第532話 イヒカ様がつれてきたもの

ドワーフさん達が鍛治神様の前で神剣を打ち上げた翌日。


きらんっ

「う?いひかしゃま?」

お空の向こう、小さく白い何かが見えました。だんだん大きくなってくる?白くておっきな翼です。


『ん?サーヤ、なんか言ったか?』

「あい。おいちゃん、ありぇ、いひかしゃま?」

おいちゃんに、指さして教えると、さっきより大きく、お空をすごい勢いで飛んでくるイヒカ様が見えました。


『ほんとだな。だが、なんか様子がおかしいな。みんなを呼んだ方がいいか?』

「しょだね」

何かあったんなら、エル様たちに来てもらった方が良さそうだよね。


『それならぼくが今すぐ呼んであげる~』


『え?呼ぶ?今すぐ?』

「ふえ~?はく?」

どうやって?ここから?


『見てて~。いくよ~』

ハクは大きく息吸って

『わおお~~んっ!みんな~来て~。わおお~~んっ!』


「ほぇぇ~」びりびりびり

ハクが吠えた!すごい大きい声~。お耳がびりびりする~ぅ。


『うわっすごいな。でも『見て』というより『聞いて』じゃないか?何にしても、すごいの一言だな』

おいちゃん、突っ込みながら感心してます。


『えへへ~すごい~?お父さんに教えてもらったんだ~。これでみんな来てくれると思うよ~』にこにこ


「ふえ?」

そうなの?

『うん!』にこにこ

「しょっか~。しぇいこ~」

ハク、成功したからか嬉しそうだね。

『ちょっと違うかな~。サーヤたちの役に立てたから嬉しいんだ~』にこにこ

なんですと?

「はく、いいこ⋯」ぎゅ

『うん。いい子だな』わしゃわしゃ

いい子すぎです。

『えへへ~♪』

おいちゃんとハクをいい子いい子してたら

『あっ、来たな』

え?


しゅんっ

〖ハク?どうしました?〗

〖なんだ?何があった?〗

『敵襲か?』


「ふあ~」

エル様とヴァル様、牙王様もほんとに来た~

『あっちもだな』


だだだだだっ

『ハク?』

『なんだ?』

『どうしたの?』


『お父さ~ん、おじいちゃんたちも~』


『『『何があったの?』』』ふわり

ギン様に、吹雪じぃじに、白雪も速~い。精霊さんたちも一緒です。


「ふわぁ~」

どんどん集まってくるよ~


『なぁに?非常事態ぃ?』

『ハクくんが吠えるなんて初めてですわね?』

『どうしたにゃ?』

『誰かお怪我でもなさりましたか?』

結葉様たちも来てくれました。


『どこまで聞こえたんだ?』

まだまだ続々と集まってきます。


『あらあらまあまあ、何事かしら?』

ぴゅいきゅい『『ハク~?』』

『『サーヤも』』

『『『おいちゃん?』』』

みゃあ『どうしたにゃ?』

『ハクの声、大きかったのだ』

『そうね』

『家の中いたのに聞こえたもんな』

『はい。ミキサー使ってたのに』

『ハッキリ聞こえました』

ちびっこたちも、おばあちゃんも、フゥや山桜桃ちゃん達に抱えられて、どうしたの?って集まって来ました。

あ、サーヤたちは畑でお手伝いしてたんだよ。


きゅるる『サーヤ、何見てる?』

絹さんがサーヤたちが空を見てるのに気づいて、空を見上げると、


きゅるるん『『『『『『『あっ』』』』』』』

『『『あれ、イヒカ様だか?』』』

みんなもつられるようにして、イヒカ様に気づいたみたいです。


『じぃじ、亀じぃ、何だか様子が?』

青葉ちゃんがイヒカ様を見て、顔を顰めてます。

『ふむ。エル様、少々様子がおかしいですかの?』

『慌てているように見えませぬかのぉ?』

〖そうですね〗

〖何かあったか?〗

『とにかく待とう』


牙王様の言う通りに、みんながイヒカ様を待ちます。すると


すい~

『皆様、お集まりでしたか』

イヒカ様が降りてきました。


〖サーヤたちがあなたに気づいて、ハクが教えてくれたのですよ〗

『そうでしたか。先程の遠吠えはハクでしたか。さすがギン様のお子様ですね』

おお、イヒカ様にも聞こえてたんだね。


〖それで?慌てていたようだが、何かあったか?〗

『どうしたんだ?』


みんながイヒカ様に注目します。


『新たな神様と神虎様でございますね。お初にお目にかかります。イヒカと申します。よろしくお願い致します』

こんな時でも真面目なイヒカ様です。


『おう!鍛治神ヴァルカンだ!噂のサーヤがやらかしたエルクだな。よろしくな』

『確かに立派な翼だな。俺はここでは牙王だ。よろしくな!それで?何があったんだ?』

ヴァル様たちも自己紹介を交えつつ、話を促します。


『はい。実は空から聖域の外の見回りをしておりましたところ、少々気になるものを見つけまして』


〖気になるものですか?〗


『はい、医神様。おそらく小鬼族の集団かと』

こおにぞく?鬼?


