店(学生時代)
「すまないね」
「いいえ大丈夫ですよ」
大叔父イチ押しの喫茶店がなんと臨時休業だった。
「大叔父様、あれも喫茶店でしょうか?」
「蔵を改築しているのか……行ってみるかい?」
「はい」
ヒカルが偶然見つけたその店は、防火用の厳重な扉は今は左右に開かれ、内側に木製扉がある。
「いらっしゃいませ」
扉を開いて中に入れば、コップを磨いている五十代くらいの女主人が出迎える。
「あら親子水入らずでお出かけかしら?」
「自慢の孫だよ」
「あやかりたいわね」
客はおらず、暇を持て余していたのか気さくに話しかけてきた。
「食べ盛りのお嬢さん、ミートパイなんていかが?」
色白なせいか、口紅が血のように赤く見える。ちょっと苦手だと思った。
「ごめんなさい、先程ハンバーグを食べたばかりで」
「あら残念、ごゆっくり」
メニュー表を開くと、肉を使った料理が妙に目立った。
「……やめた方がいいね」
「……そうですね」
その辺のスーパーで買ってきて出したような、味気ないプリンとフライドポテトを食べてそそくさと帰った。
後日、父が読んでいた新聞に連続児童失踪事件の犯人が捕まったというニュースが大きく取り上げられていた。
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