第628話 神の国(神聖ジェラルディン国)2
神官たちが俺を神だと勘違いして跪くもんだから、メンバーに笑われて顔が赤くなった。
しかし、信仰している神がレイチェルだとは思わなかった。
レイチェルも信者がいたのか。
おっと、俺を、あちらの世界から覗き見ているレイチェルに聞かれたら大変なことになる。
「そういえば、あの部屋の中の女性は名前は?」
「そうですね、ここまで来ればいいでしょう。実は、この国の王であらせられるジェラルディン3世陛下です。」
「この国の女王様ってことですね」
「はい、対外的にも、陛下が病気にかかってしまわれたと思っていましたが、悪魔に取り憑かれたわけですね」
「はい、だから普通の治癒師では無理だと言うことですね」
「そ、それで、可能なのですか?」
「わかりません」
「えっ、わからないんですか?」
「はい、理由は簡単です」
「‥‥‥」
「やったことがありませんから」
「‥‥‥そ、そうですよね。でも、あなたに頼るしかないんです」
「失敗しても、知りませんよ」
「‥‥‥」他の神官たちと顔を見合わせている。
「あなたしか頼む方はいません、我々では、もうジェラルディン3世陛下を助けることができません。よろしくお願いできますか?」
「ちょっと、メンバーと相談してきます」
「わかりました」
俺は後ろにいるメンバーたちのもとに行った。
「神獣たち、今まで悪魔なんて、見たことがある?」
「いいえ、悪魔なんて、見たこともないですね、いるとは聞いていましたが」ジャネット
「見たことがないけど、聞いたことはあるんだ」
アレクが「うん、私も噂程度にか耳にしない」
「他のみんなも、同じ?」と俺が聞くと頷いている。
う〜ん、これじゃ、情報がないから、どうやって悪魔を取り除けばいいんだ?
悪魔を取り除いたとしても、女性には影響がないんだろうか?
もしかして悪魔が取り憑いた女性が死ぬようなことがないだろうか
でも、どうやったら、悪魔を彼女から引き剥がすことができるのか?
俺にできること言ったら、聖属性魔法を使うことだけど、それを、どう使ったらいいのか?
聖属性魔法を発動して彼女にかけたら、彼女ごと消えたりしないだろうか?
もし、起きたら、それで責任取れって言われないのか?
しかし、俺は専門家じゃないから、どうやったらいいのかもわからないし責任は取れないから、断ることにしようと思う。
だって俺はエクソシストじゃない‥‥‥勇者だぞ。
「あの、今回は、お断りしようと思います」とキッパリ言おうとしたが、その時に建物の中で大きな何かが壊れる音がした。
「なんだ?」と神官の1人が大声を上げる。
神官たち全員が慌てて建物の中に入っていく。
俺たちは、外で待つことにした。
外で、神官たちが戻ってくるのを待っていると、何か悲鳴みたいな声はするけど、戻ってくる気配がない。
そうしているうちに、外壁に大きな音と共に壊れる音がした。
壊れた壁を抜けてきたのは、見てはいないが、部屋の中にいた女性、つまり神聖ジェラルディン国の女王。
しかし人間の姿をしていない。
目が赤く光っているのが特徴で全体的に色が黒い。
何があったのかわからないが、服もところどころ破れている。
破けているところから、肌が見えている。
「全員、警戒体制」と俺が叫ぶと、その前に構えを見せる全員の姿が見える。
悪魔とは戦ったことがないから、何を使うのか、皆目、わからない。
第一に剣を使うのか、それとも魔法を使うのか? または、それ以外の戦い方があるのか?
しかし、この国の女王を殺すわけにはいかない。
どうするか?
まぁ、いつも通りにやってみるしかない、このままだと、彼女の内側にいる悪魔が、内側から彼女を破って出てくるかもしれない。
そうなったら命はない。
そこに神官の1人が、腕を抑えながらヨロヨロと建物から出てきた。
「ク、クリス様‥‥‥お、お願いします。このままでは忍びない‥‥‥あの方を安らかに眠らせてください」
「浄化すればいいかもしれませんが、そんなことをしたら、王まで消えるかもしれませんよ」
「‥‥‥し、仕方ありません、あのままでは王も報われない‥‥‥」
「それでは、頑張ってみましょう」と言ったはいいけど、どうしよう?
