第534話 鬼退治の裏で

サーヤたちが頑張っている頃


ピピピッピピピッ

〖ん?あ、すまほ?誰かな?⋯医神ちゃん?なになに?⋯⋯え?〗


バタバタバタバタっ

ピッ!

〖え?え?ちょちょちょっと、サーヤたち何する気?ええ?⋯バババ、バートっ!たたた大変っ大変だよっ!〗


ここは天界。主神イリュースこと、イル様(サーヤが呼ぶと「いりゅしゃま」)の執務室。


『なんですか?なぜ寝室で休んでいるはずのあなたが執務室にいるのですか?普段は仕事から逃げる癖に⋯』ぶつぶつ

〖それどころじゃないんだってば!いいから、コレ見て!これっ!はやくはやく!〗

『なんなんですか?まったく⋯え?』



皆様、覚えていらっしゃるでしょうか?サーヤに会いたくて会いたくて、イル様が、神様たちと協力してスマホもどきと、大型テレビもどきを作り出したことを⋯

今、その大画面には


『サーヤっ!今だ!』

「あい!みきしゃーっ」

『フゥ!』

『はいっ!ウインドカッター!』


鬼退治をするサーヤたちの勇士がっ!



『な、なんですか?なぜ、サーヤたちが戦っているのですか?』

〖分からないよ。珍しく医神ちゃんから、通信が来たから、慌てててれびをつけてみたんだよ。そうしたら⋯〗


しーん⋯


〖ハッ!これ、魔神ちゃん達は知ってるのかな?〗

『さあ、どうでしょう?知っていたら今頃、大騒ぎなさっているのでは?』

〖だよね?〗


しーん⋯


〖『⋯大変だ(ですね)』〗

こんな一大事を知らせなかったなんて思われたら⋯

二人の背中に嫌な汗が⋯


〖『誰かーっ』〗


『『ははは、はい!?』』だだだっ

『『『ど、どうされましたか!?』』』

イル様だけでなく、普段は冷静なバートさんまで、ただ事ではないと使用人さん達が駆け寄ってきました。


〖魔神ちゃんとシアを呼んできて!はやく!〗

『武神たちもお願いします!』

〖『急いで!』〗


『『ははは、はい!』』だだだだっ

『『『かしこまりましたっ』』』だだだだだっ

ごめんね、みんな。ん?


〖あ、しまった!念話で呼べばよかったんだ!〗

『あ、そうでしたね。うっかりしてました』

イル様だけじゃなく、バートさんまで忘れてたなんて⋯


〖〖魔神ちゃーんっ!シアーっ!大変だよーっ!〗〗

〖何よ!?〗しゅんっ

〖お父様?〗しゅんっ

さすが、直ぐに来ました!


〖あ、魔神ちゃんっ大変っ!あれ見て!あれ!〗

早速飛んできたジーニ様たちに画面を見るよう促すが⋯

〖何よ?いった⋯い?〗

〖なんですか?そんなに慌て⋯て?〗


かちーんっ


『あ、固まりましたね』

〖やっぱり知らなかったんだね〗

〖『知らせてよかった(危なかった)』〗

イル様たちは生命の危機を脱した。


〖〖サーヤっ!?〗〗

あ、やっと動き出した。


〖何だ何だ?〗

〖何事ですか?〗

『何事かえ?』

『みんなが血相変えて呼びに来たぞ?』

遅れて武神様、工芸神様、天界樹の精様に、料理長までやって来た。そして


〖〖え?〗〗

『なぜじゃ?』

『おいおい』

皆さんも瞬く間に、テレビに映し出されたサーヤたちに釘付け!


でも、皆さん、大事なこと忘れてませんか?


〖⋯ねえ?凛さんは?〗

『え?』

〖〖あ、あら?〗〗

またもや、みんなの背に嫌な汗がツーっと⋯

だって、サーヤ命の最強おばあちゃん⋯

みんなの顔からサーっと音がしそうなほど一気に血の気が⋯


生命の危機、再び!


〖〖〖『誰かーっ!』〗〗〗

さすが家族!と、バートさん!息ぴったり!


〖おおお、俺探してくるっ〗

〖わ、私も行きますっ〗

武神様と工芸神様は猛ダッシュ!


『りょ、料理長、見かけたかえ?』

『いや、見なかった』

『妾の庭にはいなかったのじゃ』

『厨房にもいなかった。てことは?』

『『⋯鍛錬場じゃ(だっ)!』』

『衛兵、頼んだえ!』

『命が惜しかったらはやく呼んでこい!』

冷静に考えた天界樹の精様と料理長!ナイス!


『『『ははは、はいっ!』』』

うわ、衛兵さん、貧乏くじ引かされた!


〖あっ、また念話忘れてた!〗

『あっそうでした』

〖はやく呼んで!〗

〖お父様、はやく!〗

皆さんも念話できるんじゃ?


〖わ、分かったよ〗

〖〖凛さーんっ!大変だよ!サーヤがーっ〗〗



だだだだだだだっ!どこーんっ

『『ぎゃーっ!』』ちゅどーんっ!

〖〖わーっ!〗〗どかーんっ!



〖え?どこーん?〗

〖な、なんの音?〗

〖爆音ですか?〗

『もしや、魔物にでも跳ね飛ばされましたか?』


バンッ!


〖〖〖あ⋯〗〗〗

『なるほど』

魔物じゃなくて⋯



ゆら~り

『サーヤがどうしたの?』キラーンっ



〖〖〖ヒィッ〗〗〗ぎゅっ

『おお⋯』

おばあちゃんから、怪しげなオーラが?


