ある日のバレンタイン準備日記(後編) 番外編

本日二話目です。よろしくお願いします。

☆。.:*・゜☆。.:*・゜



『ん~土は問題なさそうだな』

親方に案内された場所にきて、おいちゃんが土を確認します。


『ガハハハ!そりゃそうだ!アイナ様と大地様がな?この辺り一帯を一度掘り返してるからな。どうせ、近い将来広げることになるだろうからってな!』

『そうか、なんか申し訳なくなるな』

「でみょ~?」

木、あるよ?


『ああ。大丈夫だ。仮住まいみたいなもんらしいからな』

「ふぇ?」

かりずまい?


『お~い。頼むぞ~』


ごごごご


「ふぉ~?」

動いた~

『あらあらまあまあ?』

『あ~そういうことかぁ』

木が土から抜け出しました。トレちゃんのお友達みたいです。


『小屋がひとつ必要らしいんだよ。あと、畑な。頼めるか?』


わさわさわさ


親方が頼むと、トレちゃんのお友達たちは、慣れた様子で間引きした木を丸太にして積み上げ、辺りを更地にしていきます。そして、


わさわさわさわさ


「てちゅだうよ、ゆっちぇくりぇてりゅ」

『あ~うん。じゃあ、頼むかな』

「あいがちょ」


わさわさわさわさ

今度はまかせてって。


『ねぇえ?トッピング用にナッツ類もどうかしら?アーモンドとか、マカダミアナッツとか、カシューナッツとか』

『あ~日本でも馴染みのあるもんだと、落花生とかか?そっちは向こうの畑でいいか』

「ぴーなっちゅばちゃー」じゅるり

食べたい。


『あらあらまあまあ。そうね、ピーナッツバターとかピーナッツクリームとかも出来るわね』

「あい」じゅるり


『なんだなんだ?その顔は美味いもんみたいだな』

サーヤの顔を見て親方がニヤリってしてます。

「あい。おいちい」じゅるり

『そうかそうか!』

『あらあらまあまあ。これじゃ、真っ先に親方にお味見してもらわないとダメねぇ』

『おっ!そりゃ嬉しいな!』

ガハハハ!って親方が笑ってると


『そこにいんのは兄貴にゲンたちか?おお?また見事に更地になったな』

『なんだ?またなんか始めんのか?』

親方の弟、黒曜のおっちゃんと、大工の琥珀のおっちゃんが騒ぎに気づいてきちゃいました。


『おう!ちょうど良かった!お前ら、手伝え!内緒でな』ニヤリ

『なんだ?なんかいいことが待ってんのか?』

『この三人が絡んでんだ。間違いないな』

『なんだ、やんねぇのか?』ニヤリ

『バカ言うな』ニヤリ

『やるに決まってんだろ?』ニヤリ

おお、またまたなんか悪いお顔です。


『おっしゃ。じゃあ、小屋立てるぞ!』

『おう!それじゃ、俺の腕の見せどころだな!』ニカッ

大工のおっちゃん、実に良い笑顔です。

『おう。くれぐれも、あっちにバレないように頼むな』

『なかなか難しい注文だな?おい』

「おたのちみだかりゃ~」

『そうか。じゃあ、頑張んないとな』

「あいっ!」

よろしくね!



さっそく色々な種を出します。

「でりょ~」ぱらぱら

そして、植えます。


「げんきににゃありぇ、おっきくにゃありぇ、おいちくにゃありぇ」

土におて手ついて、お願いします。


『光ってるな』

『光ってるわね』

そういうもんだよね?


『あらあらまあまあ、幻のホワイトカカオまで!すごいわね~♪』

『でも、単なる思いつきで言ったバナナが必要だとはなぁ』

「あい」


そう。調べてびっくり!カカオを熟成させるにはバナナの葉がいるんだって!あと、大理石とか、チョコを作ったりする時にいいんだって。


『お菓子作りは奥が深いな』

『ほんとね~』

「あい」

誰がこんな手間がかかることしようと思ったんだろね?


