第589話 破滅へ向かう瞬間まで6

俺が蜂に憑依することができた。これで誰にもわかることなく異次元の扉の中に入る事ができる。


そういえば俺は錬金術で蜂を作って飛行魔法で飛ばすこともできたんだと、あとになって気が付いた。


しかし、それじゃ、俺の魔力でわかってしまうこともあるので、やめておいて正解だった。


もしも見つかっても、”なんだ昆虫か?” と言うことが大切なんだけど、異次元の扉の向こうは昆虫がいないかもしれないが、何らかのものはいるだろう。


昆虫がいないと不毛地帯になっている可能性もある。


つまり花が育たない。


そういう世界から見れば、この星は羨ましく思える?


岩ばかりの世界で水に乏しい世界、そんな世界を誰が作ったのか?




蜂が見つかれば新種ということで騒がれることもあるのか?


魔族の世界を、俺たちが住んでいる世界と同じに考えちゃ、ダメかな?


しかし、これで異次元の扉に行く準備が整ったと思う。


安心して送り出すことができる。蜂くんをだけど。


俺は、蜂と共に、洞窟の近くに転移してきた。


「頼むぞ」と俺は蜂をコントロールしないで手放した。


そして屋敷に戻って、蜂を支配する。


俺が見ているものを、メンバーと共有することにした。


捕まえた蜂は、人間の目を同じように見える。他の蜂を捕まえた時に、目眩がするような目を持つ蜂もいたから、十分、できるだけ人の目を同じ蜂を探したら、実際にいた。


今回は蜂を吟味して使役魔にしている。


できるだけ小さいもの方が見つかりにくいし、飛ぶことができれば、逃げれると思う。


最悪の場合、蜂だけ置き去りにして意識だけを戻すことにしている。


俺の意識を乗せた蜂は、洞窟に向かっている。


今は五人の魔族が起きて警戒をしている。


しばらく壁に張り付いて待つことにした。


待っている間に魔族の話に耳を傾ける。


「前の休みの時に飲みにいってよ、そこで、いい女が働いていてよ」


「そんなにいい女なのか?」


「ああ、もう、これもんでよ」と手で身振りをしている。


「そりゃ、すげえな」


「だろ?」


「今度、俺も一緒に連れていってくれよ」


「ああ、いいぜ、でも、先に声をかけるのは、俺だからな」


「チェ、俺も良い思いしたいな」


「お前は母ちゃん、いるだろ」


「母ちゃんには内緒でよ、遊ぶんだよ」


「お前、母ちゃんから絞め殺されるぞ」


しょうもない話をしている。


俺は、異次元の扉の部屋に入ることができたけど、扉が開いたままになっていたから。


しかし、異次元の扉に入ることはしない、もしかして入ると、何か変化する可能性があるから、誰かが入るのを待つことにした。


その間、俺以外のメンバーは休憩したり、食事をとってもらう。


時間と共に蜂のコントロールに慣れてきて、俺も食事くらいは取れるので、美味しい料理を食べている。


口では食べながら、目で、ここにはないものを見ているなんて、不思議な体験をしている。


今は蜂を壁に張り付かせて待機している状態だ。


待っていると洞窟の外にいた魔族の男が異次元の扉の部屋に入ってきた。


俺は、もしかしたら扉を通るかと思って、男の背中に取り付いた。


しかし、男は金属のランプが付いていないか見にきただけだった。


付いていないことを確認した男は部屋から出ていったので背中から離れて、また壁にひっついた。


外で何やら男、2人の声がして、また違う男が部屋の中に入ってきた。


早速、俺は、この男のズボンの足もとに取り付く。


足元に取り憑いているので振り回されて振り落とされそうになりながら、しっかりと取り付いている。


後で思ったが背中にすればよかった‥‥‥


男は異次元の扉の前にきて入るみたいだ。いよいよ向こうの世界に行ける‥‥‥


俺は、少しワクワクしながら、異次元の扉の中に入っていく。


扉の中は虹色の空間が広がっている。


男は、その空間を歩きながら、少し歩くと、形作られた扉みたいなものが見えてきた。


扉の膜みたいなものを通過すると景色がいいところに出るかと思ったが、なんだか地下みたいな匂いがしている。


つまりジメジメしてカビ臭い匂いだ。


俺は男のズボンから離れずに移動をしている。


男は部屋の扉を開けて、廊下に出て、少し歩いて階段を登っていく。


階段を登っていくたびにジメジメ感が少なくなりカビの匂いも減ってきた。


俺は、この建物の中を検索して見た。魔族に知った奴はないはずだが、奴がいるはずだけど、奴は魔族の王を吸収しているため、気配が変わっている。


早く、気配を掴む必要がある。


しかし違う世界に来て、変わっている奴の気配を確認するのは、苦労する。


う〜ん、どうやって気配を確認するか?


この国の魔族の王なんて知らない‥‥‥、少しでもウルフのカケラみたいなものが残っていれば、反応として出る可能性があるから、まずはやってみよう。


ウルフのオーラを思いながら建物全体まで検索魔法を広げていく。


そうすると微弱だが、反応がある。


上層階に反応が、あったり、消えたりしている。


俺は、魔族の男と一緒に表に出ることができればいいんだが、蜂じゃ扉を開けることができない。


やったことがないので俺の魔力を蜂が使えるか試してもいいけど、使えなかった時には困るので、そのまま魔族の奴に引っ付いている。


魔族の男は、地下から上階に上がってきている。


いくつもの階段を上り通路を歩いていくと地上に出てみたので、俺は、男から離れた。


男は、通路を曲がったらドアを開けて中に入って行ったので離れるタイミングが良かった。


俺は自由に空を飛びながら、景色を見ようとしている。


しかし、ここは中庭みたいで、周りを壁で覆われている。


なのでできるだけ上空に飛んでいくが、あまり高く飛べない。


俺はしょうがなく、どこの通路を飛んでいるかわからないかけど、時々、通路で魔族と会うと天井にとまった。


そんなことをしながら、やっと本当の外に出てきた。


外に出てくると、今までいたのは、やはり城だったみたいで、振り返ると立派な城が見えた、反対を見ると城の周りに街が見える。


なんだか魔族の街っていうから、どんなのか期待していたけど、俺たちの街と変わらない。


こんないい街を持ちながら、どうして魔族の奴らは、俺たちを忌み嫌うのか?


そこがわからない、俺も魔族を何人も殺している。


その殺された魔族だって親や、家族や子供があるかもしれないのに‥‥‥


魔族だって人の姿をしているだけで、色が黒いことやツノが生えていることや手足の爪が長く尖っていることで、俺たちと大きく違わない。


どうして同じ姿を持つもの同士、平和に暮らすことができないのか?


しかも異次元の扉なんか誰が作って、俺たちの星を滅亡させようとしているのか?


俺は、ウルフの少ない気配を追って通路を飛びながら城の上階を目指していく。


いく人もの魔族の奴をすれ違いながら、蜂の俺は、目的の場所まで辿り着いた。


かすかにウルフの気配がする部屋の前に辿り着いた。


ウルフの奴は魔族の王を吸収しているので、もう、俺の知っているウルフの顔じゃないと思えるし、第一に気配が違うということは、別人になっている可能性もある。


どちらが吸収して優位に立ったのか、判断に困る。


もしかしたらウルフが吸収したんじゃなくて、吸収されたのか?


だから、こんなにも気配が変化しているのだろうか?


俺は天井にとまりながら、部屋への出入りを待つ。

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