第536話 その頃、またまた天界では?

『う~ん』

聖域でサーヤが「ふぎゃあああ」と、にゃんこがしっぽを踏んずけられたような悲鳴をあげている頃、天界では、だれかの唸り声が⋯


〖り、凛さん?どうしたの?〗

〖な、何だかただならぬオーラが?〗

〖な、悩みがあるのでしたら聞かせていただけませんか?〗

(((周りに被害が出る前に⋯)))

ビクビクしながら声をかけるイル様、ジーニ様、シア様の仲良し家族の三人。

おばあちゃん、そんなに恐れられるなんて、どれだけ暴れてるのかな?


『え?あらあらまあまあ。おほほほほ。いやぁね?大したことじゃないのよ。おほほほほほ』


明らかに、なんでもない笑いではない。おばあちゃん、怪しい⋯


〖あれ?それって、神棚?〗

〖何をするつもりだったのかしら?〗

〖凛さん?〗


そう。おばあちゃんは神棚を前に唸っていたのです。


『あらあらまあまあ、いえね?いつもサーヤたちから、お供えしてもらえるじゃない?』

〖そうだね(お供えというか⋯)〗

〖そうね(あれをお供えというのならだけど⋯)〗

〖聖域から送ってますね(特に凛が自分宛に⋯)〗

〖〖〖それで?〗〗〗

お供えしてもらったものなら、料理でも食材でも届きます。本来なら神様に⋯


『あのね?ずっとサーヤの健康を願って、料理を作ってきた私としては、こちらからもサーヤに料理を届けられたらと思ったのよ。神棚を通して届くなら、こちらからも送れないかしら?と思って』

おばあちゃん、神棚を撫でてます。神棚は天界のおばあちゃんと、聖域のサーヤを繋いでくれている大切なものなのです。


〖あ~なるほど〗

〖気持ちはわかるわ〗

〖そうですわね〗

おいちゃんが持ってきてくれた、おばあちゃんのたくさんのレシピノート、サーヤへの愛情で出来ているのをみんな知ってます。


〖ありがとう。それで送れるのかしら?〗

おばあちゃんが、心配そうに聞くと


〖う~ん、あんまり何回もって言うのはダメだけど、たまにならいいかな?〗

〖そうね。あとは、私たちが下に行く時にまとめて持って行くとか?〗

〖そうですね。凛さんのお料理も美味しいですし〗

神さまたちも、どうにかしてあげたいのです。


『本当に?ありがとうございます』

おばあちゃんも嬉しそうです。


〖そうそう、凛さん。私、不思議に思うことがあるのですけど〗


『あら、なんでしょうか?』

シア様がどうやら本当に不思議に思っていることらしいです。


〖凛さんも、ゲンさんも同じ国で、しかもお隣さんだったのでしょう?〗

『そうですよ』

〖なのに、同じお料理でも味が違うのはなぜでしょう?同じ材料で作っても違うでしょう?しかも、おふたりとも、とてもおいしいのに〗

シア様、すごく不思議そうです。


『あらあらまあまあ、そういうことね。家庭の味と言ってね?そのおうちの味付けがあったりするのよ。例えば、昔はお味噌だって各家庭で作っていたりしたのよ。手前味噌と言ってね?その家に代々伝わる作り方があったりするの。料理もね、私も母から教えられたものがあったりするわ。だから、お隣同士はもちろん、住んでいる土地が違えば更に違う味になるのよ。もちろん、新しいものにも挑戦しますけどね』

おばあちゃんが、説明すると


〖そうなのですね〗

〖へぇ~良いわね。そういうの〗

〖それじゃあ、サーヤにはきっと凛さんの味がわかるね〗にこにこ

イル様が笑顔で言います。


『あらあらまあまあ、そうだと嬉しいわね』

頬を赤くして答えるおばあちゃん。


〖そっかあ。うん、それならなおさら届けないとね〗

〖そうね。サーヤが喜ぶ顔は見たいものね〗

〖はい。どうやって届けるかは、出来上がったものを見てからでもいいのではないですか?〗

神様たちも、おばあちゃんの願いを叶えてあげたいし、サーヤの嬉しい顔も見たいのです。


〖そうだね。凛さん、どうかな?僕たちからもお願いしたいな。サーヤの喜ぶ顔を見たいしね。それに出来れば僕たちも、おこぼれでも頂けたら嬉しいかな〗にっこり


『⋯もちろん!皆さんにも腕をふるわせてもらいますわ!ありがとうございます』

おばあちゃん、深深とお辞儀して、感謝を示してます。イル様は、おばあちゃんが気にしすぎないように、あえて自分たち達にもとお願いしています。おばあちゃんもそれが分かっています。


