第473話 おかえりなさい!いらっしゃい!

『な、なんだよ、これは』

『話には聞いてたけどな?』

『聞いてたけどよ』

どこもかしこもキラキラ輝く聖域で呆然と立ち尽くす、攫われるように連れてこられたドワーフさんたち。そして⋯


『大げさに言ってるのかと思ってたけどさ』

『こりゃとんでもないね』

『夢かね?どれ⋯』

むぎゅむぎゅむぎゅ~

『『『イタタタ⋯夢じゃないね』』』

やはり信じられない光景に、どうやら仲良くほっぺたを抓りあったらしい奥様ドワーフさんたち。ほっぺた真っ赤ですよ。そこまでしなくても⋯


エル様の有無を言わさぬ笑顔に、訳の分からないままあれよあれよと連れてこられたドワーフさんたち。道中やはり


『『『ぎゃーっ』』』がくんっ

『大丈夫ですの?』

『また気絶したにゃ』つんつんつん

『なんだ、まだダメなのか?しかし』


『『『うっはーっ!』』』

『すごいね!こりゃ!』

『絶景だね!こりゃ!』

『一枚頂けないかね?この鱗。動くお宝だねぇ』


『うっヤメロ』

『ダメですわ!』

『アルコン様はナマモノにゃ!お触り禁止にゃ!』シャーッ

〖ふふふ。中々逞しいですね〗


男衆は気絶し、女衆はたくましかった。それどころかアルコン様、一部はげちゃびんの危機⋯

まあ、とにかく無事に聖域に到着した一行。呆然とするドワーフさんたちに


〖ふふふ⋯〗

エル様は今もいい笑顔を放っている。でも、


『ふむ⋯』

聖域に初めて連れてこられた親方たちはきっともっと驚いたずだな。何しろサーヤのやらかしにより、石を集める前はミスリルやらなんやら超高級貴重な鉱石がその辺の小石としてコロコロ転がってたのだからな⋯


と、自分が元凶なのをすっかり横に置いているアルコン様が思い、そして


『懐かしいですわね~』

『思い出すにゃね~』

アイナ様とニャーニャが

『さすが親子ですわね~』

『ガックリしてる姿がそっくりにゃね~』

と、今はガックリと膝をついて


『このすぐ下に』

『すごいお宝を感じる』

『俺たちの今までの苦労は⋯』


と、地面に抱きつきそうな感じのドワーフさんたちを見て懐かしんでいる。


『まだそんなに時間は経ってないはずなのですわよね。なのに、なぜでしょう?このとてつもなく懐かしい感じは⋯』

『それだけ、この短い間に色々あったにゃ。濃すぎるにゃ』

『そうですわね~』

『そうにゃね~』

二人が遠い目をしている。


すると⋯



「あいなしゃま~!にゃーにゃにゃーん!」

ぴゅいきゅいっ『『おとうしゃ~ん』』

『『エル様~』』

『あれ~?』

『あたらしいひと~?』

『たくさ~ん?』

みゃ『おやかたたちのこどもに、おくさんたちにゃ!』

『なんと?そう言われてみれば似てるのだ!』

『みんな~?それより~おかえりなさい言わないとダメでしょう~?』

遠くの方からかわいい声が聞こえてきます。



『まあ、サーヤちゃんたちですわね』

『ハクにたしなめられてるにゃ。ハクはみんなのお兄ちゃんみたいにゃね』

ふふっと声のする方を見つめるアイナ様たち。


「あ~。しょっか~えへ?おかいり~」にへら

『おかえりなさ~い』

ぴゅいきゅいっ『『おかえり~』』

『『おかえりなさ~い』』

『『『おかえり~それから』』』

みゃ『いらっしゃいませにゃ』

『いらっしゃいなのだ』

だんだん賑やかな声が近づいてきました!ぶんぶん小さなおててを振っているのも見えます。


『な、なんだい?あのかわいいちんまいのは?しかもたくさんいるね』

『ちびちゃんもいるね。みんなかわいいねぇ。かわいいけど、あのみんなを乗せてるの、かわいい顔してるけど』

『フェンリルだよね?フェンリルを馬がわりって⋯』

やっぱり似たようなことを言うドワーフの奥様たち


『あの銀髪の可愛い子が愛し子のサーヤちゃんですわ』

『みんないい子たちにゃよ』

アイナ様とニャーニャにゃんは嬉しそうに教えます。


『『『あれが愛し子様なのか⋯』』』ぐす

『『『あの可愛い子が⋯』』』ぐすっ

親方たちからサーヤの事情を聞いていたドワーフさんたち。楽しそうに笑いながらこちらに来るサーヤたちを見て涙ぐんでいる。情にもろいのも親方たちと似ている。


『堪えろ。気持ちはわかるが今はまだ泣くな。何も知らないふりをしろ。実際、サーヤからその記憶は消されているんだ』

〖そうですね。皆さん、笑顔でお願いしますね〗

アルコン様とエル様がドワーフたちに今はいつも通りにするように言うと、ドワーフたちも


『『『あ、ああ。そうですね』』』

『『『分かりました』』』

と、涙をこらえ笑顔を作る。少々硬い顔だが⋯


『サーヤちゃん、みんな、ただいま帰りましたですわ!』

『ただいまですにゃ!みんなでお迎えに来てくれたにゃ?』

アイナ様とニャーニャが笑顔で迎えると


「あいなしゃま~、にゃーにゃにゃ~ん。よかっちゃあ」ふにゃ

楽しそうにしてたサーヤの顔が急にふにゃっとなった。

『え?サーヤちゃん?』

『どうしたにゃ?』

急に泣きそうな顔になったサーヤに慌てるアイナ様たちを尻目に


「みんにゃ~おんりしゅりゅ~」

『分かったよ~みんなよろしくね~』

ぴゅいきゅい『『は~い』』

『『まかせて~』』

『『『じゅんびおっけー』』』

みゃ『にぃに、ねぇね、がんばってにゃ』

『がんばるのだ!』

サーヤがおんりすると言ったら、ちびっこたちが次々といつもと違う行動をとりだした。


『え?え?』

『なんにゃ?』

『何が始まるんだ?』

〖さあ?一先ず見守りましょう〗

一先ず成り行きを見守ることにしたエル様たち。

『『『なんか分からんが』』』

『『『私らも』』』

ドワーフさんたちも訳が分からないままエル様たちに従っている。



まずは、ハクが

『しゃがむよ~』

「あ~い」

ハクが声をかけてからゆっくりしゃがむとフルー、フライと妖精トリオが先に地面へ降りる。そして、


ぴゅいきゅい『『よいちょっ』』

サーヤの洋服の肩の部分、いつもは無い小さいベルトのようなものが両肩に付いていて、それをモモとスイが両手両足で掴んで羽をパタパタしだした。


『サーヤ気をつけて~』

みゃ『さーにゃにゃん、ゆっくりにゃ』

「あい。よいちょ、よいちょ」

サーヤがハクに抱きつくようにぺったり張り付いて体をずらし始めた。


『ゆっくり両足を下ろすのだ~』

姫ちゃんの誘導に従って両手でハクにしがみついてハクの横っ腹に両足を下ろす。

「あい。よいちょよいちょ」

かわいいおしりを突き出すようにしてずりずりとハクを滑り降りるサーヤ。途中、ズリッとなりかけるとモモとスイが

ぴゅいきゅいっ『『よいちょっ』』

と、言ってパタパタ羽ばたいてサーヤがずり落ちないようにしている。


『『『あああ』』』

『『『あぶなっかしいねぇ』』』

ドワーフさんたちも飛び出して手を貸したいのをこらえてハラハラしながら見守る。


『サーヤ、そのままゆっくり』

『あとちょっとだよ~』

「あい。あちょ、ちょっちょ~」

地面からフルーとフライも応援。

ずりずり⋯

『サーヤ、あんよがつくまで』

『あとオレンジいっこ~』

『あとイチゴいっこ~』

「あい~」ずりずり

妖精トリオがフルーツの大きさでお知らせ


『あと少しですわ~』

『もうちょっとにゃ~』

アイナ様とニャーニャはハラハラしながら手を組んで祈るように見守っている。


「ふにゅ~」ずりずり

ぴゅいきゅいっ『『うにゅ~』』パタパタ

一生懸命ずり降りるサーヤに、一生懸命パタパタするモモとスイ


『モモ、スイ偉いぞ。がんばれ!』

そんな双子を、応援しながら見守るアルコンパパ


『サーヤ、あとちょっとだよ~』

みゃ『きをつけてにゃ~』

「あい~」ずるずる

ハクとココロが最後まで気を抜かないように注意する。

もう少して爪先がっ!というところで

『フルー、フライ、そろそろなのだ』

『『ラジャー!』』

姫ちゃんが何やら指示出しを


〖ん?そろそろですか?〗

なんでしょう?とエル様が首を傾げます


『あんよ、つくよ~』

『つまさきついた!』

『あとあしのうらだよ!』

『『『モモ!スイ!』』』

「あい~」ずるずる

ぴゅい『がってん!』パタパタ

きゅい『しょうち!』パタパタ

妖精トリオも双子に指示出し。そして、この返しはきっとおばあちゃんの仕込みですね。


『『『んんん?』』』

『『『なんだい?』』』

フルーとフライがサーヤを見ながら少しずつ移動します。


「ふにゅう~」ずりずり⋯ぺちょん

『『『あしのうらついたよ!』』』

「あいっ」

その途端、ずるっ


『『ああっ』』

落ちるっ倒れるっとみんなが声を出したり息を飲んだり


ぽてんっぷきゅうっ


『『は?』』

ぷきゅうっ?思わず変な声が出るアイナ様とニャーニャ


『フルー、フライ~』

『『うんっ!よいしょおっ』』

ハクの号令で尻もちをついたサーヤのお尻をフルーと、フライが、えいって押し返します。このための移動だった!?


『『『モモ~、スイ~』』』

ぴゅいきゅい『『まかせて~ふぬ~』』パタパタパタパタッ

今度は妖精トリオの掛け声でモモとスイが全力でパタパタっ!サーヤのぽってりしたお尻が持ち上がります。


みゃ『ハクにぃに!』

『りょうかい~』

たしっ!ふぁさあ~

「ふう~もふもふ~♪」

サーヤがたっちしてハクに抱きつきました。ハクはしっぽでサーヤを支え⋯抱き込んでいます。


『よく出来ました~』ふぁさふぁさっ

ハクがしっぽでサーヤを撫でます。どうやら成功のようです。

「えへ~♪」

サーヤが嬉しそうにハクに埋もれます。

『サーヤ頑張ったのだ~』

姫ちゃんがサーヤの元に飛んでいき頭をなでなで。

「えへへ~あいがちょ~」

サーヤが照れている。

ぴゅいきゅい『『やったね~ふい~』』パタパタ

「あいがちょ~おちゅかりぇちゃま~」

『『大成功だね~』』

『『『おりられたね~』』』

みゃあ『みんなすごいにゃ!』

「えへ~みんにゃあいがちょ~」

みんな大成功でにこにこです。



『これはもしかして』

〖一応、大人の力を借りずにサーヤがハクから降りられた。と言うことでしょうか?〗

『サーヤちゃん、みんなえらいですわ!』うるうる

『がんばったにゃね~』うるうる

『泣くなよアイナ様』

『ニャーニャまで』

『まあ確かについ見守っちまったけどよ』

『ハラハラしたけどね、なかなかの連携だったね』

『そうだね。それにしても』

『あの音は何だったんだい?』


さっき、サーヤが尻もちをついたときにした「ぷきゅうっ」と、言う音はいったい?

エル様たちもドワーフさんたちも首を捻る。が、とりあえず今は嬉しそうにしているサーヤたちを見守っているのでした。


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

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