第67話:悪戦苦闘

「エドアルド公王陛下、お疲れ様でした。

 見事な戦振り、見届け人一同感服いたしました」


 三人の熟練侍女が満面の笑みて褒め称えてくれるが、全くうれしくない。

 生れて初めてAV男優を心から尊敬したが、本当はこんな状況になんて絶対になりたくなかった。

 前世でも今生でも、処女を相手にした事はなかった。

 しかも相手は心から愛し尊崇してきた主人で義妹なのだ。


『ちゃんと夫婦になってくれなかった名誉を護るために自害する』と短剣を片手に脅かされていなければ、絶対に血の継承など行わなかった。

 よくあの状況で勃ってくれたと息子を褒めてやりたい。

 心身ともに疲弊しない訳がない、大仕事をやり遂げたのだから、疲れない方がおかしいのだ。


「正直疲れた、今日はもう休むから、お前達も休め、ご苦労だった」


「「「ありがとうございます、公王陛下」」」

「「「今宵も懸命に務めさせていただきます」」」


 三人の身届け人は最後まで満面の笑みを浮かべていたが、何も言うまい。

 気疲れのあまり、もう何も言う気力も体力もない。

 力加減に気を付けるあまり、身体中が強張ってしまっている。

 まるで三日三晩最前線で戦い続けた時のようだ。

 マリアお嬢様は大丈夫なのだろうか、とても心配だ。

 王家の熟練侍女が世話してくれているはずだから、大丈夫だとは思うが……


 それにしても、今宵も血の継承を行わなければいけないのか、まいったな。

 俺は前世も今生も真剣に考えたことがなかったが、妊娠しやすい期間か。

 マリアお嬢様が妊娠されるまで、毎日血の継承が行われる。

 妊娠し難い期間は、マリアお嬢様の身体を休める期間に当てられる。

 毎月それが繰り返され、三年間かけても妊娠しないようなら、男女どちらかに不服があろうと離婚する事が許されている。


 男の方に問題があるのか、それとも女の方に問題があるのか、この世界この時代では確実に確かめる方法などない。

 だから、こういう風習というか、強制力のある慣習が決められる事になった。

 特に今回は、マリアお嬢様と俺の間に子供が生まれないと、王家と公王家の両方ともに後継者がいない最悪の状況となる。

 どう考えても将来後継者争いで国が乱れる事になる。


 俺に子供を作る能力があるかどうかは、側室や愛妾で確認する事ができる。

 王家と公王家の身届け人が気を付ければ、誤魔化す事はできないだろう。

 万が一、マリアお嬢様に子供を作る能力がなかったら、俺の子供が王家と公王家の両方を継ぐことになるのだから、相手の家も王家と公王家の両方から見届け人が来る事も、四六時中監視される事も拒まないだろう。

 拒むようなら、側室にも愛妾にもしないし、側室や愛妾にした後で文句を言うようなら、不義があったとして殺してしまえばいい。


 だが、こうなってしまった以上、マリアお嬢様と俺の間に子供が生まれるのが一番いいのだが、これだけは努力してどうにかなるものではない。

 俺の主義に反するが、神に祈るくらいしか方法がない。

 普通にできる努力や、気を付ける事は全てやるが、その辺は身届け人や熟練侍女が完璧にやってくれているから、もう俺にできる事などない。

 祖霊よ、どうか一日でも早く子供を授けてくれ、頼む、この通りだ。

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