第263話 再び迷宮へ

俺は迷宮で手に入れた刀を見ていた。

今は部屋に俺一人なのでニマニマしながら刀を見ている。


「すごい刀を手に入れたな〜」


本当に俺が持つと手にしっかりな馴染んでくる。


どうして、この刀が迷宮なんかにあったのか、意味がわからない。


俺が使うと、俺の能力を倍化するところのレベルではないような気がする、まだ手に入れたばかりだから、使いこなしてはいないけど、使おうとしても、凄すぎて使えないと言った方がいいかもしれないけど、これを使うようなことが起きなければいいと、考えることもある。


この刀の能力を、もっと最大限に引き出すことが、今の俺の課題でもある。


そして威力をコントロールすること。


刀は、持っているだけで、構える必要もなく効率よく働いてくれる。


だから腰に挿す必要もなく、異空間収納に入れておくだけで、倍化能力が働いてくれる。


ほんとうに俺専用の刀みたいなんだよね。


これが、ほんとうに迷宮から出たのか、他に他意はないのか、考えているけど、最近は神獣たちの目線が気になっている。


なんだか最近は、時々、以前とは違うような目線を感じる時がある。


その理由を聞いてみたことがああるんだけど、何も、ないよ〜、とか言われて言わないんだよね。


なんてことを考えて刀を見ていたら、オーリス王国から通信魔法の装置から音がなった。


「はい、こちらクリスです」


「おぉ、公爵、繋がったぞ」初めての連絡だった。


オーリス王国に置いてある連絡用の装置は、リンゴ。


なんでもいいからと言って、宰相にお願いして持ってきてもらったのがリンゴの形をした置物だった。


俺は、なんでもいいんだけど、大の大人がクマのぬいぐるみに話しかけていたら、変だしね。


まぁリンゴだったら、もう少しマシだと思うから。


俺はリンゴも持っていないよ、俺自身が、通信装置みたいなもんだから。


俺を経由しないと通信はできないから、今のところは。


そのうちに研究してもいいかなと思うけど。




オーリス王国からの連絡は、いいことだった。


オーリス王国は以前、隣の帝国から戦争を仕掛けられているから、だと思うけど、それだけじゃあなく誘拐事件でも共同で当たることができたら、もっと早くことにあたるのが可能だったかもわからないから。


「クリス公爵、オーリス王国は話し合った結果、全部の国と国交を持つことにした」


「そうですか、よかった」


「でも、王様のところが一番、早かったので、他はまだ、連絡が来ていないんでよ」


「そうなのか?」


「はい」


「でも、私たちが一番と言うのは、よかったと思う」


「えっ、どうしてですか」


「それはな、貴殿の国だからだ、貴殿に恥をかかせずに済む」


「‥‥‥」


「我が国というよりも、貴殿をゆくゆくはシャーロットと結婚してもらって、家族になるのだからな」


「王様、その話は、もう少し待ってくださいよ」


「わかっておる」


「貴殿には、色々と秘密が多いみたいだからな、でも、貴殿の人柄には、ワシもシャーロットも、息子も、妃も気に入っておるから」


「ありがとうございます、王様」


「じゃ、しっかりな、また、連絡してくれ」


「はい、わかりました」


と切ろうとしたところにドアをノックして、返事を待たずにシャーロットが顔を出した。


「あっ、もしかしてお父様ですか?」


「うん、そうだよ」


「やっぱり、話していいですか?」


う〜ん、どうしようかな?