厄介な選択を強いいられる。
まぁ、やってみるしかない。
火魔法、水魔法、風魔法、雷魔法では、彼女を傷つけてしまう。
やはり聖属性魔法しかないが、それでも悪魔と一緒に浄化させてしまいそうで怖い。
しかし悪魔に対抗する魔法なんて、聖属性の魔法しか知らない。
悪魔は俺たちに狙いを定めた。
何をする?
俺は何をするのか、わからない悪魔に対して結界魔法を自分にかけた、俺が結界魔法をかけたら、全員が同じことを自分でした。
もう全員のメンバーが、俺と同等レベルの結界を張ることができる。
全員が結界を貼り終えた途端に、悪魔が乗り移った女王が、魔法を撃ってきた。
魔法はファイヤーアローだった。しかも俺を狙って飛んできて結界に当たって爆発した。
すごい衝撃で結界の一部に「ピシッ」とヒビが入る。
俺の頑丈な結界にヒビを入れるほどの魔法を使えるとは。
念話で「みんな俺の後方に‥‥‥」と指示する。
俺の後ろにメンバーを集めてしまうと俺が逃げることができなくなる。
しかし、俺には自信がある、どこから湧いてくる自信かわからないけど、絶対に負けない。
そう考えるだけで、どこからか、わからないが魔力が漲ってくる。
しかも後方から‥‥‥
俺の腰にはエマの聖剣がある。
そしてリアムがマントになっている。
全員の力を纏めて、俺は聖属性魔法を発動する。
そうすると俺の発動した聖属性魔法にあきらかな変化があった。
今までの聖属性魔法とは違い、光が強く、色も金色から、もっと深い金色に変化した光が、悪魔に飛んでいく。
みんなの願いを込めた聖属性魔法を俺は始めて発動することができたけど、どうしてなのかわからないが、多分、女性を俺の手で殺させないためなのか?
みんなの思いを背負って、俺は悪魔に戦いを挑む。
さぁ、どうなるか?
聖属性魔法の輝きは、すごく光輝いている。
魔法を放った自分の方が目が眩むくらい、まぶしい光は強い。
その魔法が悪魔に当たった、しばらく霧散もすることもなく光は悪魔を包み込む。
その光は、俺がみても暖かく思えるような光だった。
自分が魔法を放っておいて驚いてしまった。
光を見ているだけでも癒されて、ホッとする光の魔法だったからだ。
今まで見たことがないくらい強力な光に覆われて、魔物はどうしてか、もがき苦しんでしんでいる。
人にとっては癒しになる魔法であっても、悪魔にとっては苦痛の光でしかないのか。
「ぎゃ〜」という大きな声と共に、先ほどの目が赤い悪魔は消えたように思えた。
その後にはぐったりうなだれている女性が立っているだけ。
しかし顔は下を向けているので、悪魔なのかわからないが鑑定魔法を発動して検索すると、人間と表示される。
「みんなのおかげで、うまく悪魔は取り除けたみたいだよ」と俺が告げた。
「そう、よかった、クリスが女性を殺したら祟られそうだったから、みんなの協力した甲斐があったよ」とイザベラ。
「そうだね、なんせ教会のトップだもんね」とアリシア。
「本当よ」とシャーロット
「そうだね」とセラフィーナの2人は教会のことを知っているみたい。
「うん、教皇だもんね」とソフィア
残った神官が教皇のもとに駆け寄っている。
はぁ、これで終わりだな、さぁ、急がなくちゃ。
しかし、悪魔なんて、この一体だけなんだろうか?
もしかして悪魔と魔族とウルフが手を組んだりしていないだろうな。
俺は悪魔を鑑定魔法した条件で検索をかけてみた‥‥‥。
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