第382話 ウルフ再び

俺たちはオズワルド王国の戴冠式の前に、新国王に異議を唱えるダンカン公爵と一悶着あった。


話している最中にダンカン公爵の体が変化してきているのには、驚いた。。



ダンカン公爵の体が徐々に変化して、洋服も溶けていく、そして、一気に粘液のようなものが弾け飛んだ。


俺たちまで飛んではこなかったけど、酸みたいに溶けているような嫌な匂いがする。


俺は戦闘行動をとることにして身構えた。


俺が、ここにいる人たちに結界魔法をかけているから、そこから出られる人はいない。


俺にも強力な結界をかける。


全員が、俺とダンカン公爵の動きを目で追っている。


ダンカン公爵は、もう人ではない。


俺が、ダンカン公爵だと思われる者に対して、俺は氷魔法の普通のアイススピアで攻撃してみる。


アイススピアは、ダンカン公爵にあたりはするけど、傷を負わせるまで行かない。


ダンカン公爵と思われる者は、徐々に服が溶け出して、実態が明らかになる。


出てきた実態はダンカン公爵ではなく、顔を隠す必要がないのか、見える顔はウルフだった。


「よう、勇者様だったか?、久しぶりだな」


「そうだな、ウルフ」と俺が言うと大勢のざわめきが起きる。


「前の戦いでは、貴様に敗北したが、今回は違うぜ」


「そうなのか、変わった気がしないが」


「相変わらず、減らず口を叩くな、勇者様よ」


「そう言う、お前もな」


「どうして、俺がここにいることがわかったんだ?」


「それは、言えないな、第一、お前に言う必要もないし」


「そうか、俺と勇者のお前は、水と油だ、話をしても、良い関係になるとは思えねえな」


「そうだな」


「せっかくよ、ここに来ている王様を殺しに来たのによ、邪魔が入るのが、お前かよ

そう言えばよ、勇者のクセに、お前、前の戦闘の時、死んだよな」


周りがざわめく


「そうだな、汚い手でだましやがって」


「殺し合いやってんだからよぅ、汚ねえもねえよ」


俺は、なんとか、この場から、ウルフを移動させたかった。


「まぁ、今回も、うまく変装したのに、ばらしやがって」


以前よりも偽装工作が、変わってきている、ウルフの奴の気配もしないし、ドス黒いオーラもダンカン公爵の時には、感じなかった。


しかも変装をバラしたと奴は言ったけど、言葉のやり取りで自分が負けて、自分で正体をバラしただけだ。


俺が見破ったわけじゃない。


ウルフの奴なら、王都全体を爆破することも容易いだろう。


どうにかして、奴を人がいない場所に誘導できないものか?


「おおっと、俺は今日は、チャンスがあれば、お土産に王を殺そうと思ったが、勇者に挨拶がてらきただけだ、戦う気はねえよ」


と言ってウルフは、どこかに瞬間転移して消えた。


俺は緊張のためか見えないように息を吐いた。


でも、まだ結界魔法を解くわけには行かない。


それを念話で神獣たちに伝えて、もうしばらく、このままでいてもらう。


この広い広間がシーンとなって、俺を見ている。


いくつもの目にさらされながら、俺は目を閉じて立っている。


そう俺は逃げていくウルフを追っている。


何をしているかは、神獣たちは声を潜めて説明してくれているから、メンバーの口元には縦に指が一本添えられているだけ。


つまり、しゃべるなと言うことで全員が沈黙をしてくれる。


俺はウルフを追跡していく。ウルフは高速で空を飛んでいる。


国の外まで追跡して、ウルフが国から離れて誰もいなくなったら、神獣たちに念話で、『行ってくる』とだけ伝えた。


ジャネットからは「お気をつけて」と伝わった。



高速で去っていくウルフの背後に俺は瞬間転移してきた。


ここで逃すと、非常に厄介だ。


「おい、ウルフ」というとすぐに俺は、振り向くウルフに対して、軽度のファイヤーボールを放つ。


ウルフを振り向きざま、それを手で他へ投げ放つ。


「お前、追ってこれたのか?」


さも、追いつくことができないような感じでウルフは言うけど、普通に、追跡できたけどな。


あっ、そうか、勇者の魔力が徐々にしっくりいき出しているのか?


