ロストシーカー
ジュレポンズ
第1話 探索者登録
遺跡、それはこのアセンブル大陸に突如生成された謎の構造物。
内部には罠が仕掛けられ、魔物までもが徘徊する危険な領域。
その遺跡を踏破し、最奥にて眠る秘宝を持ち帰る者達を
初めて遺跡が発見されて以来、老若男女問わず探索者になる者は後を絶たない。
それは幼い頃から元探索者だった両親から冒険の話を聞いて育ち、今日、探索者ギルド本部を訪れた僕達も同じだった。
「探索者登録は……あそこの受付かな?」
「うん、そうだと思う」
答えたのは双子の妹であるリベラ。
探索者ギルドとは、探索者達を様々な方法で支援するために作られた組織であり、本部であるこの建物はアセンブル大陸の中心に現れた一つの遺跡を取り囲むように建てられている。
いつもは探索者になるべくこの場所を訪れた人達によって長い待機列が作られていると言う話を聞いていたが、今日は随分と空いている様だった。
お陰で長い間待たされること無く、直ぐに僕達の番が来た。
「こんにちは、探索者ギルドへようこそ。本日は新規登録でよろしいですか?」
「「はい」」
僕達が揃って答えたのを見た受付嬢は微笑ましい物を見た様に笑う。
そして手元から二枚の用紙を取り出すと、僕達の前に差し出す。
「探索者は常に危険と隣り合わせな職業です。ギルドも物資の支給や情報提供は欠かしませんが、遺跡内に潜む魔物や張り巡らされた罠の全てを網羅している訳ではありません。最終的には全て自己責任となります。それでも宜しければこの書類に名前を記入して下さい」
差し出されたのは誓約書付の登録用紙。
遺跡の探索と言うのは常に危険が付き物。
探索の途中で命を落とす、なんて事も日常茶飯事だ。
だけど僕達はその事をよく知っている。
今更、誓約書を見て怖気づくような柔な覚悟はしていない。
僕達は躊躇なくペンを手に取り、用紙に署名する。
「……リベラさんにリオンさんですね。それでは、これから当ギルドについての詳細の説明に入ります。何か不明な点があればその都度質問して頂いて構いません」
用紙を受け取った受付嬢は、他のギルド職員にそれを渡すと建物の全体図の書かれた紙を取り出して説明を始めた。
本部の一階は受付が主となっており、探索者登録や登録更新はこの受付。
他にも遺跡の探索依頼の受注、
そして二階は探索に必要な道具や武器の取り扱いが主。
探索必需品はこの場所で支給され、ギルドへの貢献度や探索練度が上がれば支給される物資の数や質も向上する様で、ギルドが保有している聖遺物や武具の一部もお金を払えば購入可能だ。
説明を聞いている限り、特に分からない所は無い。
それよりも聖遺物云々の所からリベラが目を輝かせているのが気になって話に集中し辛い。
彼女に気を取られている間にも説明は続き、最後に罠の解除訓練の話になった。
「ギルドでは幾つかの罠への対策を教える解除訓練を行っています。初めて依頼を受ける前にこの訓練を受ける事をおススメしていますが……どうなさいますか?」
どうやらギルド主導で罠対策を教える訓練が行われているらしく、参加は任意ではあるもののギルド側としては参加を推奨しているそうだ。
「私は受けようかな。お兄ちゃんはどうする?」
「僕も受けるよ。実際にやってみないと分からない事もあるだろうしね」
僕達は既に罠に対して一定の知識を備えているが、あくまでも知識だけであり、実際に罠を解除した経験が或る訳ではない。
探索には常に自らの命が掛かっている以上、念の為に受けておくに越したことは無いだろう。
「それでは訓練の手配をしておきます。最後に、この聖遺物がお二人が探索者だという事の証明となる物です。最初に個人認証の為に聖遺物に指を押し付けて魔力を流して下さい」
手渡されたのはネームプレートやメモリーチップと呼ばれる、個人認証を行う聖遺物。
所有者の魔力を認識し、それぞれに対応した情報を開示するその聖遺物は持つ者が探索者である事を証明する物であり、失くしたり拾った場合はギルドに届け出るのが義務付けられている程、探索者にとっては重要な物だ。
魔力と言うのは、この世界に生まれた者全てが持つ力の源で、これを上手く扱う事によって魔術と言う水や火を生み出したり、身体能力を底上げする術を使えるようになる。
僕達がそれに魔力を流すと、聖遺物は奇妙な蒼い紋様を描きながら起動し始めた。
しばらくすると認証が終わったようで、僕達の年齢や性別と言った情報が映し出される。
「後は空欄にご自分のお名前を入力してください。一度登録すると変更出来ませんのでお気を付けて入力してくださいね」
どうやら名前だけは自分で入力しないといけない様だ。
一度入力すると変更出来ないらしく、こう言う所でリベラが失敗しないか不安だ。
「……何でお兄ちゃんこっち見るの!?」
「いや、名前を間違えないかなって不安で……」
「失礼な!! 流石に自分の名前を間違えたりしないよ」
どうやら彼女も失敗する事は無かったようで、僕達は無事に認証を終える。
認証を終えた聖遺物は唯一の空欄に僕達の名前を刻むと、静かに動作を停止した。
「おめでとうございます。これでお二人は探索者ギルドの一員となりました。解除訓練に関しては建物裏の遺跡で行われますので、専門の職員がそちらまで案内しますね」
無事に探索者登録も終わった僕達は、訓練を受ける為ギルド本部の裏にある遺跡へと案内される。
案内された場所では、少し目付きの恐いギルド職員が腕を組んで待っていた。
「今日新しく探索者登録をしたのはお前達か。私はナイズ、この訓練の教官を務める者だ」
ナイズと名乗った教官は僕達の装備をじっくり観察すると、フッと不敵な笑みを浮かべる。
「ふむ、探索者になる大半の輩はまともに装備を整えもしない馬鹿共ばかりだが……お前達は違うようだな。親や親戚が探索者でもやっていたのか?」
「はい。父さんが元探索者で、母さんは考古学者でした」
「お父さんはよくお土産を持って帰って来てたんだ。だから私達も探索者を目指し始めたの!!」
「そうか……。特に装備に不備もない様だし、こちらも手間が省けたな」
どうやらギルド側である程度の装備は用意されていたらしい。
僕達は父さんたちの使っていた物を持ってきて居た為、それが要らなくなった様だ。
「では、これから遺跡に入って訓練を行う。罠に対する解説は入ってから始める。ついて来い」
「「はい!!」」
ナイズ教官に連れられ、僕達は初めて遺跡へと足を踏み入れるのだった。
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