第303話 説明は続く⋯う?

親方夫婦に頭を下げるアイナ様とニャーニャにゃん。


『頭を上げてくれ。力を貸すって具体的にはどんなことだ?』

『そうさね。まずは話を聞かないとね』


親方たちが言うことはもっともだ。

親方はこの村のドワーフの長というだけではない。各地に散らばるドワーフ全体の長だ。簡単に答えが出せるわけがない。自分のことだけではなく、ドワーフ全体の将来まで見据えて答えを出さなければならないからだ。


『そうですわね。ジーニ様たちのお話では、主神様はこう仰っていたそうですわ。〖ヤツを完全に倒すことは出来なかったが、ヤツも無傷ではない。今すぐには動けないだろう。ただ、ヤツは執念深い。自分のおもちゃを完全に壊すまで諦めないだろう〗と』

アイナ様が神達の言葉を伝えると


『待ってくれ』どんっ!

『それはヤツは必ず愛し子様を襲いに来る。そういう事か?』

親方がテーブルを鳴らしアイナ様に詰め寄る。


『その通りですわ。〖どの位先かは分からない。でも、必ずヤツはやって来るだろう〗そう仰っていたそうですわ』


あまりのことに黙り込む親方たち。アイナ様とニャーニャはじっと待っていた。


『なんてこった。元とはいえ神を相手にするのか』

『あんた⋯』

ようやく声を発した親方たち。だが、まだ呆然としている


『だからにゃ、それまでにサーヤちゃんの体と心をみんなで育てて欲しいそうにゃ』

『以前のことを、もし思い出してしまっても、今は一人じゃない、周りにこんなに味方がいる。そう思えるようにしてあげて欲しいと』

『もちろん、周りも準備を整えなくてはならないにゃ。近々、武神様もいらっしゃるそうにゃ。もしかしたら鍛治神様もにゃ』

『でも、神々もいつも地上にいらっしゃる訳にはいきませんわ。結局は地上にいる私たちが強くならなければいけないのです。その為には武器も必要となりますわ』

『防具や設備もにゃ。それに』

ニャーニャにゃんが言葉を続けようとした時、


『ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ!いいい、今、鍛治神様と武神様と言ったか!?』

『いい、言ったよね!?』

親方夫婦が話に割って入って来た。


『はい。言いましたわ。他の神々も次は自分だと、てぐすね引いて待っていらっしゃるそうですから、まだいらっしゃるかと』

『あと、精霊王様も全員揃うはずにゃ』

何を驚いているの?とばかりのアイナ様たち。アイナ様とニャーニャにゃんはある意味、感覚が麻痺していた。まあ、すでにあのメンバーに囲まれていたら、仕方ない?


『なんてこった⋯』

『あんた⋯!』

あれ?言ってる言葉は同じなのに目が?こころなしか、光ったような?そう思いながらも言葉を続けるニャーニャにゃん。


『それににゃ、当面の生活がにゃぁ』

『そうなのです。聖域ができた場所は、人はもちろんエルフ達でも立ち入ることが出来ない森の更に奥、今まで限られた強い獣しかいなかったような場所なので』

『人が暮らすには一から必要なのにゃ~』

『とは言っても、最低限の小屋と設備はジーニ様が整えてくださっているのですが、やはり足りないものが多いのですわ』

『調理器具やら、農具やら、ジーニ様が今一番叫んでいるのがお風呂ですわね』

でも、お温泉、気持ちよかったですものね~と、頷き合うアイナ様たち。


『お風呂、温泉⋯』

ん?奥さん何かいったにゃ?


『ゲンさんは、味噌樽~とか、醸造所~とか、叫んでたにゃ~。味噌、醤油、酒~!ってにゃ』

食にかける情熱はすごいにゃよね~と、頷き合うニャーニャにゃんたち。


『酒⋯』

ん?親方何かおっしゃたかしら?


『今はほとんど魔法頼りでやってますけど、やっぱり手作業じゃないと納得いく出来がな~と、おっしゃってましたしね』

『たいがい、職人気質にゃよね。ゲンさんも』

『何しろ、鍛治神様と工芸神様、医神様、武神様、あと、天界の料理長さんまでもがゲンさんを天界に留まってくれるよう引き止めたとおっしゃってましたからね 』

只者じゃないから仕方ないですわね~と、頷き合うアイナ様たち。


『鍛治神様に、武神様⋯』

『工芸神様に、料理長⋯』

ん?やっぱり何か?


『アイナ様、料理長は分かるよ?すでに食べた事の無いもの頂いてるからね。でもなぜ工芸神様まで?』

『それに鍛治神様に、武神様まで?医神様も』

訳が分からないぞ?という親方たち。


『医神様は、サーヤちゃんのために医学書まで読み漁っていたゲンさんの知識に惚れ込んでしまったようですわ』

『そうにゃね、すでに師匠って呼んでるしにゃ~』


『『し、師匠⋯』』


『武神様はゲンさんの見たこともない、異世界の武術に魅了されたとか』

『サーヤちゃんは達人って言ってたにゃ~』


『『た、達人⋯』』


『鍛治神様もやはり見たことのない技と知識にやはり並々ならぬ探究心を擽られたとか⋯』

『おれなんか、ただの趣味の域だ、必要だったから覚えただけだ。職人には叶わないとか、謙遜してたにゃ』


『な、何もんだよ。そいつ⋯』

『ほんとに人間かい?』

親方たちの疑問はごもっとも⋯


『人間のはずですわよ?』

『規格外ではあると思うけどにゃ?人間のはずにゃ』

はずって、規格外って、すでにおかしい。


『工芸神様が興味を持たれるのも無理ないですわ。それこそ、そのカゴ、そして親方たちも今使われた食器。それを作られたのはゲンさんですわ』

『おそろしく器用なのにゃ。その湯のみなんか、ろくろがあれば~!とか、釉薬に釜~!とか、叫んでたにゃ。まだまだ不満みたいにゃ』

『それ、元は土ですのよ。ほら!あの親方が何かに使えないかと言っていた土ですわ。粘土というのですって』

『産地で土も違うから、色々なものが出来るといってたにゃ~』

うんうんと頷き合うアイナ様たち。


『こ、これもかよ』

『これも⋯』

ゴクリ。二人揃って自分の手元を見ながら生唾飲み込む親方たち。


『でも、今、一番必要なのは』

『『めーめーさん達のバリカンと、ハサミ』』

『ですわね~』

『だにゃ~』

ふぅ~と首をフリフリしながら言うアイナ様たち。


『『は?』』

『めーめーさん?』

『バリカン?ハサミ?』

なんじゃそりゃ?って感じですか?そうですよね~


『めーめーさんは、ゲンさんが連れてきた羊という動物ですわ。毛を刈り取って、毛糸にして、洋服などを作るのだそうですが』

『毛が伸びすぎてしまって、身動き取れなくなってしまったのにゃ~』

『しかも冬毛で重いらしいですしね~』

『子供たちは足が地につかなくて転がってたしにゃ~』

『可愛かったですけれどね』

『かわいかったけどにゃ、でもにゃ』

『『緊急事態』』

『ですわね~』

『だにゃ~』

はぁ~。首をふりふり。


『『は、はあ~あああ?』』


シリアスは長続きしないアイナ様とニャーニャにゃんでした。


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございますm(*_ _)m

アイナ様とニャーニャにゃんはがんばった!⋯よね?

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