第617話 勇者の休息 4

俺が索敵魔法を使ってオオカミの位置と数を調べたら23頭いることがわかった。


その中に一つだけ大きな個体がいるから、そいつがボスだろう。


どうやって向かおうか、考えていると、いつの間にかアレクがいた。


俺の手を取って「ねぇ、ご主人さま、面白そう」


と言って右手の方ばかり気にしていたら、左にはアデルがいて、腕をとってきた。


「私も」アデル


「ねぇ、アデル、ご主人さまばかり、面白そうなことしちゃっているからね」アレク


「ほんとうだね」アデル


いつの間にか、姿を現した2人に、女の子3人は仰天して声も出ない。


「‥‥‥」


「い、い、い、いつの間に‥‥‥?」とメアリー


腰が抜けて地面に座り込んでいるメイジー


たったまま気絶しているミシェル


アレクが「ねぇ、ご主人さま、早くオオカミを倒さないと」


「うん、そうだな、でも、依頼を受けたのは後ろの3人だからな」


「ねぇ、あなたたち‥‥‥」と声をアレクがかけるが、聞こえていない。


「もう、仕方ないな」とアデル


「しっかりして」と3人の元に歩み寄って体を揺さぶっている。


3人よりも小さいアデルに言い寄られて、やっと再起動した。


「あの、あなたたちは?」


「えっ、私たち、結構、有名だよ」とアデル


「本当ね、本のおかげかも」アレク


「本?」


「そうだよ、私たちの活躍が載っている本」


メアリーが「もしかして、もしかして、この本?」


「あっ、そうだね」


「じゃ、あなたたちが、勇者のパーティーメンバー?」


「うん、そうだよ」


「ということは、その横の人は‥‥‥」


「うん、そう、勇者クリス様だよ。私たちのご主人さまだよ」


「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆうしゃ?」


「こ、こ、この人が?」


「穂、ほんもの?」


「もちろん」とアレク


「く、クリスさん、本当ですか?」


「ああ、そうだ、俺が勇者だ」


「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜わ、わたし、あ、あ、あなたの大ファンなんです」


「サインください」


「それは、あと、まずは依頼を達成しないと」


「あっ、そうでした」


「で、でもいいんですか、私たちの依頼なのに」


「初めに言ったように俺は、今日は休みで暇していたから、あなたたちの依頼を応援するためにきただけだから」


「はい」


「俺は、あくまでもサポートだよ。主役はあなたたちだから」


「はい」と元気よく返事がかえってきた。


俺は姿を隠しておく必要がなくなったのでローブを脱いだ。


「うわっ、これは、本物だわ」とメアリー


「うん、ホンモノだ」とメイジー


「うん、わたしにもわかる」とミシェル


「俺は本当なら正体をさらすことはしないと思っていた。こんな事態にならなければ‥‥‥」


そこに、また、近くに出現する人がいた。


「クリス、なんだか、面白そうなことしているじゃない」とアリシア


「あっ、アリシアも来たんだ」


「うん、ちょっと、クリスが何しているか、気になったから検索してみたら、こんなところにいるじゃない、しかも若い女の子と一緒に」


「いや、これは、なりいきで」


「うん、わかっているわよ、そんなに焦らなくても、もう、なに焦ってんのよ。それともやましいことがあるの?」


「いや、別にないよ」


「じゃ、いいじゃない」


「クリスだって、たまには息抜きも必要だよ」


「いや、息抜きって言うと、違う意味だよね」


「あっ、そうか、あはははっ、まぁ、いいじゃない」


三人のはい冒険者が小さい声で「ねぇ、勇者様よりも、あの人の方が強そう」メアリー


「うん、わたしも、そう思う」メイジー


「彼女の方が実力が上?」ミシェル


「えっ、でも勇者様よりも上って?」メアリー


「う〜ん、神?」ミシェル


「えっ、じゃ、あの女性って神なの?」とメアリー


「「うん、だって、勇者は、この世界では最強だよ、あの勇者物語を読んでいれば、わかるでしょう。突然、なにもないところから出現したり、もしかして彼女も空を飛べるでしょうし、魔法だって、強いかもしれないよ」ミシェル


