ちゃんの部屋を見たので、もう帰ろうかと思って、机の上を見ると、写真館が置いてあった。


写真館は、見えないように倒してあったので、写真を見ることは、できない


それに気づいた七海ちゃんが、恥ずかしそうに、写真を見せてくれた。


そこには、子供の頃の七海ちゃんと俺の写真があった。


「部屋に飾っておいてくれたんだね」


「もちろん、大切な思い出だし、悠くんにまた会えると思っていなかったから」


「もう、私が転校していって、ずいぶん街並みも変わったから、もう住んでないかと思って」


「そうしたら私の入っている天文部に悠くんがいるんだもの」


「びっくりしたわよ…」


「俺もあの時、七海ちゃんが話しかけてくれて、本当に驚いたよ」


「でも、あんなに思っていた悠くんが、ここにいる」


「悠くん、これからもよろしくね」


うん、こちらこそよろしくと言って俺はそろそろ帰ろうかと思っている。


帰り際におばさんに挨拶をして、七海ちゃんの家を出てきた。


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