第五十九話 ハナ…ギスギス。女の争い再び三度?
ライブの練習の後、ミーティングが開かれた。三ヶ月後にファンミーティングがあるのでその内容も話し合うらしい。
あの時みたいにバスで移動してお泊まりした時が楽しかったなぁ……。
美玲ちゃんは相変わらずカークンとメール。最近家で彼とのことを話してくれない。上手くいってないのかなぁ。
由美香さんは私の横に相変わらずいるんだけど、あれ、また香水の香りが変わった? メイクも甘々からキリッとしてるし。次の役の役作り?
「ねえ、由美香さん……また男作ったでしょ」
悠里ちゃん!! 相変わらず情報が早い! て、またって次は誰よ、懲りたんじゃないの?! 由美香さんはシラを切る。この2人はここ最近本当に仲が悪い。
「
「なぁに? 梨岡くんと付き合っててなにが悪いの? てかさ、人の悪いところばかり見つけてかき回してなにが楽しいの?」
「これも清流ガールズのためよ。こんな尻軽女がいるだけでイメージが悪くなるの!」
「あー、わかった。悠里ちゃんはまだ男を知らないもんねぇ。キスどころか手を繋いだこともない……」
「黙れ、男好き! 阿笠先生にモーションかけてスルーされているの知ってるんだからねっ! 性病検査でもしてもらったら? ぶっとい注射でも刺されたら?」
「は? 何言ってんの? あんたの尊敬してる大野ちゃんも超男好きだって知ってる?! 子役から這い上がるために中学の時から枕してたっていうじゃない!」
「そんなの噂よ!!!」
ちょ、ちょ、チョーーーーーーーー! 大野ちゃんが枕、枕……営業?!
「そうよ、あの女……わたしにはカークンとの交際には慎重にだとか言っときながら……由美香の奔放なところを野放しにしているし、自分はいろんな業界人に股開いてたなんて許せない!」
て、美玲ちゃんも加わらないでよ!!!! 3人が揉みくちゃにつかみ合いしている。いっつも私が仲裁役なの! 汚い言葉使うのもやめなさい! ファンの誰かが聞いたらやばいよ! もおおおおーっ! やめてええええー!!
「おいお前ら! なにやってる!」
タッキーがやってきた……大野ちゃんは?
「由美香、男遊びは構わないが相手を選べよ。それと避妊はしっかり、性病検査しとけ。悠里も人の噂嗅ぎ回っている時間あったら予報士の勉強しろ。こないだも漢字の読み、アクセントの違いがあったぞ。美玲、彼氏と会うのは構わねえけど今もらってる仕事の責任を持て」
タッキーが淡々と言うものだからみんな黙って座った。
「ハナも油断するな。子供番組契約中に何かあったら大変だぞ。こっちは色々とつぶしてはいるが、ネットで色々書かれている」
……そりゃ、ロミとニーナ知ってる人が見たらわかるよ。でも今度イベントあるし……うん。
「ファンミーティングは今までの楽曲をハナ、美玲バージョンで披露してベストアルバム発売に繋げる。深夜だが東京の音楽番組にも出ることが決まった」
おおおーっ、東京の! でも最近音楽番組は深夜に追いやられているのよねえ。見てくれる人はいるのかなぁ。あ、大野ちゃん。
「遅くなってごめんね。どこまで話した?」
「ファンミの曲のことと音楽番組のところまで」
「わかったわ、じゃあ変わるわ」
大野ちゃん、結婚して少し顔つきも穏やかになった気がする。年下なのに本当にしっかりしている。前からか。
「あとね、今度のファンミーティングは来年の5周年も控えてるからさらに上得意様向けのステージもあるからね。昔からお世話になってる方々に今度握手会でアピールしてね」
上得意様……トクさん……。あ、彼の名前がすぐ出てきちゃった。
ラブホ事件の後、すごく謝られたっけ。土下座までされてびっくりしたけど。一生懸命さが可愛くって……許しちゃった。
「ハナ! ぼやっとしてないで。あなたはこの後ぐーちーぱーくの打ち合わせあるからね」
あー、そうだったぁ……。そういえばぐーちーぱーくは親子連れのイベントだから……トクさん来れるかしら。
ミーティング後は由美香さんはささくさと帰ってしまい、悠里ちゃんも美玲ちゃんも口を聞かず。
なんか大丈夫じゃないよ。
「ハナ、こっちきて」
わたしは別室に呼ばれた。タッキーはいない。
「メンバー間がギスギスしてるわね……」
「はい……」
「わたしもこんな時に結婚してしまって申し訳ないけど……さ」
「ううん……。大野ちゃんは一生懸命やってくれてるし。他の子たちも必死なんだよね」
「ハナ、お願いがあるの」
「はい?」
大野ちゃんのお願いは怖い。
「ハナ、あなたにリーダーになってほしいの」
ほーらー、やっぱり!!
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