ウルフの奴に返事を返すこともないうちに、ウルフがファイヤーボールを手に出す。


それを俺に向けて放ってきた。


俺はファイヤーボールを他に向けると、被害が出ることもあるので、手を伸ばして瞬間的に消して見せた。


「お前、なんだ、それ」


「まぁ、良いじゃないか、お前に教える必要ないし」


「あの時から、俺も変わったと思ったが、俺だけじゃなかったということか!」


「そうだろうな」


「しかし、俺も、お前を超えてみせるぞ」とウルフは言って、俺と戦うことなく、姿を消した。


どこに行ったか、わかっていたけど、今は、追いかけなかった。


先にすることがあるから。


* 


俺がお城から消えたあと


オーリス王が「もう、安全じゃないのか?」とシャーロットに聞いている。


「お父様、ウルフのことを見たでしょう。クリス様が、戻るまで、もう少しお待ちください」


「この結界は、私たちメンバーでも解除できないんです。

解除できるのはクリス様だけです。

あとはクリス様が死んだ時でしょうね」


「それほどの、も、ものなのか」


「はい、クリス様のお力です」


「凄まじいな」


「その通りです、お父様」


「ですから、もう少しお待ちください」


「うむ、わかったが、どうしてもな‥‥‥」と言って、モジモジし始める。


「お父様もですか?」


「なんだ、お前もか?」




ライオネル公国では「セラフィーナ、本当にクリス殿は、あんな、すごい奴と戦っているのかね」


「はい、おとうさま、見たままです」


「初めて見たが、恐ろしいほど異様な気を発しているな」


「はい、本当に、私も見たのは、初めてなんですよ、正直、怖かったです、今でも体の震えが止まりません」


「あれが、ウルフかぁ」と考え込んでいる。


「以前は、オーリス王国の屋敷にいたときに、あのウルフに襲われましたが、クリス様の結界魔法で守っていただきました」


「結界魔法というのは、今も張っているように見える、これのことだね」


「はい、そうです」


「クリス様の結界魔法は、空気だけしか通さないそうです」


「なんと、そうなのか

それで、この結界は、いつ、解除させるんだ」


「クリス様が、お戻りになれば、すぐにでも」


「もう少し早くならんか?」


「そう、 おっしゃられても」


セラフィーナもモジモジし始める


クリス様、早く戻ってください‥‥‥


ということが、あっちやら、こっちやらで展開させていたので、俺は追跡をやめて、ここから結界魔法を解除してお城の元いた場所に戻ってきた。


戻って見た光景は、数人以上が同じ方向に走っていく光景だった。


あっ、俺も、行こう、と言って、あとをついて行った。


行くのは、もちろんトイレだ。



トイレに行く人が落ち着いて話をできる機会ができたけど、今は先に戴冠式をする必要がある。


簡略化した戴冠式を済ませ、もう誰も反対する奴がいないくなり、すんなり即位することができた。


なのでランドルフではなく、ランドルフ国王になった。


もちろん正式な呼び名じゃないけど。


正式名称は長いから、俺はランドルフと呼び捨てにする。


ランドルフが王のマントと、王冠を宰相からもらって、俺たちにも貴族位を与えられて終わりだ。


事件の後だから、すごく形式だけのものとした。


そして、広場では、ウルフの話が中心に話が行われる。


公開の場で、ウルフのことが話されるのは、初めてのこと。


「みなさん、実際に目でウルフを見る機会を得ましたが、言葉では伝わらない良い機会だと思うしかありません。

今回、ウルフはダンカン公爵に扮してきましたが」と俺が話していたら、騎士が入ってきて、ランドルフにヒソヒソ話している。


俺はランドルフを待っている。


ランドルフは俺の方を見て「今、連絡が入りました、やはり、当国のダンカン公爵は、どこにも姿はないと言うことです」


「ということは、あの解けたようなものがダンカン公爵だったと言うことですね」


今は、綺麗に片付けれているけど、まだ、匂いは少し残っている。


これでランドルフの正式な王としての政務が始まる。


もう、即位するのに反対する奴はいないと思いたい。



「そういえば、ここはちょっと話すには適していないと思うので、休憩を挟んで違う部屋を用意してもらえますか?」


「はい、わかりました、盟主様」とランドルフ国王は、そう言って指示を出している。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

お読みくださりありがとうございます。


ブックマーク、ハートマーク、星マーク、評価も、感想も、ほんとうにありがとうございます。


本当に多くの方の支援には心より感謝しております。

そして、何よりも小説を書くための、なんと言っても見える励みになっています。

誤字脱字がありましたらお知らせください、すぐに訂正を行っています。


また意味不明な文章があることもあるかと思いますが、なにぶん素人が書いている文章です。お知らせくだされば、訂正しています。


この物語は異世界の物語です、現実世界とは違いますので、その点はご容赦ください。

あくまでもファンタジー小説です。

前世の悪い記憶を持つ小心者の主人公が成長していく物語を書いています。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る