第2話 Lunch Time

なんで学校って週5であるんだろう。


そんなことを学校に来るたびに考えながら、幼馴染の信実 愛しんみ あいの隣にいる俺は校庭で寒い中ランニングする別クラスの人たちを窓越しから見て暇な授業を過ごす。


すると、愛も暇だったのか先生の目を盗んで俺の背中に文字を書いて遊び始めた。


俺はいつものことだからただただ愛が綴る文字を頭の中で整理して、『YES』か『NO』を顔の表情で愛に伝えて遊んでいるとあっという間に昼前の授業が終わった。


愛「ととくん、今日も屋上で青空ランチしよ。」


そう言って、愛は俺の断りもなしに屋上へ向かう前にお決まりの売店へ行く。


愛「今日はじゅわじゅわハニトーにしちゃおうかな。」


とと「ダイエットは?」


愛「んー?明日からかな。」


まあ、愛はいつもこんな感じ。


そんな風にふわふわした自意識だから愛も俺もお互いしか友達がいない。


俺は愛だけと話せるだけで十分だけど、愛は新しい友達が欲しいと思ってるし、最近は色気付いて恋人が欲しいとも思ってる。


けど、俺たちが2人で一緒にいると周りの人間はそっと静かに離れて嫌な目線を送ってくる。


その理由は愛が俺をずっと抱きしめて離さないから。


俺は昔から愛がいないとどこに行けばいいか分からなくなるからずっとこうしてもらっているけど、他人はそれを変だと感じるらしい。


そんな俺と愛が出会ってこのかた、いい印象を持ってもらっていたのは小学校低学年まで。


それ以上になると俺と愛の密な関係は『気持ち悪い』と言われ、どちらかがいじめられる。


だから今日も売店に行った瞬間、俺と愛の存在を認知した人混みが蜘蛛の子を散らすように離れていく。


そして陰口を叩かれる。


けど、愛はそんなに気にしてないらしいので俺も気にしないことにしている。


愛「んー…。やっぱり、BLTサンドにしよっかな。」


優柔不断な愛はいつも5分近く売店前を独占するので売店のお姉さんも若干困り顔。


けど、その奥にいるおばさんが愛と俺を見て側に寄ってきた。


「あれ!綺麗なピンク色になってるねー。」


そう言っておばさんは俺の頭を容赦なく撫で回す。


愛「うん!私が染めたの!ととくんに春先取りしてもらったんだ。」


冬初めに春を先取りした愛は嬉しそうにおばさんに自慢をして、最終的におばさんオススメのイチゴサンドといつものイチゴミルクを買って屋上の踊り場でほこり臭いのを気にせずいつも通り食べ進める。


愛「今日は5時間目で授業終わるから“デート”行こうよ。」


とと「どこに?」


愛「んー…、ゲーセンでととくんの友達増やしたい。」


とと「バス?」


愛「この間、怒られたからちょっと遠いけど歩いていくぅ…。」


ちょっと拗ね気味な顔をする愛はゲーセンデートをして俺にぬいぐるみをプレゼントするつもりらしい。


俺はいらないけど、愛が与えたいと思うなら俺は快く受け取るし、“デート”にも付き合う。


3歳からずっと一緒にいてくれる幼馴染だからこそ、毎日のようにあるデートに備えて俺はなんの予定も入れないようにして愛の優柔不断に今日も付き合うんだ。



環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様

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