いいんだけど‥‥‥俺は思ったのでシャーロットの手をとって、今、話していた王様の前に瞬間転移した。


「うわっ、びっくりした」俺たち二人が急に現れたので王様は驚いたが、シャーロットを見て、喜んでいるので、しばらく二人だけにしてあげた。


俺は貸し出された部屋で待っていると、そんなに待つことなく、シャーロットが戻ってきた。


「王様と話ができた?」


「はい、ありがとうございます、お父様から、なんて格好しているんだって言われました」


「あっ、そうだったね、いつもはドレスだからね」


「はい、でも、この格好も慣れました。初めはクリス公爵から笑われましたからね」


「だって、普段はドレスしか着たのをきたことがなかったからね、あまりの違いに‥‥」


「本当に、今までスカート以外、着たことがなかったんですよ」


「まぁ、お姫様だしね」


「じゃ、帰りましょうか」


「うん」


と言ってシャーロットは俺の腕にくっついてきた。


胸が当たっていますよ、とは言えんかったけど。


帰ったら部屋にアリシアがいて、アリシアの頬が膨れていたけど、見ないふり。



オーリス王国が、俺が関係した国と友好関係を結ぶと連絡が入ったけど、しかし、他の国はまだ話し合っている途中なので連絡が入っていない。


あと期限は2日ある。


2日あるので、2日を利用して迷宮に再チャレンジすることにした。


以前、来たところから始めることにしたので、その場所に10人で転移してきた。


再び刀を手に入れたフロアに転移すると、すぐに魔物が出てきた。


しかし、今回はわかっているので、全員で対処して魔物を討伐した。


神獣の3人と俺が動くと、訓練にもならないので、できるだけ見学するようにして、他のメンバーに任せた。


時間はかかったけど、何とかメンバーで討伐することができたし、シャーロットが魔物を2体とセラフィーナが3体、倒した。


シャーロットは少し危ないところもあったけど、自分で基礎魔法を瞬間的に展開して防いでいた。


俺は、「トイレに行きたい人は、早く言うように」と注意しておいた。


我慢したままだと、集中できないから。


俺が、そう言うと、すぐに、アレクが消えた。


そして、5分くらいして戻ってきた。


俺は、「トイレに行きたい人は、この3人に言うように」と言ってアレクとロゼッタとパトリシアを指した。


迷宮には、いろいろなものがないが、あって欲しいものは、あかりとトイレだ。


俺たちは、さらに迷宮の先に進むことにした。


しかし、どうして浅い2階層に、刀のような希少なドロップアイテムが出たのか?


普通だったらダンジョンマスターを討伐したくらいのドロップアイテムだと思うけど。


俺専用?


でも、どうして?


そんなことを考えながら通路を歩いていたら、この先で誰かが戦っている音がした。


金属と金属がぶつかり合う音だ。


「全員で囲いこめ」と男性の声で言っているのが聞こえた。


さらに金属と金属がぶつかり合う音がした。


そうすると誰かの悲鳴が聞こえた。


「ウーッ」と誰かが斬られたような声が聞こえた。


俺たちは少し早足で歩きながら、広場にたどり着いた。


8人ぐらいのパーティーが広場にいるけど魔物の方が多く13体いる。


4体の魔物が倒れているので、全部で17体の魔物を相手にしていたみたいだ。


魔物は後14体残っているが、冒険者の方が腕を押さえて膝をついているやつがいる。


ドロップアイテムの関係から安易に参加することができないので、しばらくは様子を見ることにした。


俺たちの方をチラッと見たリーダーらしき人物は「ここは、俺たちに任せてくれ」と言ったが、魔物に押されているような感じだ。


リーダーが、任せてくれと言ったので、先に進んでもいいけど、俺たちは見物することにした。


「見物していい?」と俺が聞くと


「手を出すなよ」と言われたので、見物する。


俺はメンバー全員に「基礎魔法を展開したままで」といった。


そうすると全員が基礎魔法を展開して待機する。


魔物と戦っているパーティーを見ていると、徐々に疲労の色が濃くなっていき動きが鈍くなってきた。


俺たちが到着してから魔物を一体も倒すことができていない。


防戦するのに手一杯な状態だ。


しかしリーダーが了承しない限りは、踏み込むわけにはいかない。


どうする?



先ほど切られた冒険者も、動けずにいる。


治癒魔法ができるメンバーもいると思うけど魔物を防ぐのに手いっぱいだ。


ひときわ大きな魔物が、先ほど俺たちに言ったリーダーらしき人の体を吹き飛ばした。


リーダーは、ゴロゴロ転がりながら、気を失って倒れて起き上がってこない。


リーダーは気を失ったみたいだ。


ここが潮時だと俺は感じて、メンバーを見てうなずいた。


基礎魔法を展開しながら、メンバーが魔物に向かっていく。


魔物と撃ち合い出した時に、今まで戦っていた冒険者は後ろに下がって息を整えているけど、疲労が強いみたいで立っているのが、やっとだ。


それを戦いに参戦することの了承だと受け取った。


パーティーメンバー全員で魔物に切りかかって、受ける盾組と、剣で切り付ける組に別れた。


基礎魔法を展開しているから盾で防いでいるよりも、さらに押し込むことができている。


押し込むことで相手のバランスを崩しやすい。


そこに剣で切りかかることをする。


戦いを見ながら、俺は腕を斬られた冒険者と吹き飛ばされたリーダーを治療してあげる。


2人とも命には別状なかったので、気絶してはいるが、大丈夫だ。


13体の魔物は、そんなに時間がかからないで討伐することができた。


俺が治癒したリーダーが目を覚ました。


リーダーが目を覚まして、目の前の光景に、驚いている。


「あ、あんたたち強いんだな」


「そうでもないけど、普通だと思うよ」


「そんなことないよ、俺たちがてこずっていたものを簡単に…」


なんだか話が長引きそうだったので、俺たちは急ぐからといってこの場を後にしようとした。


「ドロップアイテムはいらないのか?」


「君たちが戦ったんだから、それは君たちのものだ」と格好つけたけど本当は欲しかった。


しかし俺たちは先を急いだ。


相手が見えなくなってから、「あーかっこつけすぎた〜」といったら、全員から頭を、コツンと小突かれた。



でも、悪い気分はしていない

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