第12話 風で転がるポイ捨て

俺はポイ捨てが許せない。

例えどんな些細なものでもゴミをその辺に捨てる人は好きにはなれない。

"ポイ捨てをする人"というのは「良くないと分かっている事を平然としてのけて、更に良心が傷つかない」

そう言う人のことだ。

化け物だと俺は思ってしまう。

そんな人を好きになれるはずはない。

俺はポイ捨てされた物を見つけたら拾って最寄りのゴミ箱に捨てるようにしている。

別に善人を気取りたい訳じゃない。ただ見て見ぬふりをしたく無いのだ。


今日の昼、俺は立ち小便をしていた。外は風がやたらと強く蒸し暑い。台所の横にある換気用の小窓から放尿したため、強風に煽られ飛散した俺の尿が野良猫にかかってしまい、ついニヤけてしまう。

起き抜けで意識が朦朧としていた俺は昨日の事を思い出す。


昨晩俺は親父と口論になり我慢の限界を感じ包丁で親父を滅多刺しにした。

人間のゴミ箱なんて知らない俺は人生で初めて絶対しないと決めていたポイ捨てすることにした。

深夜2時ごろ近くの山へ行きガードレールから崖に親父の死体を放り投げた。


カランコロンカランッ

音に驚き振り返ると、ただ風に転がるペットボトルの音だった。

きっと誰かがポイ捨てしたペットボトルだろう。

俺は呆れてため息をつきながら、仕方なくペットボトルを拾い車で家路についた。

でも今なら少し分かる。ポイ捨てしてしまう人の気持ち。


(ゲストライター Banri)

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