ある日の天界日記 番外編

〖うっうっうっうっ ひどいよ~。みんなばっかり楽しい思いをして~〗

今日も今日とて、響き渡る嘆きの声…


『うざいですよ。主神様。さっさと仕事を済ませてください』

どさどさーっ


〖うわ~ん!バートの鬼~!そうやって次から次へと増やしたら減るわけないじゃないさ~!しかもしかも!うざいってうざいって何!?仮にも僕は主神だよ!?偉いはずなんだよ!?〗


『おや。ご自分で〖仮〗とか〖はず〗とか仰るということは、ご自分でもまだまだだとお思いということですね。良い心掛けです。では、まだまだ頑張って下さいませ』

しれっと返されるイリュ様。


〖う、うわ~ん!なんだよなんだよ~!魔神ちゃんもシアもずっとサーヤのところだし!少しくらい僕に優しくしてくれたっていいじゃないさ~!二人とも連絡もくれないんだよ!?しかも、かわいいサーヤとずっと一緒でさ?美味しいものまで食べ放題でさ?バートだって悔しいでしょ!?寂しいでしょ!?〗

一気に捲し立てるイリュ様に、


『ジーニ様は例え側にいても優しいかは疑問ではありますが⋯あれがゲンが言っていたツンデレと言うものなのでしょうか?』ぼそっ


〖え?なに?〗


『いえ。なんでも⋯そうですね。ですからサーヤや、魔神様たちに会いたいなら仕事を片付けてください。あなたが片付かないと私だって行けないのですよ』


〖ううううっ もうやる気出ないよぉ。休ませてよぉ。一緒に下界の様子を見ようよぉ 〗

泣いて縋り付くイリュ様⋯


『全く、何が悲しくて男二人仲良く見ないといけないのですか⋯とはいえ』


〖ん?なになに?〗

思いがけない反応に、おお?いける?と思うイリュ様。


『とはいえ、ジーニ様やシア様、まして医神だけが美味しい思いをするのは、私とて面白くありませんね』

珍しく話に乗ってきたバートに、おお!今だ!とばかりに畳み掛けるイリュ様!


〖そうでしょ!?そう思うよね!?〗


『そうですね』


〖じゃあさじゃあさ!作戦会議しようよ!料理長も呼んでさ!料理長だってゲンさんに惚れ込んでるんだしさ!〗


怪訝な顔を向けるバートが

『作戦?何をしようと言うのですか?』


〖決まってるじゃない!いかに天界にいながら、サーヤたちとやり取りできるかだよ!やり取り出来れば料理長がゲンさんの料理を再現出来るかもしれないし!もしかしたらゲンさん作ってくれたものを直接手に入れる方法があるかもしれないじゃない!?ね?ね?〗

必死のイリュ様に、


『ふむ。駄…主神様にしては実に珍しくまともなことを』


〖え?酷くない?酷くない?〗


『ふむ』

悪くないですね~。


〖え?無視?無視なの?〗


うるさいですね~。

『分かりました。至急、料理長に連絡を取りましょう。お茶とお菓子も用意してもらって緊急会議です』


〖やった~!〗

奇跡が起きた~!


バーン!

『おう!呼んだか!?呼んだよな!?茶と菓子だぜ!もちろん俺も一緒でいいよな!?』

あれ?まだ?バーンとノックもせずに現れたのは筋骨隆々な


〖料理長?〗

『⋯相変わらず、鼻が効きますね。確かにお呼びしようと思っていたところですが、まだ』

『あー、こまけぇこたぁいいんだよ!気にしすぎなんだよ!お前さんはよぉ!』


ま、まあ、いいか

〖さあさあ、じゃあ、座ってよ。料理長も〗

『はぁ。そうですね。では、こちらにどうぞ』

『おう!邪魔すんぜ!そんで?何企んでたんだ?』

ずかずかやってくる料理長


〖企むだなんて酷いなぁ。料理長にだって損は無いはずだよ〗

『⋯実はですね』

先程のやり取りを説明するバート、だんだん目を凶悪に光らせる料理長


『そりゃあ、是非実現してもらわねぇとなぁ。あいつ、俺があんなに止めたのに行っちまいやがってよぉ』

悔しそうに言う料理長。頼むからその逞しい握りこぶしを振り下ろさないでね。テーブル壊れちゃうよ?


