第5話 疑問

俺も箸をわり、麺の蓋を開けた。

すると湯気が顔に当たり、緑のたぬきのいい匂いが香る。

ストーブも着いていない寒い部屋で、唯一の暖がこれで、カップを握っている手が暖かい。

少し癒されていると、先輩はニヤニヤしながらこっちを見ている。


「暖かいのは分かるけど、早く食べないと麺が伸びちゃうよ笑笑」


なんて先輩は言ってきた。蕎麦って伸びるのかな?なんて思いながら麺を啜った。


美味しい。今まで特に味とかは気にしていなかったし、ゆっくりと味わう事なんてなかったけど普通に美味しい。

別に俺は食リポなんて向いてないけど、サクサクのこのかき揚げみたいなのを少し食べて、その後汁を飲んだ、口の中で少しかき揚げみたいなのが少し染みて美味しい。

少し緑のたぬきに浸っていると先輩が

「これかける?」

なんて言って七味を出して来た。

「いや、おれ辛いの苦手なんで遠慮しときます」

「1回、1回だけかけてみない?飛ぶよ??」

なんて話をしながら

2人で話している時間はかなり楽しかった。


どうやら先輩は俺と同じバンドが好きでその話でかなり盛り上がった。


ただ一つだけ、先輩について疑問が生まれた。

どうして今日学校の部室で1人で年越しをしようとしていたのか?

ただそれだけがずっと疑問だった



それから数分経って2人とも食べ終わると、先輩はスマホでそのバンドの音楽を流し始めた。


俺と先輩はそれを2人で聴いていた。

2曲目ぐらいの歌詞で、途中に

「誰もいない部室でみんなの思い出と共に安いカップ麺での年越しも悪くないな」って歌詞が流れた。

俺はもしかして?なんて思って先輩に聴いた。


「先輩もしかして、この歌詞の部分をやろうとしたんですか?」


先輩は「そう!私この歌がめっちゃ好きなんだけど、この部分だけどうしても理解できなくてさぁ、だから今日やってやろうと思って笑」


俺は思わず笑ってしまった。


先輩もつられて笑っていた。


笑い疲れた後先輩は急に「あっ!」って何かを思い出したかのように言った。


「あけましておめでとう、今年からよろしくお願いしますね」


スマホの時計を見るともう年は超えていた。


俺は、「こちらこそ、あけましておめでとうございます、今年からよろしくお願いしますね笑」なんて言って2人で笑いあった。


さっきまで赤の他人なんて思えなかったのに、こんなに仲良くなれるなんて思わなかった。








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