第592話 レゾンデートル(存在意義)2
魔族の国を蜂になって見てきたけど、本当に魔族の国って、ちょっと期待はずれだ。
しかもウルフと魔族の王が合体して、もっと嫌な奴になっていた。
合体した魔王は、どういえば良いんだろう?
とにかく、すごく嫌な奴なんだ。
しかし、顔や気配を覚えてマーカーは付けたけど、強さがわからない。
鑑定魔法でも、隠蔽力が強いみたいで、表示されない。
でも、そんなことは気にしてられない状況だ。
今はメンバーからの申し出でブラッドフォード大公国の山荘の屋敷に転移して練習をすると言うので、全員できている。
練習と言っても、本当に実際の戦いと変わらない。
俺のパーティーメンバーになったことで、女の子たちが悪と戦いをすることになってしまった。
冒険者でもあるから魔物と戦いっていることの方が、危険が少なくて、お金が儲かる。
しかし、少し前に全員を集めて聞いてみたが、全員が自分たちの星を守るために、戦うと言ってきてくれた。
その時点で全員のステイタスを確認してみると、俺の眷属として表示された。
俺の眷属は、十三人になる。
まさに勇者と13人の悪魔になってしまうか、勇者と13人の勝利した女性になるか、どちらでもいいが、勝たなければならない。
しかし、今は戦いに慣れる必要があるので、俺も参加する。
負けた人も、見ているよりも、また時間を待っているよりも、相手を見つけて、少しでも戦うことをする。
全員に結界魔法を張っているので、怪我をすることはないから、存分に戦う。
お互いに相手を変えながら、戦闘訓練が続いている。
これほどの戦いをするのはあまりないことだ。
いくら屋敷から離れているとはいえ、地形が変わってきている。
まぁ、見える景色は、俺のものらしいからいいけど。
俺たちの戦闘訓練は、数日、続いた。
いくら魔力の消耗がないとはいえ、疲れが見え始めている。
なので訓練は終了して、温泉に入ることにした。
久しぶりの温泉に、みんなの顔が緩んでいる。
俺? 俺も一緒に入っていると思ったでしょう。
今回は、入っていないんだ、と言うのも、やはり温泉はタオルなしで入らないと、あるのと、ないのでは随分違うから。
なので今回は遠慮した。
俺も全員の素っ裸を見る勇気はない。
と、それもあるんだけど、ちょっと考えることがあるからだ。
*
考えることとは、ウルフの奴が、あっちの魔族の王と合体して魔族王になっていることだけど、どうして魔族の王と合体する意味があるのか?
その理由の一つは、魔族を自由に使えることだろう。
しかし、以前の魔族の王は顔も知らないけど、王がとって変わられたのに、平気なのか? と言うこと。
いつ、王が変わったのか? わかりはしないけど、強い者だけが王に慣れるのか?
何を考えてもわからない‥‥‥
どこまで言っても推測でしかない‥‥‥
魔族の王である、ウルフが動くのを待つか?
こちらから魔族の世界に乗り込むのか?
どうする?
もしも、だけど、魔族の奴らが大挙して押し寄せることになったら、どうしたらいいだろう?
やはり、こちらから出向く方がいいのか?
ウルフ王を迎え撃つと言うことは、戦場は、こちら側になってしまう。
だけど、俺たちメンバーだけじゃなく味方(同盟国の人)もいる。
しかし、何か作戦でも立てないと死人が出てしまう。
同盟国の全軍を動かすことも必要になるかも知れない。
そうすると数万単位では済まない、数十万単位の人が動くことになるから、魔族と戦い勝つためには、食糧、武器、防具、などなど、必要なものが多すぎる。
逆に、俺たちが魔族の国に行くとなると、孤立してしまう可能性もある、援軍は頼れないし、俺たち以外は、全員が敵‥‥‥
たった俺を入れて十四人で、魔族と戦いになるのか?
いや、魔族だってまとまっているわけじゃないと思う。
どこかに今の魔族の王に反対する勢力なんて、いないのかな?
