入試に失敗した半ひきこもりが現役大学生と
~入試に失敗した半ひきこもりが現役大学生と~
「おかえりなさい」
扉が開くと同時に、愛おしい恋人のサクラを笑顔で出迎える。
どんよりと疲れた様子の顔が和らぐのを見るたびに、ユミカは喜びとともに申し訳なさを覚える。
「ただいま。いつも出迎えありがとうな」
「ううん。これくらいしかできないから」
ぽんぽんと頭をなでてくれる恋人のバッグを受け取り、ずしりと重たいそれを抱く。
彼女はこんなものを背負って電車に揺られ、そして将来のために勉強しているのだ。
自分はそれに甘え、同居という名の寄生虫をしている。
そんなささいな思いでポロリと流れる涙を、恋人の指が不器用に拭う。
見上げれば、どこか獰猛にも見える自信満々な笑み。
「泣くなよ。めちゃくちゃにしてやりたくなる」
「……あはは。それはまあ、食事とお風呂のあとかな?」
つられて笑えば、サクラはパンっと手を打った。
「そういえば今日ってポッキーの日とかいうらしいじゃん」
「あ。もうそんな日だったっけ?」
時がたつのは早いなあと遠い目になるユミカの手からバッグをとったサクラは、中からポッキーの赤いパッケージを取り出す。
「やるぞ。たまにはバカみてえにいちゃつきたい」
「わあお。やろう」
なんとも乱暴な言葉だが、いちゃつきたいとあってはユミカに断る理由はない。
早速リビングのソファに隣り合ったふたりはチョコレート菓子の左右を咥える。もちろんチョコレート側を持っていくサクラにユミカはきゅんきゅんと子宮がうずいた。
そして始まるポッキーゲームは、けれど一瞬で終わった。
ぱきっ、と音を立ててポッキーをかみ砕くサクラ。
「やっぱやめだ。もどかしい」
あっという間もなく、残りの菓子ごとユミカをほおばる。
そういえばこの前のハロウィンでもこんなだったなあと、そんなことを思いながらユミカはさっくりといただかれてしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます