自分探しの異世界冒険

バーチ君

魔族に転生しちゃった!

第1話 いきなり異世界

 僕の名前は“沢渡信”現在中学3年生だ。小学校の時から身体が大きいことを馬鹿にされ学校に行かなくなった。特に仲のいい友人もいないし、学校に行くのも面倒なので、毎日毎日部屋の中でゲームをしている。めったに外に出ることもない。そのため、今では身長が175cmなのに対して体重が120㎏もある。当然だが、彼女もいない。そんな僕が珍しく、本屋に行くことにした。本屋に行く途中もゲームからは離れられない。スマートフォンを見ながら歩いていると、知らないうちに交差点に進入していたらしく、トラックに轢かれた。


 ここまではよくある話だ。その後の展開では、神界に行って美人の神様に出会いチート能力をもらって転生させてもらって万々歳。僕もそうなると思っていた。ところが人生そんなに甘くない。僕は気づいたらうす暗い洞窟のような場所にいたのだ。




“ここはどこだろう?! 死後の世界か? 僕、地獄に落とされたのかな?”




「カサカサ・・・カサカサ・・・・」




“なんかいるのかな。”



 

 僕はその場から離れようと思い、立ち上がった。




“ん?!”




 体が軽い。それに視線が低い。




“ん?!”




 走りながら僕は自分の手を見た。子どもの手だ。




“ええっ――――!・・・・・・なんで?!”




 とにかく僕はその場から離れようと必死だった。だが、うす暗い洞窟の中でどっちに逃げたらいいのかわからない。適当に走っていると何かに躓いて転んだ。




“痛ったたぁ―――”

 



 よく見ると、躓いたのは石ではなく地面を這う芋虫だった。しかも、大きな口がある。それがウジャウジャといるのだ。




“気持ち悪いなぁ~! なんだこいつら。”



 

 こともあろうか、芋虫がジャンプして僕に襲い掛かってきた。僕は手元にあった石で片端から潰していく。30匹は潰しただろうか。


 少し休んでいると、芋虫の体液の匂いに誘われて大きな蛇がやって来た。




 “ウワッワッワ”




僕は蛇が大嫌いだ。慌てて立ち上がって走って逃げた。すると小さな明かりが見えた。




 “出口だ! やったぞ―――!”




洞窟から出ると、外は眩しく目がくらみそうだ。耳を澄ましてみると、かすかに水の音が聞こえて来る。音のする方に行ってみると、そこには池のような場所があった。




 “やった―――! 水だ~!”




のどが渇いていた僕は一目散に池に行き、水をすくって勢いよく飲んだ。そして、水面に映った自分の姿を見て愕然とした。




 “えっ?! なんで~!”




そこに見えたのは、5歳ぐらいの子どもだった。それはいい。まだ許せる。だが、髪の毛が真っ白で瞳が真っ赤なのだ。それに裸だ。




“ここはどこなんだ? なんで?! 僕、どうすればいいのさ?” 




 僕は途方に暮れながら池の周りを歩き始めた。すると丁度池の反対側に来た時、道を発見した。




 “どの道も必ずどっかにつながっているんだよな”




その道をとぼとぼと歩いていくと、ひっそりと建っている家があった。僕は、小さいころにテレビで見た山姥を思い出した。そして、恐る恐るその家を訪ねた。



「すみませ――――ん! 誰かいませんか――――!」



 すると家の中から女神のような美しい女性が出てきた。



「何か用か?」


「道に迷って困ったんです。」



 女性はしばらく考えて言った。



「・・・・・・・・中に入れ!」


「ありがとうございます。」


「ところで、おまえなぜ裸なんだ?」


「・・・・」


「ちょっと待っていろ! 何か着るものを持ってきてやる。」



 女性は家の奥には入って行った。僕は家の中をじっくりと見てみると、たくさんの瓶がある。瓶の中にはカエルのようなもの、蛇のようなもの、トカゲのようなものなどが液体とともに入っていた。正直言って、不気味だ。本当に山姥かもしれない。



「これで我慢しろ!」



 女性が何か服を持ってきてくれた。すぐに着てみたが大きすぎる。ブカブカだ。すると、女性が袖を折って縛ってくれた。



「ありがとうございます。僕はシンと言います。」


「私はナツだ! ところでお前はどこから来た?」



 僕は正直に話すことにした。



「僕、交通事故にあって、気づいたらここにいたんです。」


「交通事故?」



 ナツは僕を睨んだ。



「ここは地球じゃないんですか?」


「地球? 不思議な奴だ! お前はさっきから何を言っているんだ!」



 オレは確信した。やはり僕は死んだんだ。これは夢じゃない。別の世界に転生したんだと。



「多分僕は元の世界で死んで、この世界に来たみたいです。」


「よくわからんが、まあいい。ここは魔族の国だ! お前のようなものが一人で生きていくには厳しい場所だぞ!」


「魔族?!」


「ああ、そうだ。」


「僕も魔族なんですか?」


「ああそうだろうな。背中に翼のある人間なんかいないからな。」



 僕は慌てて自分の背中を確認した。小さいが確かに黒色をした翼がある。



「お前はどこかの世界で死んで、この世界の魔族に生まれ変わったんだろうな。」


「ナツさん。お願いします。僕をここにおいてくれませんか? 何でもしますから、お願いします。」


「しょうがない。だが、しっかり働いてもらうぞ!」



 こうして、僕はナツさんと一緒に暮らすことになった。



 ナツさんがこの世界についていろいろ教えてくれた。この世界には様々な種族がいるらしい。魔族以外は同じ場所で暮らしているが、魔族だけは別の大陸で暮らしているようだ。魔族は魔力が強く、他の種族よりも能力が高いせいで、他の種族から嫌われているのだ。それと、この世界には魔物もいるから気を付けるように言われた。



「ナツさん。魔族と魔物と何が違うんですか?」


「全然違うぞ! 魔物は知恵を持たん。魔素だまりから生まれる知恵無き魔物達と一緒にするな!」


「ごめんなさい。」


「いちいち謝らんでもいい。ところで、シン。お前はこれからどうやって生きていくつもりだ?」



 僕は考えた。この世界は地球とは違う。魔物がいる世界だ。しかも、食料は自分で何とかするしかない。



「・・・・・」


「お前のいた世界がどうかは知らんが、この世界は優しくないぞ! 魔族の国では、強者が絶対だ。人族の国でも力や権力のある者がのさばっている。お前のような軟弱者は生きていけんぞ!」


「・・・・・」




 “僕は、地球でほとんど努力なんかしていない。食事も寝る場所もすべて親が用意してくれたし、欲しいものがあれば親がお小遣いをくれた。そんな僕が生きていけるんだろうか?”




「お前は魔族だ。身体能力も魔法も他の種族よりは優れているはずだ。だが、努力しなければ、それも宝のもち腐れだろうな。」


「ナツさん。僕、努力します。僕を鍛えてください!」


「よかろう。お前は魔法を使えるのか?」


「いいえ。」


「ならば、私が教えてやる。その代わり厳しいから覚悟しな!」


「はい。お願いします。」

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