それを見つけて味方にすることができれば‥‥‥。
でも、そんなことをしている余裕があるのか?」
考えことをしていたらドアをノックする音がした。
「どうぞ」
ドアが開いて顔を出したのはアリシア
「お風呂上がったよ」
「あっ、うん、わかった」
「クリスも、一緒に入ればいいのに」
「いや、たまにはタオルなしで入った方が気持ちよさが違うだろう」
「もう、みんな裸見られても、いいと思うよ」
「いや、みんなは良いかも知れないけど、俺1人が男だから、こっちが目のやり場に困るよ」
「それで、何を考えていたの?」
「‥‥‥」
「言えないことだったら、良いけど」
「あっ、いや、そうじゃなくて、戦いの場をどちらにするか?と思ってね」
「こちらの世界か、魔族の世界かって言うこと?」
「うん、そうなんだ」
「こちらの世界の方がいいんじゃない?」
「どうして?」
「だって味方がいるじゃない。クリスは盟主でしょ。クリスが一言、加盟国に全軍、出動っていえば、済むことじゃない」
「それは、そうだけど、俺たちにとって魔族って、今までは強くなかったけど、普通の人にとっては魔族って強いよ」
「‥‥‥」
「しかも魔族の王のウルフもいるし、四天王なんて言うのもいるし」
「あっ、そういえば四天王なんているんだったね」
アリシアは四天王のことを忘れていたみたい。
「でも、クリス、私たちが四天王とウルフを打ち破れば、クリスは神と戦いやすくなるよね」
「うん、それは、そうだけど‥‥‥四天王の強さもわからないし、ウルフの奴も、どれだけ強さが増したか、わからないよ」
「クリスは、私たちが負けると思う?」
「いいや、戦いを見たけど、戦闘力も経験値も魔法の威力の向上してきているから、安心して見ていられるよ」
「そうでしょう」
「でも、上には上がいる」
「それは、そうだけど‥‥‥」
「クリスが考える、一番の強敵は誰?」
「神だ」
「そう、やっぱり神なのね」
「うん」
「でも神に勝てるの?」
「難しい問題だね、戦ってもいない神に勝てるかという質問が」
「そうだね、今度の戦いは厳しいことになりそうだね」
「うん、たぶん」
「私たちが戦っているときには、他の人は普通に生活しているんだね」
「‥‥‥そうだね」
「なんだか、ずるいね」
「うん」
「もし、もしもよ、クリスが勇者じゃなかったら‥‥‥」とアリシアは涙声になる。
「うん、そうだね、俺も何回も思ったよ、俺が、もし勇者じゃなかったら、普通に生活して、もしできたらアリシアと結婚して子供が産まれた生活をしている夢をみる‥‥‥どうして俺が勇者にならなければいけないんだ、って何回、思ったことか?」
「‥‥‥」アリシアの目から涙がこぼれ落ちる。
「俺が魔法なんか、使えないで前世の記憶も受け継がないで生きていくことができたら、どんなにいいだろうって、思うよ
でも、俺、世界が破滅しようとしているのに、人に任せてばかりじゃ嫌だよ。敵の魔法が当たって死んでしまうような生き方だけはしたくない‥‥‥。
人任せなんて嫌だ。
俺と好きでいてくれる人を守るだけの力が欲しい、と思ってしまう自分がいる」
「‥‥‥」
「どうして俺なのかわからなけど、この俺たちが住んでいる世界を守れるのは俺しかいない‥‥‥俺が痛い思いしても、俺は誰にも文句は言わない。いや、いえないんだ。
俺だって怖いよ、敵と戦うことが、どんなことなのか一番、よく知っているから。
それでも悪い奴は野放しにできない。
だから、俺は力を欲した。
だから俺は世界からも憧れる存在になりたいと思った。
だから俺は世界を守る。
でも一難、守りたい人は、ここにいてくれる」
俺はアリシアの顔を見る。
「アリシア、この戦いが終わったら、俺と結婚してくれる?」
「ええ、ええ、そ、それはもちろんよ、私の小さい頃からの思いが、やっと伝わったわ」アリシアが泣き出す。
「小さい頃から、俺でよかったんだ」
「うん、もちろん、クリスは小さい頃から私を助けてくれて、いつも私、感謝していたわ」
「その割には、子供の頃はいじめられていた記憶があるんだけど」
「そ、それは‥‥‥何ていうか、愛情表現よ」
「そうなの? あのいじめが?」
「そうなのよ」と強めに言うアリシア
2人で顔を見合わせて、ぷっと笑いが漏れた。
「あはは」
「うふふ」
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