『おう!小屋と、作業台に棚と、まあ、とりあえず必要そうなもん作ったぞ』

『足りないもんがあったら遠慮なく言えよ』

『頑張れよ!ガハハハ』

さすが親方たち。あっという間です。

「あいがちょ~」

『これだけやってもらったら、一番初めは親方たちだな』

『そうね~さっそくバナナがなったみたいよ?』

むくむくむくむくっと大きくなるバナナ。緑から黄色く熟しました。


「ふぉ~」

『あらあらまあまあ、なんだか早送り映像見てるみたいね~』

『何度見ても、慣れねぇな』

おいちゃんはもう慣れていいんじゃ?


『いやいや、ありえねぇよな?』

『非常識の塊だな』

『何でもありだろ?もう』

おぉ、呆れられてるね。


『まあ、食ってみるかな』

おいちゃんがバナナの束をとると、ひとり一本ずつ渡していきます。

『ずるいわぁ』

『まあまあ、後で神棚に供えるから』

『お願いよ。絶対よ』

「おばあちゃん」

必死だね

『分かったよ』


くんくん

『甘い匂いがするな』

『どうやって食うんだ?』

『このまま食うのか?』

初めて見るバナナに興味津々な親方たち。


「むきむきしゅりゅにょ」

『こうやってな』

ぺりっとおいちゃんが剥いてみせると


『おお!こうか!』

『中は白いんだな』

『甘い匂いが濃くなったな』

って言いながら、パクっと!


『おお!美味いな!』

『食感も柔らかねっとり?面白いな』

『ん?なんか、元気になったような?』


「ふえ?」

もう?

『バナナはエネルギー補給には最適だからな』

それにしたってはやくない?

『サーヤが出した奴だぞ。バナナだって非常識になるんじゃないか?』

『あらあらまあまあ、そうね~』

「ぶー」

どういう意味~?


『ん~何でもいいけどよ、これいいな』

『ああ。仕事の合間とか、いいよな?片手で食えるしな』

『飯食えない時とか助かるよな』

なんだか親方たちはとってもバナナを気に入ったみたいです。


『気に入ったんならこれから定期的に渡すよ』

おいちゃんが、約束すると

『おう!それは嬉しいな!』

『助かるぜ』

『頼むな』

『あいよ』

お~商談成立。


『あらあらまあまあ、カカオも出来たみたいよ~』

『おう。それじゃ、やるか!チョコ作り』

『「おー!」』


と、張り切ったは良かったんだけど、

『これ、地味に疲れるな』

カカオを割って、中の実を取り出すだけで一苦労です。


「まほうで、できにゃいかにゃ?」

『『⋯』』

「うにゅ?」

どうしたの?黙っちゃって?

『『それがあったか!』』

「ふぁ?」


そのあとは、あ~でもないこうでもないと、試した結果、


『初めからこうすればよかったな』

『ん~魔法って便利ねぇ』

「しょだね~」

風魔法で殻を真っ二つ。魔法で中身も取り出して、バナナの葉に広げて、熟成もおいちゃんが魔法で!はやいはやい!


『さあ、チョコ、何チョコ作る?』

『親方たちはあれじゃない?間違いなく』

『あ~前に試したシードルあるしな』

「けーき」

『チョコケーキはまたの機会にしましょ。お楽しみは小出しの方がいいでしょ?』

「しょっか~」

『クッキーとかならいいかもな』

「お~」

『まあ、色々試してみましょう』


『『「くふふふふ」』』

なぜ悪い顔?



その頃

『フゥ、クゥ~。ねぇ~サーヤたちは~?』

『あら?そういえば』

『いないな?』

ぴゅいきゅい『『いないね~?』』

『『探しいく~?』』

『『『いこ~!』』』


ちびっこ達が捜索隊を結成していましたとさ。


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございます。明日もバレンタインです。

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