第56話 呼び出し


俺は、宿でパーティーメンバーから根掘り葉掘り聞かれて、やっと夜中になって解放してもらえた。


疲れきったので、すぐにベットに入って寝てしまった。


寝ても、女の子たちから問い詰められる夢を見たけど、部屋に朝日が差し込んできて、パチっと目が開いた。


なんだか今日は今までのモヤモヤした感じがなくなって、すっきりした気分で目が覚めた。


でも少し寝不足だ。


昨日は夜遅くまで、パーティーメンバーに詰め寄られたので、でも、詰め寄られたといっても、いやらしいことじゃないよ。


昨日は本当に疲れたよ。


今日こそは、冒険者ギルドに行って依頼を探そうかなと思って窓を開ける。


そうすると、早朝にもかかわらず、馬車が宿の前に止まった。


なんだか、また嫌な感じになってしまったが、馬車からは誰も降りても来ない。


なんだろう?と思って、しばらく馬車を見ていると、昨日、王様と会ったときに、一緒にいた高等文官が降りてきた。


こんな朝早くになんだろうなぁ? と思っていると宿の中に入っていった。


何も言ってこなかったので、自分じゃないと思ったんだけど、食事のために下に降りて行って食堂に行くと、テーブルに座っていた。


そして話しかけられた。


「おはようございます。朝早くから申し訳ありませんが、食事を終えられたら早急に、お城に来て欲しいのです。」


と言ってきた。


「昨日も全部、お話ししたはずだと思うんですけど、もう話すことなんてありませんよ」


と言って逃れようとしたんだけど、駄目だった。


高等文官が、店主に向かって、用意が進んでいるようでしたら、こちらの方のお食事を早めにお願いしたいんですがと言った。


早めに用意をしてくれていたみたいで、俺は急いで朝食を食べた。


まだメンバーは寝ているみたいで降りては来ない。


俺は、そのまま高等文官と一緒に、宿を出て馬車に乗る。


もう朝からなんだろうな? あくびが出てしまう。


疑問を高等文官にぶつけても、私は答えられませんと言ってくる。


高等文官の男と2人で馬車の中に、しばらく揺られながら外を見ている。


話すこともなく馬車の揺れと言うのは、気持ちよさがあるので、昨日も遅かったことで眠くなってまどろんできた。


そうすると文官がつきましたよと言ってきた。


馬車は王城の正面に付いていた。


馬車から降りると、朝早いにもかかわらず、上に登っていく階段に騎士達が国旗を持って並んでいた。


こんな早くから??

何かあるのか?


そして中段から上の騎士は、サーベルを顔の前にまっすぐに立てて構えていた。


なんなんだ、これは……


そうすると最上段に来たところで、シャーロット王女の顔が見えた。


「朝早くから申し訳ありません、お父様がお会いしたいと言うことです」


なんて答えたらいいのかわからないで、うなずくことにした。


なんだかわからないけど待遇が、無茶苦茶変わって超いい待遇なんだが。


そして城内では、姫様を先頭に案内されて歩いて行った。


行き着く先はテーブルがあった部屋ではなく、謁見の間だった。


なんだか悪い予感しかしないんだけど。


大きな扉を開けて謁見の間に入っていくと、前回と同じように赤いカーペットが引かれていて、両脇には貴族たちが立っていて、正面には王様とお妃様が座っていた。


王様が王座から、「よくぞ、参られた。」と声をかけてきた。


そこで俺は、ある程度の位置で止まると、頭を下げて片膝をついた。


ちらっち横を見ると、横にはシャーロット王女が立っている。


あなたは、向こうじゃないの? と思ったけど‥‥‥


「昨日は、ご苦労であった」と王様が言ってきたので、さらに頭を下げることにする。


何を言ったらいいかわからないから、さらに頭を下げてみることにした。


早く帰りたい……



そして王様とお妃様の横には、シャーロット王女が前へ歩いてき座った、反対側には第一王子がいることに気がついた。


つまり王族が揃っているわけだ。


そして主だった貴族達も勢揃いみたいだ。


前回よりは貴族たちの人数が多いみたいだから。


朝早くであるので早めに済まそう、と王様が言った。


貴族の後から、先程の高等文官が前へ出て、紙に書いてあるものを読み上げだした。



クリス殿には、


1、国家の一大事を救ったことに対して、爵位が授与される。


2、報奨金として金貨5000枚を授与される。


3、王都の貴族街にある屋敷も授与をされる。


屋敷にかかるものすべての経費は、国が賄うこととする


以上である。



文官からそれを告げられると、えーなにそれ、と思ったけど顔を下に向けていたので表情は見えないと思った。


そして王様から「貴殿は、それに見合うだけのものをした」


「本当に感謝している」


そう言って王様が、頭を下げるとお妃様やシャーロット王女や第一王子や貴族が一斉に頭を下げた。


俺は慌てて、「いいえとんでもありません」とだけ答えた。


そして王様が、「爵位は、いろいろ迷ったんだが、貴殿の功績に対して見合うものは、伯爵位だと思うんだが」


えーなにそれ


そんなの、いらないとも言えないし、どうしようかなぁ。


そうだ、「もったいないお言葉でございますが、私は、ただの平民の出身でございます。


伯爵位など、とんでもないことでございます」と答えて逃れようとしたんだけど。


王様が「爵位を与えないとなると、世間体も悪くなる、どうか、もらってほしい」


そう言われれば、仕方ないので、しぶしぶ俺は、わかりましたと答えた。


なんだか並んでいた王族もだけど貴族たちも、ほっとしたような感じを受けたのは、貴族の爵位が上がっていくのは国に対して貢献があったからなんだ。


だから国家の一大事を救った俺は、それに見合うと言うことで伯爵の位に就くことになったので一気に平民から貴族になった。


特例中の特例だそうだ。


まぁそれはそうだろうなぁ、でもでも、前世の俺に近づいてきたよな、嫌な予感


ほんとうにいらないよ、そんなの‥‥‥


マジ、やめてっ、と心の中で叫んだ‥‥‥

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