第88話 村の近くで2人で
俺たちは、しばらく星空を見ていたが、アリシアが眠くなったから、もう寝るからと言って馬車に帰っていった。
俺も、焚き火の横に来て、クッションを引いて結界を作って寝ることにする。
翌朝は、朝日が差してきて、目覚めた。
そうすると、近くではアリシアが、川で髪を洗っていた。
アリシアが川で髪を洗っているのを、女性が髪を洗っているのは、なんだか色気があるというかいいもんだなぁと思いながら見ていた。
その時に、アリシアがチラッとこちらを見た。
顔を赤らめて「クリス、もう、そんなに見つめないでよ、恥ずかしいじゃない」と言ってきた。
などでアリシアを見ることをやめて、朝食の準備を始める。
あ〜ぁ、もう少し見たかったなぁ。
と心の奥で思ったけど。
ここは考えを切り変えなければと思い、枯れ枝を集めに行った。
枯れ枝を集めてきたので、魔法で火を起こして、お鍋に水を入れて沸騰させる。
水が沸騰してきたので、いろいろな食材を入れながらスープを作ることにする。
今日の朝ご飯はスープとパンだ。
パンは王都で買ってきたので異空間収納に入れてある。
本当に異空間収納は便利だから時間が止まって腐ることもないし、暖かいまま入れておくと冷えることがなく取り出せる。
本当にありがたい
料理を作っているときに、アリシアが髪を拭きながら戻ってきた。
鍋を混ぜながら、横目でアリシアが髪をタオルで乾かすのを見ていた。
スープが出来上がったので、温かいまま、木のお皿に移して食べ始める。
髪を乾かし終えたアリシアが、なぜか俺のすぐ横に座る。
横に座ったアリシアに何も言わないで、まだ、熱くて湯気が出ているスープが入った木の皿を差し出す。
そしてパンを火で焼いてから温めて渡す。
2人してスープとパンを食べながら、沸騰させた水で紅茶を入れる。
紅茶ができたので、コップを2個、置いて、それぞれに紅茶を入れると、たちまち湯気が昇ってくる。
熱くなっている紅茶を、息を吹きかけながら冷まして、1口飲んでみる。
俺は砂糖は紅茶には入れないが、アリシアは紅茶に砂糖を入れるので砂糖の入った瓶をアリシアに渡す。
アリシアは砂糖が入った瓶を受け取って、スプーンですくって1杯だけ砂糖を入れた。
アリシアも紅茶を飲む時は、スプーンでかき混ぜて、ふっ〜とふいて冷やすようにして飲んでいた。
なんだか焚き火の前で2人して座って食べていること自体が、周りが見えなくなってくるような閉鎖空間になってきている。
俺たち2人だけの世界だ
な〜んて言うことを考えながら紅茶を飲んでいると、ソフィアがやってきた。
2人の世界が終わってしまった。
早かったなぁ〜
ソフィアが近くまでやってきて、その時には、もう、アリシアは少し離れて座っていた。
朝食には呼ぼうと思ったんだけど、もう食べていたんだとソフィアが言った。
「ソフィアも食べる?」と言うと少しソフィアは考えて、美味しそうだからもらおうかなと言った。
ちょっと家族に行ってくるねと言って帰って行ったが、すぐにまた戻ってきた。
そしてソフィアに、スープとパンを渡して、紅茶を入れてあげる。
「ここは本当にいいところだね」とソフィアに言うと、「うん、私もそう思う」と言った。
ソフィアは、うちは家族は多いから、食いぶちを減らすためにも冒険者になろうと思ったの。
弟や妹たちがいるから、本当に小さい頃から大変だったの。
冒険者になろうとしても、成功しない限りはお金も稼げないし。
将来の話をしているときに昔から幼なじみだった近くに住んでいるコリンとイザベラと話があったそうだ。
それで3人で冒険者になろうと思ったそうだ。
「でも本当に、あの時、クリスと会わなかったらと思うと、考えるだけで恐ろしいわ」
「今は、親にお金をあげることができるの。」
「親を楽にさせてあげることができるから、弟や妹たちにも、ひもじい思いをさせなくて済むの。」
お腹がすいたなんて言わせないと思っていたんだけど、3人だけの時なんて、自分たちが生きていくだけで精一杯だったの。
冒険者しているといっても、いつ魔物に襲われて死ぬかもわからないし、怖いのは魔物だけではなくて人だって怖いもの。
人は、すぐに騙そうとするし、盗賊なんかは、女性であれば、命を奪うだけじゃ済まないから。
このまま冒険者を続けられるのかなと思ってた時に、クリスにあったの。
でも、あの時は年下の頼りなさそうな男の子なのに、たった1人で冒険者になるなんて無茶もいいところだわ、と思っていたんだけど…
それが実際に冒険をしてみると、頼りないところがすごく頼りになって、本当に信頼ができる冒険者なんだということがわかったわ。
それで3人で決めたの、あなたと一緒に冒険を続けていくと。
ソフィアは少し顔を赤らめて恥ずかしそうに言っていた。
実際に冒険者といっても本当にお金を稼ぐことができるのは数%の確率しかない。
ある程度、慣れてしまうと、多くの冒険者は上級のモンスターでも大丈夫だろうと言う意識が強くなり、かなわない敵に挑んで負けてしまう。
冒険者ギルドから依頼を受けても、そのままの数ではないことも多いし、強い種類が混ざっていることもあるから。
逃げられれば良い方だ。
俺たちはたまたま、Bランクになることができたけど、本当に偶然の結果でしかないし、実力がついていかなければ、Bランクとして誇れない。
「頑張ろうね!」と俺はソフィアにだけではなくアリシアにも伝わるように、2人の顔を見ていった。
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