第45話 事件の裏側
喉を切り付けて死のうとした監視対象者を兵士に任せて、俺は部屋の中に戻った。
女性騎士数人がメイドをロープで拘束していた。
メンバーは、お姫様を守るようにしていたが、今では椅子に座っている。
お姫様も、メンバーも落ち着いているようだ。
ロープで拘束されたメイドが女性騎士数人に連れていかれる。
部屋の中では、お姫様とメンバー4人とその他のメイド2人だけになる。
「みんな大丈夫だった?」
そうすると真っ先に、イザベラが、「あ、あんた、なんでわかったのよ」と言ってきた。
俺はどう言い逃れしようかと思ったが、正直に
「紅茶を淹れるメイドさんの手が震えているし、様子が変だったからだよ」
旅をしてきたメイドの一人だったので、残った2人のメイドも顔色が良いとは言えなかった。
あの子が?、と思っているような様子だった。
普段からも3人はお姫様の世話をするため、一緒にいる時間が長かったためにショックだったようだ。
そして姫様も、顔見知りのメイドだったためショックを受けて座り込んでいた。
なんだか気が抜けたような感じでテーブルに伏せていた。
顔を知った人物が、まさか自分を狙うなんてと思っているんだろう。
あとで聞いた話だけど、メイドは脅迫されて犯行に及んだみたいだ。
お城の中のものを、お金に変えようとしたのを監視対象者に見られていて、脅されたみたいだ。
そして監視対象者である犯人は、以前は、かなり上位の文官になっていたそうだが、失態をして降格させられたんだって。
それを恨んでいたみたいだ。
もちろん王族はそういう事は知らない。
だけど命令したのは王族だと思っていたそうだ。
自殺しようとしてもと文官の失態が、どういう失態かはわからないが、失態したのも自分なのに、それを取り返そうとも、努力しようとも、信頼を取り戻そうともせずに。
ただ恨みに思うだけでは先に進めない。
文官は降格されたが報告があって、いつの間にか、いなくなっていたらしい。
自殺しようとした奴が突然、いなくなるなんておかしい。
どこかに匿われているのか、足取りは掴めないみたいだ。
俺が索敵魔法で探しても反応はない‥‥‥、おかしいな、どこかにいなければならないのに、存在がないなんて、おかしすぎるだろ。
どこかで死んでいるのか? 逃亡して自殺したのか?
詳しいことは、わからなかった。結局、文官を操っていた奴の存在はわからずじまい。
でも捕まっていた奴が、いなくなるんて考えにくい、ということは、誰かが文官を連れ出して匿っているのか暗殺したのか? わからない。
すごく頭のいい奴なのか? 死体でも残れば、誰かが殺したとわかるんだが、死体もないし、忽然と消えるなんて追いかけようがない。
用意周到と言えば、そうだが、きな臭い匂いもしている。
*
10日後に、第一王子は完全に回復をした。
よかったね。
王城での事件もおさまったので、我々は、どうしようかと話を始めた。
話を始めようとした部屋に、シャーロット王女が2人のメイドを伴いながら入ってきた。
「今回は本当にありがとうございました」
「護衛と事件解決で冒険者ギルドに行っても報奨金は出ますが、父上と私から皆様に、心ばかりのお礼ですが」と言って、きれいな袋を出してきた。
袋の中身は金貨が入っていた。
50枚の金貨が入っていますと王女が言った。
「皆様には、大変お世話になりました。」
「それで、もし何かありましたら、ギルドを通じて依頼をしますので、ぜひ、またお願いしたいんですが」
その時にドアをノックする音が聞こえて、上位の文官が入ってきた。
上位の文官は、王様がお呼びになっております。と言ってきた。
なんだろうと思いながらもお姫様と我々全員が文官についていった。
廊下は歩きながら王様がいると思われる大きな扉の前に立って、護衛の兵士に扉を開けてもらう。
大きな扉がゆっくりと開いていった。
真正面は大きな窓がいくつも並んでいた。
そして天井や壁には、豪華なデザインがされていた。
さらに、この部屋には右側につながっていく部分は、まさに豪華絢爛としか言いようがない豪勢な作りだった。
そして床には高級そうなカーペットが引かれていた。
その上を、俺たちは文官が先導して、お姫様と5人で歩いて行った。
1番奥には大きな椅子が2つ並んでやって、王冠をかぶった王様とティアラをつけた王妃様が座っていた。
そしてシャーロット王女が、一人、離れていき王様と王妃様の間に立つ。
王様はこちらをじっと見ているけど、シャーロット王女と王妃様が話をしている。
王妃様も、とてもきれいな方だ。
シャーロット王女は綺麗だけど、かわいい系だ。
今までは、ずっと第一王子が心配でついていたそうだ。
そしてカーペットの両側には、軍人や貴族たちが立っている。
全員が自分たちを見ている。
何があるんだろうと疑問に思う。
文官から、「こちらに、お立ちください」
横に広がるスペースがあるので、5人で広がって横1列に立つ。
俺が1番出口に近い側の端っこに立っている。
そして全員で片膝をカーペットについて頭を下げる。
そうすると王様が、
「此度は大儀であった」
「そなたたちには礼をしたい」
俺たちは口を挟む事はできないと思って黙って聞いていた。
「顔を上げい」
顔を上げて王様の方を見ていると、横に立っている分官の1人から、何やらお盆の上に乗っかっているものを差し出される。
それぞれ一人一人が、お盆の上にあるものをもらう。
「此度の活躍において、世の跡継ぎである、第一王子も助かり、シャーロットも助けていただいた。」
金銭以外に、何か褒美が受け取れるようにしたそうだ。
なんだか、そのための授与式だったみたいだ。
お盆の上に乗っかっていた巻物の中を開いてみたわけではないので、まだわからない。
「王都の冒険者ギルドに行くように」と言われた。
その時に巻物を見せれば良いそうだが、それまでは開いてはダメだと言うことだった。
王様との謁見が終わって、もといた部屋に戻ってきた。
「王様が開けてはダメだと言ったけど、開けてみない?」とイザベラが言った。
ソフィアとアリシアとコリンがの3人から一斉に「ダメ」と言われていた。
もう、ここにはシャーロット王女はいないが、久しぶりに元気になったお兄さんに会いに行くそうだ。
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