第28話:返し技

「エドアルド、国王が王妃と王太子を送ってきたそうだな」


「ああ、アウレリウス・ジェノバ公爵家の誇りを踏みにじった愚か者を引き渡すから、煮るなり焼くなり好きにしてくれと送ってきた」


「それは国王の策なのか」


「ああ、今回の件は王の知らない所で行われた事だが、全ての責任は王が取るべきものだから、全面的に公爵家の言い分を聞くそうだ」


「ほう、それで、王妃と王太子を殺して終わりか」


「その程度ですますわけがないだろう。

 賠償金と領地の割譲、公爵家の独立と公王家の承認、公王家の仕えたいと言っているロマリオ王国貴族の移籍臣従を認める事など、色々と要求している」


「そのなかに王の命はないのか」


「ここまで下手にでられては、王の命までは要求できない」


「そうか、俺には難しい事は分からんし、母上もグレタも何も言わない。

 だが、エドアルドならこうなる事は分かっていたのだろ」


「ああ、分かっていたわけではないが、こうなる可能性が高い事は予測していた」


「それで、俺は戦えるのか。

 俺の性分を知っているエドアルドの事だから、戦えない場所に連れてきたりはしないよな」


「ああ、カルロを戦えない場所に連れて来て、八つ当たりで決闘を申し込まれてはかなわんからな」


「クックックックッ、俺の性格をよく知ってくれている。

 俺が一番戦いたいのはエドアルドだからな。

 戦友だから決闘を申し込むのは我慢しているが、エドアルドと戦う事を考えるだけで、全身に力がわいてくる」


「俺が死んでもお前が死んでも、公王家には大損害だ。

 どちらかが生き残ったとしても、一生影響が残る傷を負うだろう。

 そんな馬鹿な状態には絶対にしない」


「で、俺が戦う相手はどんな奴だ」


「最初に言っておくが、戦う相手に個々の力は全くないぞ。

 数が多いのと、回数が多いだけだ」


「ちっ、雑魚を殺すだけかよ、詰まらんな。

 だが、回数が多いというのなら我慢してやる」


「ああ、後方支援は完璧にしてやるから、最前線で大暴れしてくれ。

 一生戦える相手だから、もう退屈な宮廷生活とは無縁になるぞ」


「ほう、それはありがたいな。

 だが、エドアルドが支援してくれるのなら、一生戦うのは無理だろう。

 数年とは言わんが、十年もあればローマ帝国だって征服できるだろう」


「相手はローマ帝国じゃない。

 今度の相手はギリス教団だから、ロマリオ王国内の聖堂騎士団や信徒を滅ぼすだけでは終わらない。

 ローマ帝国はもちろん、フランク王国などの大陸中の聖堂騎士団や信徒を皆殺しにしなければ、戦いは終わらん」


「聖堂騎士団と信徒と、そんな雑魚を相手に一生戦うのかよ。

 宮廷生活よりはましだが、もっとましな相手はいないのかよ」


「ローマ帝国やフランク王国が素直に協力した場合は雑魚が相手だが、両国とも国教のギリス教団を見捨てはしない。

 大陸中の帝国や王国が束になって襲ってくる。

 それでも退屈か、カルロ」


「いいや、それはありがたい。

 そうと分かれば、喜んで雑魚狩りをさせてもらう」

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