296日目 アニマルシリーズ(前編)
【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(非公式)・ファッションスナップ晒す部屋・自晒し・他晒し・NPC・不問】
[ぺぺろん]
>>否定しないなお
いいねー、幻想系メルヘンてかんじ
お花のドレスとウサギフード、キャラ濃いけど合うわ~
[ましゅろま]
ブティックさんとこのアニマルフード万能過ぎる
[とりたまご]
似たようなやつ真似して作ってる人時々見かけるけど、あのしっかりした立体的な頭表現するのむずいみたいだな
[ハロー]
材料が特殊っぽい?
鑑定で視たら「硬質エレメリタン」とか出た、何やこれ
[YTYT]
メフモにプレゼントしたけどなかなか着てきてくれないんだよな
早くパンダメフモに会いたいぜ
[キリサメ]
Bさんのアニマルシリーズ、めっちゃ可愛いのは理解した上でちょっとトラウマなんだよね
着ぐるみーずの動画思い出しちゃって
[きいな]
分かる
てかゾエとか普通にあの衣装で遠征参加してきたりするよね
だから似た格好の人見るとびくってなる
[檸檬無花果]
心臓に悪いよなw
この間なんてササが着ぐるみのゾエと対面した途端何を思ったか即パンダに着替えて笑ったw
[茶碗]
ヒエッ
あいつらいつの間に仲良しになったん…?
[深瀬沙耶]
いや寧ろあれは対抗意識のようなものでは…
あの後バチバチに抗争してたし…
[ヨシヲwww]
>>檸檬無花果
あの着替え速度、間違いなくツーフェイスに登録してるwww
[くまたん]
ハイスキルの無駄遣いエ…
******
ログイン296日目
カランコロン。
扉にかかったベルの音が響き、私は顔を上げた。次いで、息を詰める。
そこにいたのは毎日のように顔を出してくれるキャラクター、シエル&シャンタちゃん。
勿論彼女達が店を訪ねてくれるというそれだけでも、筆舌に尽くしがたいほどの幸甚である。がしかし、今回はそれだけではなかった。
二人が、しかも二人揃って、この間私がお勧めした【モーモーフード】――――即ち牛角と牛耳を付けたもこもこの被り物を身に着けて来てくれたのである……!
「はろービビア。この前あなたが選んでくれた帽子、被ってきたんだけど、どーお?」
小首を傾げて手を頬に添えつつ、自信に満ちた笑みを浮かべるは、黒牛フードのシエルちゃん。
「ビビア、最近腕上げた? この私をこんなに輝かせるアイテム作るだなんて、あなた意外とやるじゃない?」
肩を竦め、ちょっと照れた顔で被り物の位置を調整するは、ホルスタインフードのシャンタちゃん。
モオオオオーーーーっ、なんって可愛いのあなた達はああああーーーーっっっっ……!!!!
と、私は悶絶しそうになりながら、ひたすらにハートを飛ばすスタンプを連打した。らぶゆーらぶゆー!
他のお客さんからの視線が痛いけど、今はっ、今だけはそんなことはどうでもよいのです……!
時には世間体よりも大事なことだってある! そう、シエルちゃんのスクショとかシャンタちゃんのスクショとか鹿角フードの私も合わせて三人の動画とかいっぱいいっぱいね!
というわけで色んな角度、色んな構図でのツインズを撮りまくっていたら、どういうわけか店内にいたお客さん達までもがシエシャンの撮影を始めたではないか。
いや、勿論他の方の撮影は禁止です、なんてケチなことは言わないよ。
みんな私の邪魔にならないよう配慮してくれてるみたいだし、それに私作の衣装を纏ったツインズが皆様方にも大人気というのは、誇らしいことでもある。ふっふっふ、さすが私、良い仕事するじゃない、ってね。
けどなんかお客様方、カメラの画角に私も含めてるようなのは気のせいですか?
え? 位置をずれろ? あ、はいすみません。
ポーズ? シエルちゃんと対称になるように? こ、こうかな。あ、オッケー? そう、よかった……。
って、はっ。つい乗せられて、一緒にモデルになってしまった。
ま、まあ確かにシエルちゃんシャンタちゃんには劣るものの、この私のキャラクタービビアちゃんだってとっても可愛いものね。
けどやっぱりこう、中に入ってるのが自分ってなると、いくらゲーム内のアバターとはいえ完全他人事とは思えないんだよね……。羞恥……。
そんなことをしている内にツインズはお帰りになられ、そこで撮影会もあっさりお開きとなった。ふー、次からは調子に乗らないよう気を付けないと。
私は火照った顔をぱたぱた仰ぎながらカウンター奥へ戻る。とそこで、てこてこと近付いてい来る小さな影に気が付いた。
ふわっふわなミルクティーカラーヘアに、水色と白のお人形さんみたいなエプロンドレス、そしてご愛敬のそばかす。小柄な彼女は、声なき少女ヴィティちゃんだ。
おー、いつの間にかあなたも来てたのね。私は挨拶代わりにニコニコスタンプをぽちった。
しかしヴィティちゃんのほうはそれどころではないようだ。彼女はやたら真剣な眼差しで、どういうわけか頻りにお店の入口を指さし、私に何かを訴えている。
……えと、扉が壊れたとか? あ、違う? お家に帰りたい? これも違う……。
そんな問答をいくらか繰り返した後、ヴィティちゃんはこれだけじゃ埒が明かないと思ったらしい、別のジェスチャーを始めた。
両手の人差し指を上に突きだし、それを頭の上に持っていくこのポーズは――――――鬼? オコなの? 激オコプンプンなの?
……じゃなくて、あっ。
「牛……シエルちゃんとシャンタちゃん?」
二人の名前を口にすると、ヴィティはぱっと顔を輝かせ、こくこくと何度も頷いた。そして鞄から取り出した手帳にさらさらーっと文字を書きつけ、こちらに提示してくる。
いや最初からそうすればええやん。って思ったけど、許します。可愛いので。
さて、
『おなじの、ください!』
おなじのって、もしかしてアニマルフードのこと?
わわ、ヴィティちゃん、ツインズの可愛い格好見て羨ましくなっちゃったんだ……! 何それヤダ可愛い私の作った可愛い衣装着てる可愛いシエルちゃんと可愛いシャンタちゃんに憧れを抱く可愛いヴィティちゃん超可愛いじゃん。
接客イベントでこういう展開は初めてだったもので、私は俄然興奮する。
勿論アニマルシリーズは、うちで相変わらず大人気商品である。お店にもちゃーんと取り揃えてありますよ。
さあさお客様、こちらへどうぞ~。と、私は
並んだ色々なアニマルフードを目にして、ヴィティは嬉しそうに顔を綻ばせる。そして棚から灰色の【ネズミフード】を取り上げると、それを私に差し出した。
こちら、お買い上げですね。毎度ありがとうございまーす。
お会計を済ませると、ヴィティは早速ネズミフードを被り、その姿で店を出て行った。いいね~テーマパークとかにいそうなハッピーでキュートなあのかんじ、見てるだけで心が楽しくなるよね。
そんなふうににまにましながら彼女の背中を見送っていたらば、ぴこんっとコミュニケートミッション更新の通知が入る。
なになに……、あっ! 久々にシエルちゃんの新しいミッションが来てる! シャンタちゃんのほうも!
内容はどちらも同じようで、【ファッションリーダー・シエルシャンタの暗躍】となっていた。もしかして今のヴィティちゃんとのやり取りも、関係するイベントなのかな。
わーい、新たなエピソード、楽しみ~。
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