101.高度な古代文明

 イエロウビーの案内で遺跡へ向かうが、道中は鬱蒼うっそうとした密林で覆われ、草も人より高くまで生い茂っていた。

 その中に何とか一人が通れる幅が踏み固められているが、顔や体に枝や草がこすれて血がにじむ。


「きゃっ! んもぅビー兄さん! せめて道くらい整備してくださいまし!」


「そうだな」


「ほ、ほらエメ、顔に泥が付いてるから拭いてあげるよ」


 あまりの悪路にエメラルダは非常に不機嫌で、その怒りをイエロウビーにぶつけるが軽く流され、何とかブルースがなだめている。

 そんな悪路を一時間近く進むと、ようやく道がひらけてきた。


「ここだ」


 密林を抜けると木が生えていない広い場所に出た。

 草は生えているが腰辺りの高さなので、あまり気にせず前へと進む。

 すると鎧を着こんだ兵士が数名立っていた。


 イエロウビーの姿を確認したのか、数名の兵士は立ち上がり敬礼をする。 


「お疲れ様です!」


「今から入る」


「了解しました!」


 非常に簡単な挨拶だが、今から入ると言われても入り口はどこにあるのだろうか。

 兵士が地面に置かれた頭ほどの大きさの石を四つ動かすと、目の前に石が崩れかけた入り口が現れる。


「幻影魔法ですの? これは最初から遺跡にあったモノでしょうか?」


「ああ」


「よく遺跡を見つけられたね。どうやって見つけたの?」


「さあ」


 どうやらイエロウビーも知らないようだ。

 そもそもイエロウビーは弓使いアーチャー部隊の隊長なので、このような場所におもむくこと自体が珍しいのだ。


 それを理解しているので、二人は無言で進むイエロウビーの後をついて行く。


 遺跡は地下にあるようで幅が五メートル程の乾燥した石階段を降り、エメラルダは灯りの魔法を使う。

 階段は深くまで続いているのか、灯りの届く範囲には次の階が見えない。


 十分ほど階段を降りただろうか、ようやく床が見えてきた。


「よ、ようやく着いたね」


「ええ、いったいどれだけ降りたのか分かりませんわ」


 石階段から硬い土の地面に到着すると、二人は少し安堵する。

 しかしイエロウビーはそれを無視してどんどん先へと進んでいく。

 ため息をついて後を追うと、今度は直ぐに立ち止まる。


「これだ」


 少し高い位置の壁を指さすと、そこには色鮮やかな壁画があった。

 ひれ伏す人々、狩りをしているシーン、鳥らしきものが飛んでいる絵、そしてその中に戦争と思われる絵があった。


 多くの人が棒を肩に当てており、まるでアサルトライフルを構えているようだ。

 棒の先端からは小さな丸い物が並べて書かれており、弾丸を発射しているように見える。


「これはマシンガンを撃っている所? この壁画はいつぐらいに書かれた物なの?」


「わからない」


「この遺跡が発見されたのはいつですの?」


「十日ほど前らしい」


 まぁ分かるはずもないなとブルースは諦め、黒い鎧を纏うとレーザー兵器搭載航空機型ドローンファランクスを一機呼び出した。


「この壁画が描かれたのはいつごろかわかる?」


 ドローンは音もなく宙に浮いているが、子機が一機出てきて壁画の数か所を削りドローンに戻る。

 ブルースの黒い鎧のヘルメット内モニターに情報が表示される。


『年代:約三千四百年前

 成分:二酸化ケイ素、酸化アルミニウム・酸化カリウム・酸化ナトリウム・樹脂製塗料

 名称:花崗岩かこうがん、ペンキ』


「ペンキ? 古代人が書いたわけじゃないって事?」


『古代に存在した高度文明により書かれた物の可能性大

  ____一部修正、花崗岩かこうがんの加工にレーザー加工を確認、FALHANXファランクス・個別名シルバーよりも高度な技術と判断』


 花崗岩の壁は風化して凹凸が多いのだが、その加工自体にはかなりの技術が使われていたようだ。


「シルバーよりも上!? でも描かれてる武器は火薬を使った物じゃないの?」


『___否定。高電力を使用した物理兵器、レールガンと予想』


「小型のレールガンを作れる技術か……でもレーザーガンの方が難しいように思えるけど?」


『進化の方向性が違う場合、光学兵器よりも物理に傾向する場合がある。工業技術として光学、軍事として物理になったと予想』


「そんな場合もあるんだ。でもその文明はどうしてなくなったの?」


『__________なくなっていない』


「え?」


 ドローンが高度を下げて絵が描かれていない場所までくると、先端よりレーザーを発射して壁に丸い穴をあけた。

 石が丸くくり抜かれると、そこには銀色に光る物が見えた。


「え!? ブルー兄様、鉄の壁がありますわ!」


 ブルースとイエロウビーがしゃがむと、丸くくり抜かれた場所の奥に金属の壁らしきものが見えた。

 ブルースが指で叩くが高い音はせず、分厚い事がわかる。


「どういうこと? 無くなっていないって、まさかここに文明が残ってるって事?」


『肯定』


 ドローンが更にレーザーを発射すると、壁画の描かれた壁一面が崩れ落ちる。

 そこには傷一つ付いていない金属の壁があり、扉のような物が現れたのだ。

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