126.第二次アリアルファ海戦
異空間を航行中の戦艦内。
そろそろワープアウトするらしく、艦隊内ではワープアウト準備が進められていた。
「司令、間もなくワープアウトします」
巨大な船の中にあるブリッジでは、沢山のクルーが目まぐるしく動き回っている。
半円形のブリッジ内の各部署は花丸の様に半円形で分けられ、それが弧を描く
様に並べられているのだが、一階部分は広大で半径五十メートル程で、司令官は随分と高い位置で一階を見渡せるようになっている。
「アリアルファ星系内に動きはあるか?」
副司令に尋ねると、副司令は司令官の目の前にスワイプするように映像を移動させる。
そこに書いてあることを説明するのだが、特に動きは確認されていない様だ。
キッチリとして清潔感のある司令官はイスに深く腰掛け、ひじ掛けに両腕を乗せる。
そして目の前の映像に映し出されるカウントダウンを静かに見ていた。
ワープアウトまで三十秒……二十秒……十秒……五、四、三、二、一、OUT。
今まで風景が映されていたブリッジのモニターが宇宙空間に切り替わる。
それと同時にいくつもの青い光の線が映し出され、複数の爆発が確認された。
「今のは何だ!?」
「確認しています……司令! 何者かの攻撃により数百隻の駆逐艦及び巡洋艦が破壊されました!」
「第一種戦闘配備! バリアフィールドの弱い艦は内側に入れ!」
ブリッジ内が一気に慌ただしくなる。
そのあいだも青い光は爆発を生み出しているが、それもまもなく終わってしまう。
各艦のバリアフィールドの展開が終わり、攻撃を防いでいるのだ。
その攻撃を行った相手、ブルース達はすぐさま次の行動に移った。
『艦長、敵の総数は七万四千八百五十三隻となりました。今の攻撃で千隻ほどしか破壊でなかったようです』
「仕方がないさ! バリアを張られたら人型機動兵器では火力不足だから、すぐに戦艦に乗り移ろう!」
「「「了解!」」」
ブルースとローザは大型の黒く丸みを帯びたハンマーを操り、
全長約六百メートルの戦艦は緑色の流線型で先端が尖がっており、宇宙船にしては珍しく小さな翼が付いているのだが、全体的に平らで艦の最後尾には動物の耳の様に二つの出っ張りがある。
その中央より少し後方にブリッジがあるのだが、そこにハンマーが入るスペースがあり、座るように乗り込むと装甲板でふさがれてハンマーが見えなくなる。
他の四名は高速戦艦で、火力型よりも細身で全長は五百メートル程、先端は丸みを帯びており後方のエンジン部分は四角い十字型をしている。
翼は無いが後部以外にもブースタが真ん中辺の左右についている。
その前方にブリッジがあり、機動型のヴェイロンVXが座るように高速戦艦に乗り込むと、装甲版で覆われた。
「搭乗完了! ブルー君、いつでもオッケーだよ!」
「ブルース、上手く乗れたんだな、ダナ!」
「ブルー、こちらも大丈夫よ」
「お兄様、いつでも行けますわ!」
「マスター、ご命令を」
全員の戦艦への搭乗を確認し、ブルースは合図を出した。
「全員、攻撃開始だ!」
レーザーの後を追うように船が突進し、敵艦隊の真ん中を突っ切るように進む。
爆発があちこちから上がり、敵の艦載機も多数出てきた。
「小さいのは任せるんだな、ダナ!」
シアンの高速戦艦の船体から無数の小さなレンズが現れると、千近いレーザーが敵艦載機に向けて発射される。
艦載機も必死に逃げるのだが、レーザー一本一本が目標を追いかけて確実に落としていく。
「うっひょ~、相変わらずシアンは凄いわね! 私も負けてらんないわ!」
ローザの戦艦が突出すると、とがった先端から太いレーザーが発射される。
だがそれだけでは終わらず、ローザが声を上げると更なる追撃がされた。
「≪ブラストアロー≫!」
船体の上部四カ所、側面各二カ所から大型ミサイルが発射されるが、まるでレーザーのような速度で飛び、更にミサイルから小さなミサイルが大量に発射される。
複数の駆逐艦があっという間に炎に包まれ、巡洋艦はバリアフィールドを破壊されて船体がむき出しになる。
むき出しの船体に小型ミサイルを撃ち尽くした大型ミサイルが命中し、巡洋艦クラスも爆散した。
「む、ローザに負けていられませんわ!」
エメラルダが負けじと攻撃を開始するが、通常攻撃では一度に倒せる数が少ない。
なのでやはり出すしかないようだ。
「ジズ! いらっしゃい!」
宇宙空間に巨大な白鳥が現れるが、その姿は今までとは違いメカメカしい。
カラフルな翼にはロケットエンジンがあり、頭にはヘルメットをかぶり、鋭い爪の足は鉄に覆われ一回り大きくなっている。
「
全長百メートル程だったジズの体が大きくなり、千メートルを超える大きさになると、更に巨大な光の翼が現れ敵艦を大量に包み込む。
包まれた敵艦は潰れるようにひしゃげ、光の翼に包まれた船は一気に爆散した。
「エメも張り切っているわね。私は攻撃は苦手だから、後ろから援護射撃ね」
「オレンジーナ、私も後方支援です。情報を送りますので長距離射撃を行ってください」
シルバーが小型艦と
その情報を頼りに超長距離射撃をするのだが、もちろん敵は止まっている訳ではない。
数秒後の位置予測をしてそこに打ち込んでいるのだ。
ちなみに秒速一キロメートルを超えた速度で動いているため、数秒後には全然違う場所に移動している。
それでもオレンジーナの射撃は九割以上の命中率があった。
かなり優勢に戦闘を進めているが、それを遮るようにブラウンから連絡が入る。
『何者かがワープアウトしてきます』
通常空間に現れた新たな敵艦は、全長百キロメートルを超える超巨大な船だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます