第519話 新たな⋯

ぴちちちち


気持ちのいい朝、小鳥がサーヤたちに、そろそろ朝だよ~と知らせようかな~と、考える頃


「むにゃむにゃ⋯ぷふ~」

『すぴ~』

ぴゅきゅ~『『ぷぷぷ~』』


もちろんサーヤたちは、まだまだふわふわお布団にくるまって夢の中⋯だけど



ドカドカドカ


『あ、あのあのあのっ』

『まままっ』

『ジーニ様~っ』

『ああああっ』


廊下の方が何やら騒がしく⋯


ドカドカドカっ

〖気にするなっ〗


『そそそ、そんな』

『だだだっ』

『シア様~っエル様~っ』

『ああああっ』


誰かを必死に止めようとする山桜桃、春陽、フゥ、クゥの声が⋯


「むふ~う⋯ぷひゅ~」

『『くふ~』』

『『『ぷひゅ~』』』

それでもサーヤたちはまだ夢の中⋯


ドカドカドカッ

〖ここかっ〗バーンッ!


『『『『わあああっ』』』』


必死の抵抗虚しく、サーヤたちの寝室のドアが開け放たれた⋯


「ぷひゅう~」

ガバッ

「ふにゅ~う?」がくんっ


〖おおっ!やっと会えたな!愛し子!会いたかったぞ!〗


「ふにゃあ~?」ぶらんっがくんっ


『『あわわわっ』』

『『サーヤっ』』


ドタドタドタっ

〖ナニナニナニ!?また何かあったの⋯あっ!〗

〖どうしたのですか?あっ!〗

〖まだサーヤたちを起こす時間では⋯あっ!〗

『ええ?だぁれ?』

『あらあらまあまあ?』

『どうした?あっ!』


また何かあったのかと、駆けつけたジーニ様たちが見た人物


〖よお!〗ニカッ

「ふにゅう~」ぶらんっがくんっ


その誰かとは⋯



〖〖〖鍛治神っ!〗〗〗

『鍛治神様っ!』

神様たちと、おいちゃんが叫ぶ


『ええ~?』

『あらあらまあまあ?』


『山桜桃ちゃんと春陽くんは』

『もしかして知ってた?』

『は、はい』

『天界で何度か』

『『えええええっ』』


ついに、鍛治神様登場!


〖ガハハハっ〗

「ふにゅあ~」ぶらんっかっくんっ


〖ハッ!サーヤに何してんのよっ〗

〖ああっ、サーヤの首がっ〗

『うわあっサーヤっ』


そう。まだ寝ぼけてるサーヤは、鍛治神様に寝たまま高い高いをされて首があっちにこっちに、カックンガックン。

おいちゃんも慌てて駆け寄るが、バカでかい武神が高い高いをしてるので、届かない!


〖何をしてるんですか、鍛治神。サーヤの首が取れたらどうするんですか〗スパーンっ

〖いてぇっ!〗

ひょいっ

〖何すんだ医神っ!愛し子返せ!〗

エル様が翔んでサーヤを奪い返した!


〖返すわけないでしょう。サーヤはまだこんなに小さいんですよ。あんな乱暴にしたらサーヤの脳みそが揺れてしまうではないですか〗

〖ぐうっ〗

サーヤにヒールをかけながら睨みつけてくる医神に、何も言い返せない鍛治神!


『サーヤ、大丈夫か?』

「うにゅ~⋯すぴ~」

エル様からサーヤを受け取り、おいちゃんが抱き直すと、安心したのか、落ち着いたのか、また寝息をたて始めるサーヤ。

『⋯寝た。普通に』

『あらあらまあまあ、地震が起きても起きない子ね。我が孫ながら心配だわ』

『まあ、いつもよりまだまだ早いからな~』

呆れていいやら、心配していいやら⋯


『ゲン、凛、そんなこと言ったらこっちだって似たようなものだぞ』はぁ⋯

『『え?』』

アルコン様がため息混じりに言うと

『ええ。ハクたちも、全く起きる気配がありませんからね』

きゅるる『大物ぞろい』

『『可愛い寝顔ですわ♪』』

みゃあ『ご主人、リノ様、今はそっちじゃないにゃ』


『すぴ~』

ぴゅいきゅい『『ぴゅふ~』』

『『ぷ~』』

『『『ふ~』』』

みゃあ『みゅ~』

『むにゃむにゃ』

きゅるるん『『『『『『『きゅる~』』』』』』』

ハクたち、ちびっこたちも全く起きる気配は無い。こんなにうるさいのに⋯


『すごい』

『なんで起きないの?』

クゥとフゥも呆れてます。


『ここは安全だと分かっているからじゃないでしょうか?』

『はい。こんな安全な場所、他にありませんよね』

山桜桃と春陽がそう言ったが⋯



〖そうでもなくなったんだよな。これが⋯〗ぼそっ



〖〖〖え?〗〗〗

鍛治神の誰にも聞こえないくらい小さいつぶやき⋯だが


ここにいるのは神様や、神獣、獣人など、音には敏感な者ばかり


『『⋯っ』』ぴくっ

『鍛治神様、今のは?』

『どういう事だ?』

たちまち、みんな神経を尖らせる


〖ん~、まあ、その話をな、しに来たってのもあるんだよ。とりあえず、場所変えようや〗


〖あんたがここに真っ先に来たんでしょうが⋯〗じとー

ジーニ様が鍛治神にツッコミ


〖ん?そりゃ仕方ねぇだろ?俺だって会いたかったんだからよ。お前らばっかりずるいんだよ〗じとり

今度は鍛治神がやり返す


〖うっ〗

〖まあ、その〗

ちょっとたじろぐ女神母娘に対し、

〖羨ましいでしょう?〗ふふんっ

エル様には全く効き目なし⋯


〖そういう奴だよ。お前はよ〗ふんっ


『まあ、立ち話も何だしぃ?移動しない~?サーヤたち、起きちゃうわよぉ』

結葉様の声でみんながハッとする。


〖そうね。フゥ、クゥ、山桜桃と春陽もまたサーヤたちをお願いできるかしら?〗


『『かしこまりました』』

『『しっかり見てます』』


〖お願いね〗


『『『『はい』』』』


そんなやり取りを見ていた鍛治神様が急に


わしわしわしわしっわしわしっ

『『うわわっ』』

『『あわわわっ』』


四人の頭をわしわしと⋯


〖お前たち、良かったなっ〗ニカッ


『『え?』』


〖天界にいた時よりずっといい顔してるぞ!ここで楽しくやれてるんだな。安心したぞ!〗


『『は、はい!ありがとうございます!』』

鍛治神は、天界に保護された時からの山桜桃と春陽を知っている。鍛治神なりに心配していたのだ。そして


〖お前たちが守護精霊だな。愛し子が今、無事なのはお前たちのお陰だ。感謝するぞ〗

フゥとクゥのことも、忘れてはいなかった。


『『え、あの、そんなっ』』


〖謙遜するな!シアの無茶ぶりにしっかり応えてくれたんだ!天界の他の奴らも、お前たちには感謝してるんだぜ!ありがとうな!〗


『『は、はい。ありがとうございますっ』』


〖ふっ。じゃあ、頼むな!〗ニカッ


『『『『はい!』』』』

気さくに笑顔を向ける鍛治神様は、すでに四人の心を掴んでいた。



『なんとも、気持ちのいい方ですね』

『そうだな。脳筋だがな』

ギンとアルコンが話していると


〖聞こえてるぞ。久しぶりだなエンシェントドラゴン。なんだよ、どいつもこいつも人のことを何だと思ってんだ〗

〖『脳筋』〗

『だが?』

〖でしょう〗

〖医神、お前、何シレッと混ざってやがる〗

〖何がです?本当のことでしょう?〗ふふんっ

〖コイツ⋯っ〗

医神と鍛治神がじゃれていると


〖ハイハイ。いい加減にしなさい。着いたわよ〗

〖みんなも集まってますね〗

そう、向かっているのは親方たちの工房。そこには既に


『うわぁ、親方たちどころか、ドワーフみんな総出。しかも正座だ』

『あらあらまあまあ、顔も固まってるんじゃないかしら?』

『ふっ。亀じぃたち、引いてる』


そう。今回、降臨したのは鍛治神。ドワーフたちが崇め奉る、絶対の神。なので⋯


『か、かかか鍛治神様っ。お目にかかれて光栄でございます。私は⋯』

〖おう!ドワーフの長だな!よろしくな!〗

『ははは、はい!こちらこそ⋯』

〖まあまあ、俺は堅苦しいのは苦手だ!そんな座ってないで立て立て!〗

『し、しかし⋯』

〖それより、後で窯に案内してくれよ!〗

『は、はあ⋯』

親方の挨拶をぶった切る。


〖金剛、諦めなさい。こういう奴だから〗

〖そうですよ。とにかく万事こんな感じですから〗

〖脳筋ですからね〗

ジーニ様、シア様、エル様はいつもの事だと呆れ顔


〖脳筋脳筋言うんじゃねぇよ!〗


〖〖〖本当のことでしょう〗〗〗

容赦なし。


〖はあ、全くよ。まあ、いいさ。それより、昨日のことだよ〗


しーん⋯


〖そうだったわね。どうだったの?〗


〖⋯ことは思いのほか深刻だった。魔神、とにかく声が愛し子たちに届かないようにしてくれ〗


〖⋯分かったわ〗

さっきまでのおどけたような雰囲気から一転、真面目な顔を見せた鍛治神に事態の深刻さがうかがえる。


〖さあ、とにかく、建物に入りましょう〗

〖おう〗


これから、話し合いが始まる。



☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読み頂きありがとうございますm(_ _)m

来ちゃいました!鍛治神様!

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