179.再・六人の戦い④
繊維目の施設と間違えて騎兵隊の宿舎に突っこんでしまったローザ。
長い鉄の棒を振り回して騎兵を殺さないように立ち回っているが、流石に手加減をして百近い騎兵を捌くには限界があった。
「くぉあっちゃぁ! あぶっ、あぶな! 今馬に踏まれそうになったじゃない! メインヒロインが怪我したら主人公のブルー君が黙ってないわよ!」
逃げ回りながら繊維目の施設を探すが逃げるので手いっぱいのようだ。
これ以上時間をかけたら勝負に負けてしまうが……それはローザもわかっているので奥の手を使う事にした様だ。
「こうなったら必殺技を使うしかないわね! 『
ローザの体がブレたかと思うと三つになった。
武器も同じ鉄の棒を持っており、まるで分身したように三人になっている。
「なっ! なんだコイツは! 忍びマスターか!!」
間近にいた数名の騎兵が驚いているが、どうやら忍術というスキルがあるようだ。
残念ながらローザの第四段階のスキルは
神の代理人とは言わないが、天使に近い位置づけだ。
「さあ私の
何も言わずに二体のローザは騎兵に襲い掛かる。
能力はローザの半分だが、それだけでも十分すぎる能力だ。
しかしそれでも手加減しまくる必要があり、さらなる幻を呼び出した。
二体の幻から更に二体ずつ増え四体増加、六体になった。
増えた四体の能力はローザの四分の一、まだまだ足りないと思ったのか増えた四体からさらに二体ずつ増えて八体が増加、十四体になった。
「よ~っし行け我が
十四体の幻達は騎兵を圧倒し始めた。
順々に能力が落ちていくとはいえ、元が元なので人間相手には十分すぎる能力だ。
「さあブラウン、早く繊維目の場所を教えて!」
『……目の前の建物がそうです』
「へ?」
左目の前に映し出された表示を見ると距離は二メートル、矢印は真正面を差していた。
先ほど間違えて突入した騎兵隊の宿舎と同じような建物だ。
「もう! そういう事は早くいってよね!」
『常に表示されています』
怒って誤魔化そうとしたが、何事も無く正論をぶつけるブラウン。
ローザが口でブラウンに勝てる日が来ることは無いだろう。
誤魔化す様に扉を蹴り飛ばし、大声を上げて暴れ出す。
「ここにいるのはわかってんのよ! さっさと成敗されな……えっと?」
威勢良く入ったのはいいが、繊維目はすでに戦闘状態に入っていた。
大量の繊維目達は剣を振り上げ、槍を構えており今まさにローザに向けて攻撃を開始する所だった。
「いーーやーー! やっぱり気持ち悪いー!」
鉄棒を頭の上で高速回転させ、建物の壁や扉も巻き沿いにして破壊していく。
回転速度を緩めずに前に走り出し、進路上の繊維目は鉄棒に粉砕され、巻き込まれて雑巾の様に吹き飛んでいく。
その姿はまるで移動するジュースミキサーの様だ。
建物の中をうねり歩き、気が付けば立っているのはローザだけだった。
「……終わった? ふぅ、これでやっと……ああっ!!」
安心したのか窓の外を見ると、ガラスに映った自分の姿を見て悲鳴を上げる。
返り血で真っ赤になっていた。
「いや~ん、もぅ、変な戦い方するんじゃなかった」
右の
もっと汚れていた。
顔よりも袖の方が汚れていたのだ。
「もー! 水はないの⁉ あ! 噴水はっけーん!」
広場に小さな噴水を見つけ、壁を破壊して走っていく。
ちなみにローザの分身たちはすでに騎兵を制圧し、騎兵を地面に座らせ、鉄棒で威嚇していた。
だがそろそろ時間切れだ。
分身たちはスゥッと姿が薄くなると消えていなくなってしまったのだ。
なので自由になった騎兵たちはローザを追いかけ始めた。
「は~気持ちいい~。やっぱり水浴びは……キター!」
噴水の池に飛び込んで顔を洗っていたが、騎兵が追いかけて来たので慌てて逃げ出した。
今度は全力で逃げるだけなので、あっという間に騎兵たちの視界から消えてしまう。
「あ、あいつは一体何だったんだ?」
「でもリーダー、気にくわないアレを倒してくれましたよ」
「……ふむ、俺達が気付いた時には既にアレは死んでいた、という事にしておこう」
●ブルース視点
「う~ん、何があったのかな」
ブルースは繊維目が集まっている森に入ると、なんと繊維目と兵士は戦っている真っ最中だった。
鎧を見ると他国という訳ではなく、どうやら繊維目が暴走したため兵士と戦闘になってしまったようだ。
すでに兵士は壊滅状態、繊維目は暴れたりないのか壁のない屋根だけの広大な木製の建物を破壊し、さらに森を破壊している。
そしてブルースを見つけると、まるで獣の様に四つん這いになり襲い掛かってきたのだ。
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