第80話 犯人は
「無職男性って犯人は書かれてますけど、私達の先輩に当たります。そういえば、戸村先輩と平原先輩は幸太朗が不思議ちゃんなのはご存知ですよね?」
先輩達が、卒業するまで一緒に数学班であった期間があり、幸太朗は戸村先輩に懐いていた。
「剥製のリク亀と鹿が優しいとか言ってたし、俺、一回肩に乗ってた悪霊さんバイバイしてもらった事がある。」
と戸村先輩がうなづいた。平原先輩は自分の彼女に「あれが幸太朗ね、後で説明してあげるから。」と諭していた。彼女への説明は全部平原先輩に丸投げで良さそうだ。
「ここだけの話ですが、幸太朗によると荒らされた花壇の花が犯人は青ジャージと言っていたらしいのです。その青ジャージとはうちの高校の青ジャージになります。」
学校によっては学年カラーなるものを設けている所がある。A1高校は学年章やジャージ、上履きなどが学年毎に赤、青、緑に色分けされている。例えば、私達は今2年で緑が学年カラーで、現1年や平原先輩達は学年カラーが赤だ。安田先輩は青いジャージが1番マシだと宣っていた。
「犯人はA1高校卒業後、大学進学、就職後しばらくして辞めて、今は、A1高校近くのアパートに一人暮らし。実家は隣市で高校時代は電車通学していたとか。不動産経営で裕福らしくて彼1人働かなくてもどうとでもなるそうです。」
この情報は犯人が分かってから、噂話を拾い集めて整理したものだ。
「先輩達はA1高校同窓会本部なるものをご存知ですよね?創立123年の歴史を守るとか大義を掲げて不定期土日に自習館の講義室で会合を開いている、あれです。」
在学したものであれば皆知っている同窓会本部の会合。大概は爺様達だが稀にお近くにお住まいの若い人も混じっており、A1高校のために熱心な方々だ。
「彼は卒業時に自分のクラスの同窓会連絡員になっていたため、関わっていたら、あの世界にうっかり入ってしまった。」
就職先では上手くいかなかったが同窓会本部には居場所があった。そう彼は言っていたらしい。42歳独身。
「今年になって華道部の部長が森田さんになりました。華道部は校内何箇所かに定期的に生花を飾るのが活動です。同窓会本部の会合が開かれる土曜日には午前中に本部会合が開かれる講義室に花を生けに行っていました。」
「そこで犯人は森田さんを見かけて一目惚れ的な?」
平原先輩の彼女ご明察です。思わず頷いた。
「犯人のアパートには沢山の森田さんを隠し撮りした写真があり、もちろん自転車のサドルもあったそうです。犯行の際着ていたレインコートは森田さんのでした。立派にストーカー認定されました。」
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