「でも、彼女の顔、どこかで見たんだけど」メアリー


「うん、わたしも」


「そうでしょ? どこだったかな? う〜ん、どこかで? あっ」メアリー


「思い出したの?」


「本の中だ」


「そうだよ、どうして思い出さなかったのか?」


「 勇者の幼馴染の人だ〜〜〜〜〜 」と三人が声を揃えて言った。


その声に俺たちは振り向いた。


「もしかして、あなた、アリシアさんですよね」


「あっ、うん、そうだけど‥‥‥」


「握手してください」と三人が同時にいう。


「握手くらいなら、いいよ」と言って順番にアリシアは、新米冒険者と握手する。


終わったあとチラッと横を見て、「あの、もしかしてアレクさんとアデルさんですよね」


2人は、俺の腕から離れてアレクが「あっ、うん、そうだけど」


そうすると、また三人が「握手、お願いできますか?」と三人で一緒に手を出した。


アリシアが「なんだか、面白い子たちね」


「あっ、うん、そうだね」


三人がアレクとアデルと握手を交わす。


「あ〜夢見たい」


「うん、夢なら覚めないでほしい」


「わたし、もう、一生、手を洗わない‥‥‥」


と三人は夢心地。


「夢見ているところ、悪いけどオオカミを討伐に行くよ」


「‥‥‥」


「ねえ、聞いている?」


「‥‥‥」


まだ夢の中みたいなので、アレクとアデルに合図して、三人を、くすぐる作戦に。


「あははははっ、やめて」


「あははっ、苦しい」


「やめて、やめて」


やっと起動した。


「じゃ、オオカミを倒しに行くよ」と俺たちが歩く始めると、三人は遅れて歩き始める。


「クリス、心配だったんでしょう」アリシア


「うん、そうだね」


「なんだか、いい子たちね」アリシア


「うん‥‥‥」今は平和そうに見えても、破滅への道は止まることはない。


この子たちも、あと少ししか生きてはいられないかもしれない‥‥‥


世界滅亡が始まろうとしている。


いや、すでに始まっている。


俺が阻止することができるのか?



依頼があったオオカミ退治に俺と三人の新米冒険者とアレク、アデルとアリシアの七人で歩いていく。


しかし距離があるので、時間の消費が惜しいと思った俺は、アレクとアデルに3人の女の子を任せて、転移することを考えたが、いや、初めてだと、酔うかもしれないから、空を飛んでいくことを考えた。


「みんなちょっと注目」


「えっ、なんですか? 勇者様」メアリー


「いや、時間が惜しいから飛んでいくことにしよう、幸いにオオカミのいるところはわかっているから」


「そうだね、歩くのも疲れるし」


アレクが「君たちは、わたしとアデルちゃんが空を飛ばしてあげるよ」


「えっ、私たちも空を飛んでいくんですか?」


「ええっ、空を飛ぶ?」


「えっ、私たちも空を飛べるんですか?」


なんだか新鮮な反応が面白い。


今では全員が、自由に空を飛ぶことができるから。


「三人には、アレクとアデルとアリシアに頼むよ」


「うん、わかったわ」とアリシア


「了解」とアレク、アデル


俺は単独で飛行する。


「じゃ、行こうか?」


「いい、飛行魔法で飛ぶんだから、一番は、慌てないこと。怖ければ目を瞑って」とアレクが言っている


一応、アレクの方が小さくて、年も下‥‥‥


アレクとアデルは10歳くらいに見えるから、でも人ではないので実年齢は不詳。


三人の女の子たちよりも長く生きていることだけは確かだ。


もしかして、アリシアと俺よりも、年長者?


俺とアリシアは、もうすぐ20歳だから‥‥‥


初めからご主人さまって言ってくれるから見た目でも、つい下に考えてしまっていたが‥‥‥。


三人の冒険者の女の子は、アレク、アデル、アリシアに任せて飛んでいる。


「キャ〜、下を見れない」


いや、見なくていいから‥‥‥


「足が地面についてない‥‥‥」


当たり前だから‥‥‥


「怖いから目を閉じていると余計にこわ〜い」


まぁ、それが、そうだろうな。


結構、空を飛ぶことは初めてなので、しがみついている。


よかった、俺が補助しなくて‥‥‥


でも、少し飛んでいたら慣れてきたみたいだ。


もう少し飛んだら、オオカミのいるところに到着する。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


お御読みくださり、ありがとうございます。


まだ2話しかありませんが、以前から書いていた新作を投稿しました、


『ミステリアス舞』っていうタイトルで高校生が主人公で現代もののSFファンタジーです。


よろしくお願いします。







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