〖うん。それじゃ、がんばって〗

〖料理長も巻き込みましょ〗

〖あら、お母様?料理長ならきっと自ら飛び込んできますわよ〗


バンッ

『呼んだか!?呼んだよな!』どーんっ


〖ほら〗

〖ほんとね〗

〖ふふふ〗

『皆さん、ありがとうございます』



そんなこんなで⋯


『なあ、凛さん。この黒豆ってやつの汁はどうすんだ?少し減らすか?』

『あらあらまあまあ、ダメよ。黒豆はね、汁にも栄養がたくさんなのよ。そのまま飲んでもいいし、ヨーグルトや、牛乳、豆乳などに混ぜて飲んでもいいのよ』

『へえ。そうなのか』

『そうよ。サーヤが喉が痛くなったら、真っ先に飲ませてたわ。黒豆はサーヤの大好物だから、よく作ってたのよ』

『そうか。そりゃ、無駄にはできないな』

『そうよ』にこにこ


『しかしな、なんか全体的に、黒っぽいものが多くないか?』

テーブルの上にはサーヤの好きな和菓子がたくさん。チョコレートもあるが、それも茶色、黒⋯


『確かにね。でも、市販のお菓子は添加物が多かったから、どうしても、和菓子を手作りすることが多かったのよね』


テーブルの上のお菓子、イル様とジーニ様が張り切って、器に時間停止の魔法を付与してくれたから、冷たいのから温かいものまで作り放題。

白玉に、あんみつに、お汁粉に、お団子色々。大福に、羊羹も水ようかんから芋羊羹まで色々。

鹿の子ちゃんの鹿の子も作った。

大学芋や、かぼちゃと小豆のいとこ煮のような、おかずになりそうなものまである。


ちなみに大福などに使ったお餅は、


〖たしか、ドワーフが作っていた臼と杵とやらは、こんな感じでしたね〗

工芸神様が臼と杵を作り

〖んじゃ、餅つくのは俺に任せろ〗ふんっ

武神がやる気満々。そこへ⋯

『それでは合いの手は私がつとめましょう』

〖〖え?バート?〗〗

『私の手をついたらどうなるか、おわかりですよね?』ひゅお~

〖〖は、はい〗〗

無駄に緊張感たっぷりな餅つきが行われましたとさ。



『う~ん、水まんじゅうはどうしようかしらね?サーヤ、ずっと食べたそうにしてるんだけど、なかなか葛が集まらないみたいなのよね。せっかくがんばって集めてるのに、私が先に作ってしまったらがっかりするかしら?』


『大丈夫じゃねぇか?サーヤなら、ゲンに「おいちゃんもつくって」とか、言うくらいじゃないか?それにサーヤが本当に食べたいのは、凛が作った水まんじゅうなんじゃないか?』


『そうかしら?それじゃあ、とびっきり、ぷるぷるな水まんじゅうを作らないといけないわね』


『その意気だ』


『ありがとう。料理長』


こうして、和菓子が量産され⋯尚且つ


〖ねえ?凛。凛はケーキも作れるのよね?〗

『あら、ジーニ様。ケーキですか?いくつか作れますよ』

〖本当?じゃあ、女子力の高いケーキっていうの?作れるかしら?〗

『女子力?』

どこでそんな言葉を?


