2章 ~言えないけど…大好き~
[2章1話-1]:夏休みボランティアの行き先
【茜音・高3・夏休み課題】
「はぁ~、今回はここに行くんですかぁ?」
「確か、片岡は児童施設でいいんだよな? 一人だけど大丈夫か? 今回は先方の事情で昨年と施設が変わるのを言ってなかったから、断って選びなおしてもいいんだぞ?」
先生は茜音にすまなそうに聞いた。
「はいぃ。大丈夫です。分かりました。これから行って挨拶してきます」
「行き方は書類の中に書いてある。駅で向こうの人が迎えに来てくれるそうだから」
「分かりました」
茜音は教室を出た。
「どしたぁ?」
廊下に出ると、
「う~ん、まぁ行くところが変わったって感じかなぁ?」
「へぇ。どこどこ?」
「ん~、内緒ぉ……」
「ケチ~」
三人は夏休みのガランとした学校を出る。
彼女たちの通う私立
この期間、主に公共の施設やボランティア活動などを生徒たちは1つ選んで参加しなければならない。
ものによって内容の難度や期間は様々で、1日で終わる物から、数日にわたるものまである。
その希望調査は休みに入る直前に渡されて提出。何に当たるかはこのように受け入れ側の日程などもあるので、先のように一人ずつ言い渡される。
当然ながら簡単な内容で日数の短い物は競争倍率も高く、自分の希望する物に当たらない確率も高い。
ただし、休み明けにはその内容をレポートにして提出しなければならない。短く内容が楽なものほど、そのトレードオフとして、規定の枚数に内容を工面するのがなかなか大変だ。
茜音は1年生の時から毎回この課題に児童福祉施設での手伝いを選んでいた。
日数もあり、また子供たちの相手となると要求されるレベルも高いため、あまり競合することもない。
派遣を受け入れる側としても、仕事内容を身をもって経験している彼女の存在は重宝されていた。
「それじゃぁ、また店でねぇ」
「ほぉい。終わったら行くねぇ」
同じように今日から活動が始まる佳織と、これから店を手伝う菜都実と別れ、駅から電車に乗る。
「まぁ……、こういうこともあるんだねぇ……」
渡された書類を封筒からもう一度出して見て思った茜音。
先生は担当する施設が変わることを気にしていたようだが、彼女には特別大きな問題があることではない。
これまで休みごとに会ってきた子達と会えなくなるのは寂しいが、新しいところとなれば、それはそれで新しい出会いがある。
しかし、今回の場所は担任はもちろん親友二人にもまだ話せない、彼女には少し別の意味を持ちそうだからだ。
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