〖り、凛さん、おお、落ち着いてね。ね?こ、コレ見て、コレ〗

イル様、勇気を振り絞ってます。でも、声が震えてます。だって⋯

『目が光ってませんか?』

〖〖バート!黙って!〗〗

ジー二様たち、抱き合ったままバートさんにツッコミ。


そう、廊下の爆音は、おばあちゃんが跳ね飛ばして来た衛兵さん達と武神様たち。衛兵さんたち、わけも分からず探しに行かされたばっかりに⋯


〖おお、おい!大丈夫かっ〗

〖誰か、救護室に連絡をっ〗

『『ううっ』』

かわいそうに⋯衛兵さんと、壊れた壁が



『これ?⋯サ、サーヤ!?』だだだっベタっ

大画面に映し出された等身大サーヤに張り付くおばあちゃん。


〖り、凛さん、大丈夫?ごめんね、なんでこんなことになってるのか僕らにも分からなくて⋯〗


『⋯⋯』


勇気を出して、話しかけるイル様。でも、おばあちゃんからは返事はなく⋯


〖り、凛?大丈夫?〗

〖気をしっかり⋯〗


『⋯』

ジーニ様とシア様も恐る恐る声をかけるが、やっぱり反応はない。でも、バードさんは見た⋯


『⋯なぜか、笑ってませんか?』

〖〖〖え?〗〗〗

笑ってる?


〖〖〖⋯〗〗〗そろ~

顔を見合せてから、横からそーっと覗き込む神様家族。


〖〖〖⋯っ〗〗〗ばっ

『笑ってましたでしょう?』

〖〖〖⋯っ〗〗〗こくこくこくっ


おばあちゃん、顔を紅潮させて、うっとりとしながら、映し出されたサーヤの頭や顔を撫でてます。

ちょっと涙が光る眼で。


『主神様、凛殿は今まで動くサーヤを見ていなかったのかえ?』

天界樹様が聞くと、

〖え?いや、そんなことはないよね?魔神ちゃんが送ってくれた映像を見たりはしてたよ〗

『そうですね。魔法の練習をしている姿も見ているはずですよ』

〖そうです。ですから、今のサーヤにあれもこれもとプレゼントを作った訳ですし〗

『そうじゃったの。妾の天蚕の糸で色々作ったしの』

〖それなら?ありゃ心配してる顔じゃないよな?〗

『おい、なんかブツブツ聞こえないか?』

天界で目覚めたおばあちゃんと、ずっと一緒にいたメンバーも戸惑いを見せている。


〖ちょっと声を聞いてみましょうか?〗ぱちんっ

ジーニ様がブツブツと呟いているおばあちゃんの声を、みんなに聞こえるようにすると⋯



『⋯あらあらまあまあ、サーヤ、強くなって。えらいわ』うっとり

『ゲンさん、そこはもっとスマートに。サーヤにそんな死体を見せないようにして下さいな』ごごご

『ああ、サーヤは土の魔法が得意なのね?さっきとは違う魔法ね。すごいわ』うっとり

『ゲンさん、だからそんな雑に。ほら、サーヤの前にそもそもそんなに鬼を近づけないでくださいな』ごごごご

『ああっ、サーヤ、後ろから鬼がっ!まあ、怖がらずに落とし穴を作るなんて、えらいわサーヤ』うっとり

『あらあら、この鬼サーヤに爪を立てようとしたのかしら?私の孫に何をしてくれてるのかしら?ゲンさん、もっとしっかりしてくださいな』ごごごご



〖〖〖⋯⋯〗〗〗

『凛さんが二人いらっしゃるようですね』

あ、バートさん言っちゃった。


『ま、魔神様、妾たちは聞いてはいけないものを聞いているのではないかえ?』

〖え?え~と〗

ジーニ様、困惑。魔法を消すべきか消さざるべきか⋯


〖サーヤは、愛されてるな。けど⋯〗

〖ゲンは、鍛えないと凛さんと再会した時、危険なのでは?〗

『そりゃ困る。ゲンにはまだまたま新しい飯を教えてもらわないと』

みんなのおいちゃんに対する認識が⋯


〖ねぇ?シア〗

〖はい。お母さま〗

〖ゲンの気持ちが凛に届くことはあるのかしら?〗

〖さあ⋯?聖域の凛さんはクマの編みぐるみだから、伝わらないのかと思っていましたけど⋯〗

じーっ



『あらあらまあまあ、サーヤ、そこよ!そう!えらいわ!』うっとり

『だから、ゲンさん、そこは』ごごごご

おばあちゃん⋯



〖こちらは別の意味で難しいかと⋯〗

〖やっぱり?〗

〖〖⋯⋯〗〗

〖ゲン⋯(不憫だわ)〗うる

〖ゲンさん⋯(頑張ってください)〗うるる

おいちゃんの知らないところで哀れまれてます。



そして、見られているなど知る由もない戦闘中のおいちゃん達は⋯


『へっくしょい!』

「おいちゃん!つちにょ、かべ!」じゃきんっ

『ウインドアロー!ゲンさん、大丈夫ですか?』ぐさっ

『お、おお?サーヤ、フゥ、ありがとな』ザンっ

「あい!」

『はい!』


あ~あ⋯みんなが噂してるから



『あらあらまあまあ、サーヤ、フゥちゃん、ナイスよ』うっとり

『ゲンさん⋯』ごごごご



〖ゲンさん、ごめんね〗しくしく

『お労しや⋯』うる

〖〖強く生きて⋯〗〗うううっ

〖〖気の毒に〗〗くぅっ

『泣けてくるのぉ』すっ

『何だ、この状況⋯』ヒクッ


嗚呼、おいちゃん、頑張れ!


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

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