第385話 ウルフ
俺の体内に異物があることがわかり、俺は、それを瞬間転移させて聖属性魔法で消滅させた。
消滅させようとした瞬間に声がしてぎゃーと言う変な声がしたんだけど、その声はウルフではないと思う。
あの時は声も変えていたからわからなかったけど、俺を殺した奴の声に似ているような感じがする。
さらに俺の中に異物がないかどうか確認をしたみたけど、そう言うのは見つからなく何も異常がない状態だ。
これで、もう一度、先ほど見た農夫を見てみると、普通の農夫にしか見えない。
そして俺は、ウルフの奴が、どこにいるのか、確認してみると、隠蔽魔法もかかっていない、本物のウルフを見つけた。
今まで、ウルフを見つけることができなかったのは、ドス黒いものが原因みたいだ、と言うことはウルフか、俺を殺した奴は、俺の行動を知っていたのか?
そして俺に、見つけにくいほどの隠蔽をされた、あの玉みたいなものものが能力を奪っていたのか?
俺の体内から、黒い球を出した瞬間から、俺の魔力が何もしていないのに変化してきた。
なんだか、抑えきれないほどの魔力があるみたいだけど、これをコントロールしないと、やばいな。
そう思った俺は、目を閉じて、たったまま集中する。
俺は意識を集中してコントロールすることをしているけど、すごいエネルギーみたいな魔力が湧いてきている。
これが本当の勇者のパワーなのか?
あの黒い球が全てを吸収していたと言うのか?
徐々にコントロールができてきた。
俺から溢れかえる魔力を徐々に俺の体に
こんな状態で魔力が溢れるようなことは、今まで経験したことがない。
多分、ここに鏡があって、俺の姿を映すと、俺の体から光が発していると思う。
自分でも大変なことになっていると言うことは理解できるから。
もう少しだ‥‥‥
全部の魔力を漏れることなく留めることに成功した。
ハァ、驚いた、これが、本当の今の俺の姿なのか?
じゃ、今までのは、なんだったんのか?
今の状態と、以前の状態を比べると、本当に数十分の一くらいじゃないぞ、数百分、いや、数千分の一くらいしか、使えてないぞ。
全部、あの黒い球が吸っていたみたいだ。
しかし、誰があんなことをしたんだ、俺を殺した奴は、誰なんだろう、いまだに姿もわからない、そしてオズワルド王国の鏡の中の奴が、本当に同じ人物なのか?
まぁ考えてもわからないことは、もう考えようがない。
「一度、戻るか」と言って、空間を出てきて、屋敷の部屋に戻ってきた。
まだ、誰もいない部屋が異常に大きく感じてしまう。
メンバーは、声が聞こえるから外で練習をしているみたいだ。
「ふぅ〜」と俺はため息をついたけど、こんなことは初めてだ。
俺は椅子に座って、棚に置いてあるコーヒーカップとポットをとってきた。
魔法で熱いお湯を出して、コーヒーの豆を挽いたものを専用の道具で、こしてコーヒーを淹れる。
熱いコーヒーを飲みながら、一人で考える。
今も俺の体の中を検索魔法で見ても、奴らのものはない。
そして悟られないようにメンバーも確認してみたが、ない。
と言うことは俺だけみたいだから、やはり、あの時かな?
あの時、俺を殺した奴は黒い魔力の手刀で俺の腹を突いて俺は殺された。
と言うことは生き返ると言うことがわかっていたと言うことになる。
死んでいくのに、そんなことする必要がないから。
それを知るだけの人物ということか!
俺のことを、良く知っている人物であり、先読みもできる奴だな。
思い当たるのは、やはり創造神ナサニエルなのか?
でも、どうして神が、一人の人間を気にする必要がある?
ウルフと二人で俺を狙う必要があるんだ?