〖サーヤがね、ゲンがいない時に、ハクたちと話してたのよ。おばあちゃんの作ってくれるケーキは、サーヤの好きなお花や動物さんが乗ってることがあって、しかもそれが全部食べられるんだけど、かわいすぎて、食べるの困っちゃうって〗

『あらあらまあまあ、そんなことを?』

〖そうなの。それで、おいちゃんのは見た目すっきりで、おばあちゃんのは、女子力が高いケーキで、特別な時のケーキなんですって〗

『あらあらまあまあ、そんなこと言われたら作らないといけないわね。でもね、サーヤには内緒だけど、生クリームの摂りすぎは良くないから、実は豆乳やヨーグルトを使って生クリームの代わりにしてたのよ。ケーキを重ねる時も、一段はクリームじゃなくて、手作りのジャムにしたりね』

〖なるほど。本当の意味で特別だったのね〗うんうん


『そう言ってもらえると嬉しいわ』にこり


あらぁ、凛ったら、こんな笑い方もできるのね。聖女みたいね。

〖ふふ。サーヤもその内、そんな笑い方をするようになるのかしらね〗


『そんな笑い方?』


あら、自覚なしね。

〖ん~、狙った男を一発で仕留められるような笑顔?〗にやっ


『あらあらまあまあ、それは、使いどころを教えなくちゃね。悪い虫はつかないようにしないと』

〖そうね。それはもちろんよ〗


『〖うふふふふふ〗』

サーヤに近づく男はもれなくチェックしないとね。


〖な、何あれ?怖いんだけど?〗ぶるっ

〖お父様、見てはダメです〗

サーヤの将来は、ある意味安全?



そして、出来上がったたくさんのお菓子や、お料理。結局、きんぴらや、レンコン料理や、つくねやハンバーグなどのおかずから、ちらし寿司や、おこわまで炊いてしまったおばあちゃん。サーヤの大好きなものばかり。


『どうしようかしらね?これ。さすがに作りすぎたかしらね?』

だってほら、久しぶりにサーヤにお料理出来たものだから。張り切りすぎちゃったわ。


〖う~ん、これは、インベントリの使える誰かに届けてもらった方がいいよね〗

〖そうね。私が行こうかしら?〗

〖ダメですよ。お母様。お父様にはもうしばらくお母様の監視が必要です〗

〖そうね。見張らないとね〗

〖なんか、酷い!?〗

イル様はまだ療養中だからね。


『ふむ。では、こうしたらどうでしょう?私が医神様の天馬と一緒に行って、私だけ戻って来るというのは』

バートさんが思わぬ提案をしてきました。


〖そんなこと言って、ちゃんと帰ってくるんでしょうね?〗

『当たり前です。私だってできるならこんな駄⋯主神の世話より、かわいいサーヤのそばにいたいに決まってます。が、駄⋯主神が使い物にならない今、誰が溜まった仕事をするのですか?あ、ジーニ様変わって⋯』

〖行ってらっしゃい。バート。信頼しているわ〗

『⋯かしこまりました』ニヤ


バートさんに勝てるわけがない⋯



〖でも、なぜ天馬を?〗

シア様が聞くと


『ああ、どうもですね、サーヤたちが鍛治神様の虎に、『名前があるのに名前を呼べないのはかわいそう』だと、みんなで牙王というあだ名をつけたそうなのです』

〖うん。みんないい子だね。でも、それが?〗

イル様が聞くと


『それでですね、どうも進化して若返ったらしいのですよ』


〖はい?〗

〖〖ええ?〗〗

『あだ名なんだろ?』


『そう。あだ名です』こくり


〖ええ~聞いてないんだけど?〗

『貴方様は療養中なので伝えませんでした』ニヤリ

〖そ、そうなんだ〗

バートさん、楽しそう。


〖じゃあ、天馬にも同じことが起こるか検証しようということ?〗

『さすがジーニ様。お察しの通りです』にっこり

〖黒いわ、笑顔が⋯〗ぼそ

『何か?』にっこり

〖いいえ?〗

怖い怖い⋯


〖ん~そっかあ。わかったよ。それじゃあ天ちゃんと一緒にお届けお願いね〗

『かしこまりました』


そんなこんなで、バートさん、天馬と一緒にサーヤたちの元へ⋯

どうなるかな?



☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございます。またまたおばあちゃんです。

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