〖集落ですか?〗

眉をひそめるエル様。ヴァル様たちも。やっぱり鬼さんはこの世界でも悪いのかな?


『いいえ。毎日見ておりますので、集落でしたら出来る前に気づきます。あれは、何かから逃げてきたのではないかと。実は、この小鬼なら害は無いかと三匹ほど連れてきたのですが⋯』


「ふえ?」

鬼さんを?

『鬼をか?』

『あらあらまあまあ、連れてきたって、大丈夫なの?』

みんな、びっくり!


『はい。聖域の壁も問題なく通過しましたから大丈夫かと』


〖聖域の壁を?〗

〖それなら大丈夫だな〗

『ああ。安心だな』

そっか。悪い子は聖域入れないもんね。


『はい。同じ小鬼でも他のモノは壁に阻まれておりました。どうやらこの子らは小鬼族の中でも変わり種の子らのようでして、怪我をしていることもあって、仲間に見捨てられたようなのです』

そう言って、イヒカ様が自分の背中を向けると


『『『⋯⋯』』』ぷるぷるぷる


「ふわぁ~っちっちゃい!かあい!」

おめめ、うるうるさせた二人の、妖精さんくらい小さい小鬼ちゃんと、あれ?三人目は?あ、真ん中にもう一人?え?


「ふああっ!えりゅしゃま、ちゃいへん!」

三人の小鬼ちゃん、抱き合って震えてるんだけど、真ん中の子、頭から血を流してぐったりしてます!


〖見せてください〗

エル様も急いで診てくれます。


「えりゅしゃま?」

大丈夫?血、いっぱいだよ


〖大丈夫ですよ。ヒール〗ピカッ


ごくっ

「⋯⋯」

『『『『『⋯⋯』』』』』

みんなで見守っていると


『す~す~』


ねんね?顔色はよくなったけど

「おきにゃい」

お怪我治ったのに。


〖ええ。そのまましばらく寝かせてあげましょう。クリーンもかけておきましょうね〗パチン


「あい。よかっちゃね」

三人とも血の跡も消えてキレイになりました。二人の小鬼ちゃんもほっとしたみたいです。笑顔で泣いてます。


『それにしてもぉ、この子たち、ほんとに小鬼なのぉ?確かに角は一本あるけどぉ、普通の小鬼より小さいし、可愛すぎよねぇ?』

『うにゅ?』

そうなの?


『そうですわよね?小鬼族と言えば赤い体で、小さな体に似合わない、ものすごく怖いお顔をしてますわよね?牙むき出しの』

『ええ。急に出会ったら悲鳴を上げて、しばらく悪夢に見るくらい凶悪なお顔ですわよね?』


『はい。他の小鬼は正にそれでしたよ』

そうなの?そんなに違うの?


『あ、そう言えば前に、ご主人とリノ様と闇の精霊王様とお散歩してた時にゃ。いきなり小鬼たちに鉢合わせたんだけどにゃ、ご主人たち悲鳴と同時にストーンバレットとライトアローとシャドーアローで殲滅してたにゃよね』

『うっ、あれは突然でしたし、少々驚いてしまっただけですわ』

『そうですわよね!ちょっと力加減を間違えてしまったのですわ!』

『まあ、小鬼族は妖精を襲うからにゃ。仕方ないけどにゃ。さすがに消し炭はやりすぎと思うにゃよ』

『『ううっ』』

『あらぁ、そんなことしたのぉ?ダメねぇ』

『『お母様にだけは言われたくありませんわっ』』


ええ?そんなことしたの?

それより


「こおにちゃ、ようしぇいしゃん、たべりゅ?」

『『⋯⋯』』ぶんぶんぶんっ

「たべにゃいっちぇ。よかっちゃ」

こんな可愛いのに、妖精さんいじめるようには見えないよ?それに


『なあ、さっき、赤い体に怖い顔って言ったよな?』

「あい」

そうだよね?でも

『あらあらまあまあ、このこたち、体が小さくて角がある以外は肌の色も、かわいいお顔も、人間の子みたいよね?歯も牙と言うより、かわいい八重歯みたいだし』

「あい」

前の世界のキャラクターみたいです。髪の毛はサラサラ真っ直ぐバージョンのごろぴ⋯

『あらあらまあまあ?サーヤ?それ以上はダメよ?』

「あい」

お口チャック!


〖ふむ。あなたたち、何があったか話せますか?〗

エル様が起きてる小鬼ちゃんに聞くと


『⋯っ』ぱたぱた

『⋯っ』ぱたぱた


小鬼ちゃんたち、一生懸命、手をパタパタさせて、お口パクパクしてるんだけど、声が小さくてよく聞こえません。

みんなも聞こえないみたいです。

「うにゅ~」

何とか聞こえないかな~?一生懸命耳を済ませると


『⋯はや、く、にげ、てっ』

『⋯おっき、な、おに、きちゃ、う』


え?はやく、にげて?おっきな?おに?

「ふあっ?おっきにゃ、おに、きちゃう?」

え?それって大変!


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

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