〖それでね?今はこちらから覗くか、魔神ちゃんが記録してくれた映像を見るしかないじゃない?〗

『そうですね。しかも、いつ送られてくるか分かりませんしね』

〖覗くといっつも美味しそうなの食べてるしね~〗

『なんだとぉ?』

頼むから落ち着いてね?壊さないでね?


〖そういやさ、ゲンさん、言ってなかった?たしか、てれびとか、えっと、すまほ?〗

『ああ、おっしゃってましたね。大きな画面で映像?を見たり、お互いの声が直接やり取りできたり、顔を見ながらやり取りできたりするとか?』

『へ~そいつはすげえな~。そういや、ゲンの世界じゃ神様にお供えとかいうのするらしいぞ。食べ物とか、飲み物とかよ』

『そうなのですか?』

『おう。神棚とか、お社とか言ったかな』

〖へ~、いいね、それ。何とか利用できないかな?〗

『⋯聖域にそのお社みたいなものを作ってもらったらどうです?』

『こっちで言う神殿か?』

『そこまで仰々しいものではなくても良いのではないですか?もっと簡単なもので、主神様に祈りを捧げれば、こちらに供えてもらった物が届くようにするとか』

〖お~!いいね!さっそく連絡取らなきゃ〗

『その連絡方法だけどよ?工芸神だか、鍛治神だかと話してなかったか?』

料理長が『多分だけどな?』と言って茶を飲みだした。


〖ほんと?ちょっと行ってくるよ!〗

急がなきゃ!ダダダダダダッ


『あっ!主神様!?多分だぞ!?確信はねえんだぞ~!』

『行ってしまいましたね。まったく』

『ま、その内戻ってくんだろ?茶でも飲みながら待ってようぜ』ずずっ

『そうですね』

まったく、この世界の神々は自由ですね。


ダダダダダダっ

〖お待たせ~!連れてきたよ!〗


そうして、ああだこうだと色々話して試してを繰り返した結果……


「いりゅしゃま~!ばーとしゃん、さーやだにょ~」

〖あ~サーヤ~!会いたかったよ~〗

『サーヤ、お元気そうですね』

「げんき~!」

大画面テレビ?を介してお互いの顔を見ながら話せるように。サーヤの方にはいつでも話せるように持ち運びサイズの小型のもの⋯スマホもどきが⋯

工芸神と鍛治神、ジーニ様による共同制作、血と涙と汗の結晶。何があったかは⋯ふっ。


大画面にはサーヤのドアップが。手が短いから仕方ない!


「あにょね~、おいちゃんがおいちいのちゅっくったの~。おそなえしゅるね~」

〖うんうん。ありがとう。お話も大分「ね」が言えるようになったね~〗

『頑張ってますね。えらいですよ』

「えへ~?」

『あ~主神様?一緒にサーヤからのプレゼントつけとくから受け取ってやってくれ』

おいちゃんが後ろから一言。


〖ほんと?もちろんだよ!ありがとう~〗

「じゃあ、まちゃね~」ブチッ

〖ああっ?そんな!もう?サーヤ~〗

べとっと画面に張り付く駄⋯主神

『主神様、届きましたよ』

〖どれっ?〗ばびゅん!

『⋯主神様、落ち着いてください。おや?これは?』

〖あっこれだね?プレゼントって!紙?僕とバートにだね〗

『私もですか?』

二人で丸めてリボンで止めてある紙を開くと


〖『うっ』〗

だばだばだばだば


〖サーヤ~ありがどぉ~。ゔれじいよ~ぉぉぉ〗

涙を流しながら紙に頬ずりする主神⋯

『くっ!なんと⋯っ!さっそく額を用意しなければ!』

涙を堪えながら工芸神に自慢がてら額を作らせようとするバートさん。


「きにいっちぇ、くりぇりゅかにゃ~?」

〖大丈夫よ〗

〖ええ。間違いなく〗

〖〖大泣きよ〗〗

奥さんと娘が言うなら間違いないだろう。


『なんじゃありゃ?』

泣き崩れる主神に、目頭を抑えて空を仰ぐバートさん。恐る恐る近づき覗き込む料理長。

『なるほどな~そりゃ、泣くかぁ』


いちゅも、ありがとう!だいすき♡ さーやより


『ま、似顔絵も、字もまだまだだけどな』


〖うううぅ〗

『くうっ⋯!』



☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございますm(*_ _)m

今月もよろしくお願いします(*^^*)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る