それは、考えてもわからない。
*
俺はお腹が減ってきたので、異空間収納からクッキーを取り出して食べ始めた。
そこに扉が開いてエイミーが入ってきた。
「おかえり、エイミー」と言って、皿に乗っているクッキーを差し出した。
エイミーは、恐る恐ると言う感じで俺に近づいてくる。
「ご主人さまですよね」と変なことを言う
「そ、そうだけど‥‥‥」
エイミーが「なんだか、いつものご主人さまじゃないみたいです」
「えっ」
「いつものご主人さまより、パワーが溢れています」
「そ、そう見えるの?」
「はい、私は専門だと言ったでしょ、でも、こんなに一気に変わるなんて、何をしたんですか? ご主人さま」
「うん、ちょっと空間で発見できたものがあるんだけど、俺を取り除いたら、パワーが溢れてきたんだけど、エイミーに見えると言うことは、もう少しコントロールする必要があるな」と俺は言って、目を瞑って集中する。
今度は椅子に座ったまま、俺の体内から溢れる魔力のエネルギーをコントロールする。
*
アリシア視点
私が練習から戻って食事をしようと思って部屋の中に戻ると、エイミーが部屋の中にいたけど、もう一人、クリスが戻っていた。
私はクリスに話しかけようとしたけど、エイミーから止められた。
エイミーは小声で「ダメですよ、今、ご主人さまは、魔力のコントロールをしています、そのままにしておいて下さい」と言われた。
私は、クリスが座っているテーブルに静かに座ると、エイミーもじっとクリスの方を見ている。
できるだけ息を殺して座っていたのか、わからないほどに時間は経過していたみたいだけど、私も、待っている間、じっとクリスを見ていた。
クリスは、全然、動きもしないし、息もゆっくりとした呼吸になっている。
そんなクリスを見ながら、私が思うのは、ここ数年のこと。
クリスが冒険者になるために、村を出て行ったのが15歳の時、そして私がクリスについて冒険者になったのがクリスが16歳の時だ。
私とクリスは歳が同じで誕生日も近い。
今は私は18歳だから、たった2年間で、こんなにも環境が変わってしまった。
村から出て行った時は、普通の男の子だったのに、今では、もう普通の男の子では、無くなった。
普通以上の男の子になってしまった。
クリスが努力しているのは、私も知っているし、メンバー全員が知っている。
みんなが寝静まった後も研究をしているみたい。
以前は自分の部屋や女性部屋だったから、目の前にクリスの姿を見ることができなくても、私は、また、クリスが、どこかに転移したことを知っていた。
なんだか、私にも検索魔法や未来予知みたいな能力はないけど、少しだけ、わかるようになってきた。
これも、魔力を練習しているせいだと思う。
少しでもクリスの領域に近づくことができているのかな、と思うけど、その時にはクリスは、もう違う領域にいる。
今でも、そう、クリスが目を閉じて、そばにいるけど、遠い存在のように感じることがある。
でも、私は、諦めない、クリスが好きだから、諦めたくない。
メンバー全員の思い出もあるけど、クリスの重荷にはなりたくないから、頑張らなくちゃ、そうしないとクリスのそばにいることはできない。
だから毎日、練習をする。
そして、クリスと同じように考えることをする。
どうやったら強くなることができるか?
どうしたらクリスを助けることができるか?
それを、いつも考えているけど、まだ一つもできていない。
でも、私も2年間で、ここまで成長できた。
たぶん村にいたんではクリスも、私も、普通に暮らす村人でしかなかった。
自分に能力がなくて、もし仮にウルフに殺されるようなことになれば、クリスの魔法が暴走することもあり得る。
だってクリスは、私のことを好きだって言うのは、わかる。
だから強くなる。
強くなってクリスの暴走を抑えなくちゃ。
勇者クリスが破壊王だなんて、冗談じゃない。
多分だけど、クリスが本気になれば、国を一つ滅ぼすのなら簡単にできるんじゃないかな。
神獣たちのように巨大化しなくても、クリスは世界を滅ぼす暴君になり得る危険を孕んでいる。
その抑止力にならなければ、私の愛の力で、そのためにも私にも力が必要だわ。
クリスからもらったペンダントに手を当てるとクリスから暖かさがもらえるように思えるの。
頑張らなくちゃ
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