第73話 如月の思い出した事
幸太朗が学校に来れなくなったのは自分のせいだと思った。下手な正義感を出したばっかりに。申し訳なくて、毎日連絡帳を持ってご機嫌伺いに行った。
最初は玄関口で幸太朗のお母さんに渡すだけ。そして慣れてきたお母さんに「家に上がってお菓子食べていったら」と言われて今日の学校の様子とか勉強の内容とかを彼女に話した。
幸太朗は一人っ子で綺麗な大きい家に住んでいた。居心地が良くてその毎日の寄り道が段々と私は楽しくなってしまった。お母さんはパートに出ていたが、今は幸太朗のために辞めてしまったらしい。すっかりお母さんと仲良しをしていたら、そのうちに幸太朗も出てきて会ってくれるようになった。
毎日いろんな話しをして一緒に宿題をしておやつを頂いて帰る。そんな放課後が私の習慣になった。学校の先生はすっかり私頼みでの上にその寄り道を奨励した。幸太朗が勉強に困らないように工夫したプリントをつけてくれたりしていた。それを全部普通の宿題だぞと言ってやらせるのが私の任務でもあった。
そのうちに幸太朗が私の顔の傷をみると辛そうな顔をする事に気づいたから、髪の毛を伸ばして髪形を工夫して隠すことにした。
あまり不思議ちゃん発言はしない方が一般受けするよとも説明した。見えない者が見えるといきなり言われると怖いものなのだと。
「分かった。気をつける。」
そう答えた幸太朗はそれからはずっと出来るだけ気をつけていると思う。
そのうち強くなりたいと漏らすようになった。柔道か剣道かボクシングか空手、合気道?と話しをしていたら幸太朗のお母さんも乗り気になっていろいろと調べてくれて、幸太朗は剣道が気に入ったらしい。ほどなくしてまず、剣道教室には通えるようになったのだ。姿勢が良くなって表情も明るくなった。
春になって学年が変わる頃には小学校に再び通えるようになった。最初は保健室からだった。給食の時だけ教室に来るとか徐々にならしていく。校長室という謎のチョイスを校長先生に提示されて、一緒に校長室にいたこともあった。そのせいか、私は校長先生という人種が結構今でも好きだ。
あの傘で私たちを叩いてきた子とは同じクラスにならないように学校側が配慮してくれていた。だから私と幸太朗はいつも同じクラスで、名前の順も近いからなんとなくずっと一緒にいた。
中学生になるとさすがにもうあの事件が後を引くことは無かった。私も傷がある顔に慣れたし、幸太朗も大きくなっていく身体と頭の良さと口数が少ないけど低めの声、剣道の成績で誰も馬鹿にしなくなった。ただ、男子の友人には興味が無く、相変わらず、私の近くに居ようとしたから噂はたった。カレカノ的なやつだ。年頃になるとなんでもそういう目で見がちだ。
ただあまりに私達に色気がなかったのか次第に揶揄われなくなり今がある。高校まで一緒になるとは思わなかった。この関係はいつまで続くのであろう。
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