第494話 1000年前の世界12

ロバート男爵が城の部屋で、誰かを待っている様子。


あっ、そうか、待っているのは暗殺者の報告か?


でも馬で帰ってくるとしても、まだ着くような時間じゃない。


早くて今日の夕方か、普通であれば明日の昼ごろくらいになると思うけど、待っているのが報告だとしたらだけど。


そこの部屋をノックする音がした。


「俺が意志的に、どうぞ、と言うと何もないところから扉ができて開いた。


「クリス、今、ちょっといい」とアリシアだった。


「うん、なんだい?」


「もしかして今、索敵中?」


「うん、そうだよ」


「だと思った、あのねヒルダに教えた方がいいんじゃない?」


「えっ、そう思うの?」


「うん、ここは過去の世界だから、私たちのいた世界とは違うわ。ヒルダには、今、何が起きているのか、知っていた方がいいと思うの」


「う〜ん、それもそうだね、じゃ、そっちに行くよ」と言って部屋から出る。


俺が部屋から出たら、ジャネットがヒルダに話し始める。


今、俺が何をしているのか?と言うことを。


ヒルダは驚いているけど、俺がしていることを納得している様子。


俺はみんながいる椅子に座って、俺が索敵魔法で見たことをジャネットに全員に話すようにしてもらった。


ヒルダ「はぁ、なんだか、すごいですね、もう驚かなくなりましたよ、本当にクリス様って人間ですか?」」


「に、人間だよ」


「疑わしいものです。神の化身じゃないですか?」


アリシアが横でクスクス笑っている、ジャネットも口元を隠している。


俺はヒルダの言う事を放っておいて男爵の行動の確認に入る。


ロバート男爵は外を見ながら仕事をしている様子もなくただ立っているだけ。


そこにドアをノックする音がした。


「男爵、お茶をお持ちしました」


「入れ」すごくぶっきらぼうに男爵は答える。


入ってきた給仕の人はテーブルにセットすると、すぐに「では、失礼します」と言って立ち去った。


男爵は時計を見て部屋から出ていく。


男爵は部屋から出ると詰所の前を通って歩いていく。


城の階段を登って上へと上がって行くみたいだ。


通路を歩いて行くと、兵士が扉を守るように立っている場所が幾重にもあり、それぞれで男爵に例をする。


一段と大きな扉の前にきた男爵は、扉を守る兵士に「用事があってきた」と告げた。


兵士が扉を開けると中には大勢の人がいた。事務作業をしている場所みたいだ。


男爵は、部屋の中に入り、1人の人が座るデスクまで行って「今のところ何も連絡はありませんので、もう少し待ってみます」とだけ伝えた。


上司への連絡だったのだろうか。


この上司もマークすることに決めた。


男爵は、報告だけすると部屋から出て行く。


どうも男爵の行動が掴めない。


男爵と男爵の上司らしき奴をマークしているけど、ジュリアス伯爵は、まだあっていないから顔もわからない。


もう少し時間を置いた方がいいのか?


俺は時間がかかりそうなので、男爵のマークは残したまま、追跡を一時中断した。


「ヒルダ、君を狙ったのは、ロバート男爵と言う貴族だ」


「ロバート男爵?」


「ヒルダは、この人のことを知らないでしょう?」


「う、うん」


「簡単にいうと髭を、こんな感じで生やしている人だよ」と手で真似てみた。


「1人で犯行をしているかも知れないけど、数人でやっていることだと思うんだ」


「数人もいる可能性もあるの?」


「だって狙う限りは、どこかに旨味がないといけないと思うからね」


「旨味って?」


「ヒルダを暗殺することで起きる報酬みたいなものだよ」


アリシアが「そうそう、たとえば、もっと上の爵位になれるとか」


ジャネットが「商業関係に強い貴族だったら取引が多くなるとか」


アリシアが「どこかの領地をもらえるとか」


ジャネット「お金をもらえるとか」


「そうだね」


コリンはやりとりを記録しているからあまり話さない。


「でも僕なんかを狙っても得があるように思えないけど」とヒルダ


「君が今から王の素質があると言うんだったら王様になればいいし、王になるのが嫌であれば早めに継承権を放棄すること」


アリシア「そういうことになるよね」


ジャネットが「でも、失礼ですけどヒルダに王になる素質があると思えないんですが、ヒルダだって王になりたいと思わないでしょう」


ヒルダ「はい、もちろん。私は田舎育ちですから今更、王様になって国を安定させるって言ったって無理ですよ」


「と言う事は王位継承権を放棄すると言う方法が1番だと思う」


アリシアが「一度、放棄してしまえば国の継承とは関係なくなるからね」


「でも問題があるんだけど、今残っている姉妹のうち王様の素質がある人がいるのかどうか?」


「そうだね」とアリシア


ジャネット「王位継承権で争いをするような兄弟ですから性格的にはなんとなくわかりますね」


「そういうところが後々につながってくるんじゃないかな?」


「あっ、そうか」とアリシア


ジャネット「700年後の問題に」


ヒルダ「なんの話をしているんですか?」


「いや、う〜ん、どうしようか?」


「でも、ここで歴史を変えることはできないよ」


「そうだな、もう少し未来に行って、誰が王になっているのか、確認する必要があるね」


「あっ、そうだね、それができるね」


ジャネットが「ウルフの奴は、ここで何をしているんでしょう?」


「そうなんだよね、そこも気になるよね」


「悩むね、ヒルダの問題とウルフの奴の問題と」


「だから3人でなんの話をしているんですか?」とヒルダ。


ヒルダに言うか、言わないか、その問題もある。


ヒルダがこれから村で暮らすのであれば、問題はないだろう。


しかし、どこかで狂って王になるのであれば違ってくる。


王になるつもりはないって今は言っているけど、先のことはわからない。


俺たちのいる時代か過去の人に話していいことなのか? それで未来の歴史が変わってしまうことはないのか。


いや、今、ここはガルシア帝国だぞ。


もし、前世の俺が殺されないで生きていればと思うけど‥‥‥


そうすると前世の記憶と能力を持つ、俺自身は生まれないかも知れない。またはアルベルトの記憶と能力は無くなって、俺(クリス自身)の能力しかないかも知れない。


アルベルトとクリスの2人の能力があってこそ、今の俺があるんだから。


ここから先の未来は常に変わっている。


もし俺たちとウルフが、ここに来ることが運命づけられていれば間違いなくここにきているはずだ。


変えようがないものがある。


何をしてもそこに戻ってしまうことがある。


俺たちが1000年前に来たこと自体が変えようがないことだったのか、それはわからない。


あの時ウルフが、この世界に逃げこまなければ俺たちは来なかったかもわからない。


ここでヒルダに俺たちが未来から来たと言うことを説明するべきか?


どうする? 選択に迷っている。


それならいっそヒルダを王にしてしまえば歴史は変わってガルシア帝国が軍事国家になる事は無いのか。


俺たちがウルフの後で、この世界に来たときにガルシア帝国があったと言うこと自体が関係しているような気がする。


俺は最終的には、俺の足の赴くままに決めることにした。


そのためには、ヒルダを、どうにかすることだ。


あとは、なるようになるしかないだろう。


ガルシア帝国が、どこで転換を図り、軍事国家になって行くのか?


アルベルトの時代が何代目の国王だったのか?


でも王だって直系の場合もあるだろうし、違う場合もあり得る。


俺たちがまずしなければいけないのは城を偵察することだろうな。

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